簡単な回路の作成とシミュレーション
この例では、簡単な回路を作成してシミュレートし、結果を表示する方法を説明します。積分器と非反転アンプで構成される古典的な回路構成をモデル化して三角波を生成します。データシートを使用してブロック パラメーターを指定してから、波発生器の出力での電圧を確認します。完成したモデルを表示するには、三角波発生器の例を開きます。
システム コンポーネントを表すブロックの選択
まず、入力信号、三角波発生器、および出力信号表示を表すブロックを選択します。
物理ブロックのセットを使用して、三角波発生器をモデル化します。波発生器は以下で構成されます。
2 つのオペアンプ ブロック
オペアンプとの連携で積分器と非反転アンプを作成する抵抗とコンデンサ
Simulink-PS Converter ブロックと PS-Simulink Converter ブロックの機能は、モデルの、物理量信号を使用する物理的部分と、Simulink® 信号を使用する残りの部分を橋渡しすることです。
モデル化する 2 つのオペアンプについては、メーカーのデータシートがあります。例では後ほど、このデータシートを使用して Simscape™ Electrical™ の Band-Limited Op-Amp ブロックをパラメーター化します。
次の表は、システム コンポーネントを表すブロックの役割を説明しています。
ブロック | 説明 |
---|---|
Sine Wave | Variable Resistor ブロックの抵抗を制御する正弦波信号を生成します。 |
Scope | 三角出力波を表示します。 |
Simulink-PS Converter | Simulink の正弦波信号を物理量信号に変換します。 |
Solver Configuration | すべての物理モデリング ブロックに適用されるソルバー設定を定義します。 |
PS-Simulink Converter | 出力物理量信号を Simulink 信号に変換します。 |
Capacitor | 積分器を作成するために、オペアンプおよび抵抗ブロックと連携します。 |
Resistor | 積分器および非反転アンプを作成するために、オペアンプ ブロックおよびコンデンサ ブロックと連携します。 |
Variable Resistor | 積分器のゲインを調整する時変抵抗を提供します。このゲインは、生成された三角波の周波数と振幅を変化させます。 |
DC Voltage Source | 非反転アンプのオペアンプ ブロックに対して DC 基準信号を生成します。 |
Voltage Sensor | 積分器の出力における電圧を、電流に比例する物理量信号に変換します。 |
Electrical Reference | 電気接地を提供します。 |
Band-Limited Op-Amp | 積分器および非反転アンプを作成するために、コンデンサおよび抵抗と連携します。 |
Diode | Band-Limited Op-Amp ブロックの出力を制限して、出力波形を供給電力から独立させます。 |
モデルの作成
Simulink モデルを作成し、モデルにブロックを追加し、ブロックを接続します。
新しいモデルを作成します。
次の表に示すブロックをモデルに追加します。表のライブラリ パス列は、各ブロックへの階層パスを指定します。
ブロック
ライブラリ パス
数
Sine Wave [Simulink] 、 [Sources] 1
Scope [Simulink] 、 [Commonly Used Blocks] 1
Simulink-PS Converter [Simscape] 、 [Utilities] 1
Solver Configuration [Simscape] 、 [Utilities] 1
PS-Simulink Converter [Simscape] 、 [Utilities] 1
Capacitor [Simscape] 、 [Foundation Library] 、 [Electrical] 、 [Electrical Elements] 1
Resistor [Simscape] 、 [Foundation Library] 、 [Electrical] 、 [Electrical Elements] 3
Variable Resistor [Simscape] 、 [Foundation Library] 、 [Electrical] 、 [Electrical Elements] 1
Electrical Reference [Simscape] 、 [Foundation Library] 、 [Electrical] 、 [Electrical Elements] 2
DC Voltage Source [Simscape] 、 [Foundation Library] 、 [Electrical] 、 [Electrical Sources] 1
Voltage Sensor [Simscape] 、 [Foundation Library] 、 [Electrical] 、 [Electrical Sensors] 1
Band-Limited Op-Amp [Simscape] 、 [Electrical] 、 [Integrated Circuits]
2
Diode [Simscape] 、 [Electrical] 、 [Semiconductor & Converters]
2
メモ
Simscape 関数
ssc_new
をドメイン タイプelectrical
で使用して、以下のブロックを含む Simscape モデルを作成できます。Simulink-PS Converter
PS-Simulink Converter
Scope
Solver Configuration
Electrical Reference
次のブロック線図に示すようにブロックの名前を変更して接続します。三角波発生器回路内のブロックが 2 段階に整理されていることがわかります。Comparator Stage には、1 つの Band-Limited Op-Amp ブロックと 2 つの Resistor ブロックからなる比較器が含まれています。Integrator Stage には、別の Band-Limited Op-Amp ブロック、1 つの Resistor、1 つの Capacitor、および Electrical Reference から構成された積分器が含まれています。
モデル パラメーターの指定
次のパラメーターを指定して、システム コンポーネントの動作を表します。
モデル セットアップ パラメーター
次のブロックは、特定のブロックに固有でないモデル情報を指定します。
Solver Configuration
Electrical Reference
Simscape モデルの場合と同様に、トポロジ的に区別可能な物理ネットワークごとに Solver Configuration ブロックを含めなければなりません。この例には単一の物理ネットワークがあるため、既定のパラメーター値をもつ Solver Configuration ブロックを 1 つ使用します。
各 Simscape Electrical ネットワークに Electrical Reference ブロックを含めなければなりません。このブロックにパラメーターはありません。
入力信号のパラメーター
Sine Wave ブロックを使用して正弦波制御信号を生成します。
Sine Wave ブロックのパラメーターを次のように設定します。
[振幅] =
0.5e4
[バイアス] =
1e4
[周波数] =
pi/5e-4
三角波発生器のパラメーター
三角波を生成する物理システムをモデル化するブロックを構成します。
積分器の段階 — Band-Limited Op-Amp、Capacitor、Resistor ブロック R3
比較器の段階 — Band-Limited Op-Amp1、Resistor ブロック R1 および R2
Variable Resistor
Diode および Diode1
モデルの物理的部分と Simulink 部分を橋渡しする Simulink-PS Converter ブロックと PS-Simulink Converter ブロック。
Simulink-PS Converter ブロックの既定のパラメーターを受け入れます。これらのパラメーターは、ブロック出力における物理量信号の単位を、Variable Resistor ブロック入力で想定されている既定の単位と一致するように設定します。
±20 V の電源をもつ LM7301 デバイスに対して、Band-Limited Op-Amp ブロックの 2 つのパラメーターを設定します。
データシートによればゲインは 97 dB で、これは 10 ^ ( 97 / 20 ) = 7.1e4 と等価です。[ゲイン、A] パラメーターを
7.1e4
に設定します。データシートによれば、入力抵抗は 39 Mohm です。[入力抵抗、Rin] を
39e6
に設定します。[出力抵抗、Rout] を
0
オームに指定します。データシートには Rout の値が示されていませんが、この項は、それが駆動する出力抵抗と比較して無視できます。最小出力電圧と最大出力電圧を、それぞれ -20 V と +20 V に設定します。
データシートによれば、最大スルー レートは 1.25 V/μs です。[最大スルー レート、Vdot] パラメーターを
1.25e6
V/s に設定します。帯域幅を
4e6
に設定します。
4.3 V のツェナー ダイオード用に Diode ブロックの 2 つのパラメーターを設定します。BZX384-B4V3 をモデル化するには、ブロック パラメーターを次のように設定します。
[メイン] タブで、[ダイオード モデル] を
[区分線形]
のままにします。[順電圧] を 0.6 V のままにします。これは、ほとんどのダイオードの標準値です。
データシートによれば、順電圧が 1 V のときの順電流は 250 mA です。Diode ブロックがこれに一致するように、[オン抵抗] を (1 V – 0.6 V) / 250 mA =
1.6
オームに設定します。データシートによれば、逆電圧が 1 V のときの逆漏れ電流は 3 μA です。したがって、[オフ コンダクタンス] を 3 μA / 1 V =
3e-6
S に設定します。[ツェナー ダイオードのモデル化] パラメーターを選択します。これにより、この回路の正しい動作をテストするのに十分なツェナー ダイオード モデルが選択されます。
データシートによれば、逆電圧は 4.3 V です。[ブレークダウン] タブで、[逆ブレークダウン電圧] を
4.3
V に設定します。[ツェナー抵抗] を、適切で小さな数値に設定します。データシートには、5 mA の逆電流でのツェナー電圧が記載されています。Diode ブロックが実際のデバイスを表すようにするには、5 mA 時のシミュレートされた逆電圧が 4.3 V 近くでなければなりません。Rz がゼロに近づくにつれて、逆ブレークダウン電圧は電流にかかわらず Vz に近づきます。これは、電圧と電流の勾配が無限大になるためです。しかし、良好な数値特性を得るには、Rz を小さくしすぎてはなりません。たとえば、5 mA 時のツェナー電圧で 0.01 V の誤差を許容する場合、Rz は 0.01 V / 5 mA = 2 オームとなります。[ツェナー抵抗] パラメーターをこの値に設定します。
Voltage Sensor ブロックにパラメーターはありません。
Variable Resistor ブロックの既定のパラメーターを受け入れます。これらのパラメーターは、ブロック出力における物理量信号の単位を、Variable Resistor ブロック入力で想定されている既定の単位と一致するように設定します。
Capacitor ブロックのパラメーターを次のように設定します。
[静電容量] =
2.5e-9
[直列抵抗] =
0
[初期ターゲット] セクションで、変数 [コンデンサ電圧] の値を
0.08
に設定します。DC Voltage Source ブロックの [定電圧] パラメーターを
0
に設定します。Resistor R3 ブロックの [抵抗] パラメーターを
10000
に設定します。Resistor R1 ブロックの [抵抗] パラメーターを
1000
に設定します。Resistor R2 ブロックの [抵抗] パラメーターを
10000
に設定します。PS-Simulink Converter ブロックの既定のパラメーターを受け入れます。これらのパラメーターは、ブロック出力における物理量信号の単位を、Scope ブロック入力で想定されている既定の単位と一致するように設定します。
信号表示パラメーター
Scope ブロックのパラメーターを指定して、三角波出力信号を表示します。
Scope ブロックをダブルクリックしてから、[ビュー]、[コンフィギュレーション プロパティ] をクリックして、Scope の [コンフィギュレーション プロパティ] ダイアログ ボックスを開きます。[ログ] タブで、[直近のデータ点数に制限] チェック ボックスをオフにします。
ソルバー パラメーターの構成
連続時間ソルバーを使用するようにソルバー パラメーターを構成します。Simscape Electrical モデルは、Simscape の Solver Configuration ブロックの [ローカル ソルバー] パラメーターがクリアされていると、連続時間ソルバーでのみ実行されます。また、シミュレーションの終了時間を変更し、相対許容誤差を小さくしてシミュレーションの精度を向上させ、Simulink が保存するシミュレーションのデータ点の数に関する制限を取り除きます。
モデル ウィンドウで、[モデル化] 、 [モデル設定] を選択して [コンフィギュレーション パラメーター] ダイアログ ボックスを開きます。
ダイアログ ボックスの左側にあるツリーの [ソルバー] カテゴリで、以下を実行します。
[終了時間] パラメーターの値に
2000e-6
と入力する。[ソルバー] リストから、
[ode23t (Mod. stiff/Trapezoidal)]
を選択する。[最大ステップ サイズ] パラメーターの値に
4e-5
と入力する。[相対許容誤差] パラメーターの値に
1e-6
と入力する。
[選択] ツリーの [データのインポート/エクスポート] カテゴリで、[直近のデータ点数に制限] チェック ボックスをオフにします。
[OK] をクリックします。
ソルバー パラメーターの構成方法の詳細については、エレクトロニクス システム、メカトロニクス システム、または電力システムのシミュレーションを参照してください。
モデルのシミュレートと結果の解析
シミュレーションを実行し、結果をプロットします。
モデル ウィンドウで、[シミュレーション] 、 [実行] を選択して、シミュレーションを実行します。
スコープ ウィンドウで三角波を表示するには、Scope ブロックをダブルクリックします。これは、シミュレーションの実行前または実行後に行うことができます。
次のプロットは、電圧の波形を示しています。Variable Resistor ブロックの抵抗の増大に伴い、出力波形の振幅は増大し、周波数は減少します。
三角波の波形 (電圧)