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PRBS 入力信号
2 値疑似乱数列 (PRBS) は、2 つの値の間で切り替わるホワイトノイズのようなプロパティをもつ、周期的で確定的な信号です。PRBS 信号は、最大周期の長さが 2n–1 (n は PRBS の次数) で本来的に周期的です。
PRBS 入力信号はコマンド ラインまたはモデル線形化器で周波数応答の推定に使用できます。推定アルゴリズムは、推定用に指定された入力解析ポイントに PRBS 信号を挿入し、出力解析ポイントで応答を測定します。PRBS 信号は、通信用途やパワー エレクトロニクス用途向けに周波数応答を推定するのに有用です。
PRBS 入力信号を使用すると、次のことが可能です。
sinestream の入力信号を使用する場合と比較して、合計の推定時間が削減される一方で、比較可能な結果が得られる。
チャープ入力信号を使用する場合よりも高い周波数解像度でより迅速な周波数応答推定が得られる。
PRBS 入力信号を作成する場合、次のパラメーターを指定します。
信号振幅 — 信号のピークツーピークの範囲。
サンプル時間 — 入力および出力の線形解析ポイントに対応する信号でのサンプル時間に一致するサンプル時間を設定する。
信号の次数 — PRBS 信号の最大の長さは 2n–1 (n は信号の次数)。
周期数 — PRBS 信号の周期数 Np。
PRBS 信号のパラメーターを指定する場合には、次のことを考慮します。
用途に合わせてシステムが適切に励起されるような振幅を設定する。入力の振幅が大きすぎる場合、信号がモデルの操作点から大きく逸脱する可能性があります。入力の振幅が小さすぎる場合、PRBS 信号がモデルのノイズやリップルと区別できません。
与えられたサンプル時間について、低周波数の範囲で解像度を挙げるには、PRBS 信号の次数を上げます。
ほとんどの周波数応答推定アプリケーションでは、単一の周期を使用します。そうすることにより、信号の周波数範囲にわたってフラットな周波数応答が得られます。
生成された PRBS 信号の周波数範囲は [Fmin,Fmax] です。ここでは、 および です。FN は信号のナイキスト周波数です。
線形システム sys
のダイナミクスに基づくパラメーターを使用して PRBS を作成することもできます。たとえば、システムの正確な線形化がある場合は、それを使用してパラメーターを初期化することができます。
線形システムを使用して PRBS パラメーターを設定する場合、信号の振幅は 0.05
で、周期数は 1
です。サンプル時間と信号の次数を設定するため、sys
のダイナミクスに基づいて、まず信号の周波数の範囲 [Fmin,Fmax] が選択されます。
sys
が離散時間システムの場合、次のようになります。
PRBS のサンプル時間は
sys
のサンプル時間と等しい。PRBS の次数は次のとおり (
⌈.⌉
は天井演算子)。
sys
が連続時間システムの場合、次のようになります。
PRBS のサンプル時間は、
PRBS の次数は次のとおり (
⌊.⌋
は床演算子)。
モデル線形化器を使用した PRBS 信号の作成
モデル線形化器で PRBS 入力信号を推定に使用するには、[推定] タブで [入力信号] 、 [PRBS 2 値疑似乱数列] を選択します。
[PRBS 入力の作成] ダイアログ ボックスで、PRBS 信号オブジェクトの名前を [変数名] で指定します。その後、次のフィールドを使用して PRBS 入力信号のパラメーターを指定できます。
振幅 — 信号振幅
サンプル時間 — サンプル時間
周期数 — 周期数
信号の次数 — 信号の次数
[周期数] パラメーターと [信号の次数] パラメーターについては、目的の周波数範囲に基づいて自動的に決定することもできます。自動パラメーター決定を使用すると、作成した入力信号から指定した周波数範囲の正確な周波数応答が得られます。
パラメーターを自動的に決定するには、まず、[サンプル時間] パラメーターを信号インジェクション ポイントのサンプル時間と一致するように設定します。次に、[最小値] と [最大値] のパラメーターを使用して目的の周波数範囲を指定し、[パラメーターの計算] をクリックします。
さらに、以下のことができます。
[1 クロック周期あたり 1 サンプル] パラメーターを使用して、クロック周期あたり 1 つのサンプルかクロック周期あたり複数のサンプルのいずれに対して信号を一定に維持するかを指定します。このパラメーターは [周期数] > 1 の場合に使用します。既定では、このオプションは有効になり、生成された信号は 1 つのサンプルで一定になります。このオプションを無効にすると、生成された信号は指定した数のサンプルで一定になります。
[ウィンドウベースのフィルター処理を実行して推定結果を向上させる] パラメーターを使用して、ハン ウィンドウベースのフィルター処理を適用します。これにより、周波数応答の推定結果が滑らかになります。
MATLAB コードを使用した PRBS 信号の作成
コマンド ラインで frestimate
を使用して推定のための PRBS 信号を作成するには、frest.PRBS
オブジェクトを使用します。
Simulink での PRBS 信号の作成
R2024a 以降
Simulink® で推定のための PRBS 信号を作成するには、PRBS Signal Generator ブロックを使用します。このブロックは、摂動信号を生成して、デスクトップ シミュレーションまたはハードウェア上でコード生成を介してプラント モデルに挿入する場合に役立ちます。その後、摂動信号へのプラント応答を収集し、カスタム処理を実行してプラントの特性を特定できます。
低周波数における周波数応答の結果の改善
低周波数における周波数応答推定の結果を改善するために、元のモデルのサンプル時間とは異なるサンプル時間を使用することができます。これを行うには、入力の解析ポイントで Constant ブロックを使用するようモデルを変更し、出力の解析ポイントで Rate Transition ブロックを追加します。
Constant ブロックと Rate Transition ブロックの両方で、PRBS 信号用にモデルの元のサンプル時間よりも大きい新しいサンプル時間を指定します。
PRBS 入力信号のサンプル時間を変更できることで、周波数応答の推定プロセスに追加の自由度が提供されます。元のモデルより大きなサンプル時間を使用することにより、低周波数の範囲でより高い解像度の周波数応答推定結果が得られます。また、より低いサンプリング レートで推定を実行することで、ハードウェアに展開する際の処理要件が軽減されます。