範囲の収集手法の選択
固定小数点ツールは Simulink® モデルにおいて固定小数点データ型を指定するタスクを自動化します。"オートスケーリング" とも呼ばれる固定小数点の反復的変換プロセスを使用するように選択するか、fxpopt
を使用してモデル内のデータ型を最適化できます。固定小数点ツールでモデル内の浮動小数点データ型と固定小数点データ型の数値的な動作を確認することもできます。
ツールは、オブジェクトで明示的に指定される設計の最小値と最大値、シミュレーション中に発生し記録された最大値と最小値、または静的範囲解析により派生した最大値と最小値から、モデル オブジェクトの範囲データを収集します。
方法 | 利点 | 不便な点 |
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シミュレーションの最小値と最大値の使用 |
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設計の最小値と最大値の使用 | このメソッドは、範囲解析でサポートされないブロックがモデルに含まれる場合に使用できます。ただし、可能な場合はシミュレーション データを使用してデータ型を推奨します。 |
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派生した最小値と最大値の使用 | シミュレーション データで意図した動作範囲全体がカバーされていることを確認するために、シミュレーションを何回も実行する必要はありません。 |
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固定小数点ツールでは、範囲の収集モードを 3 つの中から選択できます。
シミュレーション範囲 – シミュレーションを通じて範囲を収集します。複数のシミュレーション実行の範囲を収集してマージするには、シミュレーション入力を指定できます。
派生範囲 – "範囲解析" とも呼ばれる範囲を派生する静的解析を通じて範囲を収集します。
範囲解析によるシミュレーション – シミュレーションと派生範囲解析を通じて範囲を収集し、それらの結果を組み合わせます。
機能 | シミュレーション範囲 | 派生範囲 | 範囲解析によるシミュレーション |
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範囲カバレッジ | データ型はシミュレーション範囲に基づいて推奨されます。固定小数点ツールで提供される推奨は、指定されるテスト ベンチと同等です。推奨データ型は収集された最小値と最大値に基づきます。 | 静的範囲解析は一般的に、より保守的なデータ型推奨を提供します。推奨データ型は収集された最小値と最大値に基づきます。 | 推奨データ型はシミュレーション範囲と派生範囲の組み合わせに基づきます。推奨データ型は収集された最小値と最大値に基づきます。このオプションは最も包括的な範囲情報を提供します。 |
シミュレーション入力 | 設計範囲の全体をカバーするような包括的な入力信号のセットです。これにより、複数のシミュレーション入力ケースの範囲を収集してマージできます。 | 派生から報告される範囲はモデルで指定された設計範囲のみに基づきます。範囲の派生にシミュレーション入力は使用されません。 | 範囲はマージされたシミュレーション範囲とモデルで指定された設計範囲から派生した範囲の組み合わせに基づきます。 |
設計範囲 | シミュレーション範囲は設計範囲の指定に対して検証され、診断ビューアーで違反が報告されます。 | 設計範囲はモデルで指定しなければなりません。推奨データ型は収集された最小値と最大値に基づきます。 | シミュレーション範囲は設計範囲の指定に対して検証されます。範囲を派生させるには、モデルで設計範囲が指定されていなければなりません。 |
サポート機能 | すべてのモデル オブジェクトはインストルメンテーションおよび範囲の収集についてサポートされています。 | 範囲解析はモデル オブジェクトのサブセットをサポートしています。詳細については、サポートされない Simulink ソフトウェアの機能を参照してください。 | 範囲解析はモデル オブジェクトのサブセットをサポートしています。詳細については、サポートされない Simulink ソフトウェアの機能を参照してください。 |
モデル構造 | 範囲は常にシミュレーション中に収束します。 | フィードバック ループなどのモデル構造によっては、収束前により多くの設計範囲情報を必要とする場合があります。 | シミュレーション範囲は常に収束します。フィードバック ループなどのモデリング構造によっては、派生範囲の収束前により多くの設計範囲情報を必要とする場合があります。 |
既知の範囲をもつ調整可能パラメーター | シミュレーション入力を使用して調整可能な範囲全体がを実行されなければなりません。 | 調整可能パラメーターの設計範囲が報告されます。 | 調整可能パラメーターの設計範囲が報告されます。シミュレーション入力を使用して調整可能な範囲をさらに実行できます。 |
シミュレーション モード | インストルメンテーション データはノーマル モード時にのみ収集されます。モデルがアクセラレータ モードまたはラピッド アクセラレータ モードで動作している場合、インストルメンテーション データは収集されません。シミュレーションに長時間かかることがわかっている場合、モデルの範囲を派生させることもできます。 | シミュレーション モードが範囲解析に影響することはありません。 | インストルメンテーション データはノーマル モード時にのみ収集されます。モデルがアクセラレータ モードまたはラピッド アクセラレータ モードで動作している場合、インストルメンテーション データは収集されません。シミュレーションに長時間かかることがわかっている場合、モデルの範囲を派生させることもできます。 |
収集された範囲情報に基づいて、ツールでは精度を最大化し範囲をカバーする固定小数点データ型を推奨します。固定小数点ツールを使用すると、推奨されたデータ型を確認してから、モデル内のオブジェクトに選択的に適用することができます。