UniCredit Bank Austria では、全社規模でマーケットデータエンジンを開発し、迅速に配布

「多くの金融機関は、今日の市場における信用のボラティリティと限られたデータにモデルを適応させるのに苦心しています。MathWorks の製品を使うことで、新しい市況に対応するモデルの開発や展開にかかる期間を数か月単位ではなく数日または数週間単位にできます。」

課題

グローバルな金融機関全体でリスク管理オペレーションを改善する

ソリューション

MATLAB と MATLAB Compiler SDK を使用して、加工された市場データに簡単にアクセス可能な一貫性のある企業規模のデータ ウェアハウスを構築し、迅速に展開する

結果

  • 開発期間を 50% 短縮
  • リスク管理を強化
  • 運用、監査、および保守のコストを削減

UniCredit Bank Austria の UMD 環境でプロットされたゼロクーポン イールド カーブ

変化の激しいグローバル市場でリスクを効果的に管理するために、金融機関では、内部の金融モデルを迅速に調整する必要があります。このような調整を行うためには、あらゆる種類のアセットにわたる一貫した市場データおよび静的データのリポジトリと、加工および統合された市場データを計算するための効率化されたプロセスが不可欠です。

UniCredit Bank Austria AG では、MathWorks ツールを使用して、市場リスクおよびパフォーマンス管理に必要な直近や終値の市場データを計算する市場データ計算エンジンを開発しました。この MATLAB® ベースのエンジンは、同行の Unified Market Data (UMD) データ ウェアハウスと統合されており、同行の既存の J2EE Web アーキテクチャを介したアクセスが可能です。

「一般的な市況や、モデル、アルゴリズムに関する知識は、事業部門が持っています」と UniCredit Bank Austria のシニア マーケット リスク マネージャー Peter W. Schweighofer 氏は説明しています。「MathWorks ツールにより、リスク マネージャーはアルゴリズムや金融モデルを開発でき、IT 部門はアプリケーションを迅速に展開できます。変更をモデルに実装し、すぐに運用できるので、新しい市場データや状況に迅速に対応できます。」

課題

同行では、事業単位によって、同じ市場データの異なるバージョンを保存し、異なるシステムで加工データを計算していました。この方法では、保守の手間が増大し、データおよび処理アルゴリズムの非一貫性が増して 運用リスクが高くなっていました。「当行は、グループ規模で一貫性のある正確な連結決算データが確保されている、企業規模でのデータ管理を必要としていました」と Schweighofer 氏は述べています。

また、同行では、加工データのクリーニングおよびコンピューティング用の処理エンジンを構築する必要もありました。同行では、市場リスク、運用リスク、および取引先リスクの管理、資産負債管理、市場適合性チェック、自己資本の適切性に携わるグループがそのデータにアクセスできるようにしようと考えていました。最後に、UniCredit Bank Austria では、ヨーロッパ中の支店からアクセスできるようにするため、市場データ エンジンにアクセスする J2EE フレームワークを開発しようと考えていました。

ソリューション

UniCredit Bank Austria では、MATLAB と MATLAB Compiler SDK™ を使用して、UMD を開発し、同行の Web インフラストラクチャに統合しました。同行がこれらのツールを選んだのは、専用システムを構築する必要があったため、取引商品のリスク プロファイルや再評価機能に精通していたため、また同行の他所で MathWorks ソフトウェアを使用していたためです。

最初の重要なステップは、さまざまな市場データ ベンダーから毎日受け取る 20,000 以上の金融商品に関する最大 1 億件のレコードにもなるリアルタイム ティック データのクリーニングでした。MATLAB を使用して、ビジネス チームは、異常や欠損データを特定し、補間によって、または最後に確認された適切なデータの利用によってそれらを自動的に修正できるアルゴリズムを開発しました。

また、社債および国債の信用スプレッド カーブ、ボラティリティ サーフェス、インフレ スワップ、ゼロクーポン イールド カーブを含むオンザフライおよび終値から生成される市場データを計算するためのアルゴリズムを開発しました。

チームは、Optimization Toolbox™ を使用して、モデルによって予測された結果と市場で観測された実際の結果との間の誤差関数を最小化することで、モデルをキャリブレーションしました。

さらに、Financial Instruments Toolbox™ を使用して債券利回りを計算し、Financial Toolbox™ を使用して先渡金利および短期金利先物ストリップの計算を実行しました。

結果は、バックテストされ、市場関連のヒストリカル データおよび同行で既に使用されている既存のアルゴリズムに対して検証されました。

ビジネス チームがアルゴリズムを検証した後、IT チームは、MATLAB Compiler SDK を使用して、MATLAB プログラムから MATLAB ベースの Java® クラスを作成しました。次に、これらのクラスをアプリケーション サーバーに展開し、企業全体への展開のために統合システムをテストしました。

UMD には、現在、市場適合性、リスク解析、報告、取引などのために同行内の何百人ものファイナンシャル マネージャーやトレーダーがアクセスしています。

結果

  • 開発期間を 50% 短縮. 「MATLAB を使用することで、実装の細部ではなく、ビジネス ロジックに専念できるようになりました」と Schweighofer 氏は述べています。「追加のコーディング作業を行うことなく、その日のうちにアルゴリズムを Java 環境に展開することができます。この方法により、開発期間を少なくとも半分に短縮することができました。」
  • リスク管理を強化. 「UMD は、現在、UniCredit Bank Austria 全体のリスク管理オペレーションに関連するすべての取引活動に対するバック エンドとなっています」と Schweighofer 氏は述べています。「市況のボラティリティに迅速に適応できるスケーラブルなデータ エンジンです。」この統合システムにより、企業全体におけるデータの一貫性と信頼性、現地の規制や国際規制への準拠が促進されています。
  • 運用、監査、および保守のコストを削減. 「冗長システムの排除や、データの品質とトレーサビリティの向上により、監査への適合性が向上して、コストがさらに削減されました」と Schweighofer 氏は述べています。「手動のデータ管理タスクに費やされる 1 日あたりの時間が数時間から 30 分未満に減少して、より戦略的な活動に従業員が専念できるようになりました。」