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Simulink でのゲイン スケジュールの調整

通常、ゲイン スケジュール コントローラーは、操作条件によってコントローラー ゲインが変化する固定の単一ループまたはマルチループ制御構造です。ゲイン スケジュールは、現在の操作条件を記述するスケジューリング変数を、適切なコントローラー ゲインに変換します。Simulink® ではルックアップ テーブルまたは MATLAB® 関数を使ってゲイン スケジュールを実装できます (Simulink でのゲイン スケジュール制御システムのモデル化を参照)。

Simulink Control Design™ がある場合、systune を使用してこれらのゲイン スケジュールを調整し、完全な非線形システムが設計要件を満たすようにすることができます。ゲイン スケジュールの調整により、ルックアップ テーブル データの適切な値を特定したり、MATLAB Function ブロックに組み込む正しい関数を特定したりできます。systune の場合、ゲイン スケジュールは調整可能な係数をもつスケジューリング変数の関数としてパラメーター化されます。

ゲイン スケジュールの調整のワークフロー

ゲイン スケジュール制御システムを調整する際の一般的なワークフローは次のとおりです。

  1. 調整の対象となる操作範囲を適切にカバーする設計点のセットを選択します。"設計点" は、特定の操作条件を記述するスケジューリング変数の値のセットです。設計点セットは、値の規則的なグリッドまたは散布型のセットにすることができます。通常は、いくつかの設計点から始めます。調整後のシステムが設計点において達成するパフォーマンスが設計点間で維持されない場合は、設計点を追加し、再調整します。

  2. 選択した設計点での線形化されたプラント ダイナミクスを表す線形モデルの集合を取得します。線形モデルの配列を取得する方法には以下があります。

    • 設計点のグリッドで表される各操作条件で Simulink モデルを線形化します。たとえば、各設計点が定常状態の操作条件に対応する場合、プラントを各設計点で平衡化して結果の操作点で線形化できます。あるいは、スケジューリング変数が時間の場合には、一連のシミュレーション スナップショットで線形化できます。

    • 設計点でプラントの LPV モデルをサンプリングします。

    詳細については、ゲイン スケジュール コントローラー調整のプラント モデルを参照してください。

  3. Simulink の調整のために slTuner インターフェイスを作成します。これを行うと、プラントの線形モデルの配列が置き換えられ、各設計点に対応する調整可能な閉ループ モデルのセットが slTuner インターフェイスに含められます。詳細については、slTuner インターフェイスでの複数の設計点を参照してください。

  4. ゲイン スケジュールをパラメトリックなゲイン曲面としてモデル化します。"パラメトリックなゲイン曲面" は、係数が調整可能な基底関数の拡張です。ベクトル σ がスケジューリング変数からなる場合、このような拡張は次の形式になります。

    K(σ)=K0+K1F1(n(σ))++KMFM(n(σ)).

    n(σ) は正規化関数です。systune で調整する場合、tunableSurface を使ってパラメトリックなゲイン曲面 K(σ) を表します。調整用に作成する slTuner インターフェイス内で setBlockParam を使用して、結果のゲイン曲面をゲイン スケジュールを表すブロックに関連付けます。systune は、すべての設計点について係数 K0,...,KM を調整します。

    詳細については、ゲイン スケジュールのパラメーター化を参照してください。

  5. TuningGoal オブジェクトを使用して調整目標を指定します。すべての設計点に適用される調整目標や、設計点のサブセットに適用される調整目標を指定できます。また、設計点ごとに変化する調整目標を指定することも可能です。たとえば、特定のスケジューリング変数の振幅が大きくなるにつれて徐々に厳しくなる最小ゲイン余裕を定義できます。

    設計点により変化する調整目標の指定の詳細については、操作条件による要件の変更を参照してください。

    一般的な調整目標の指定の詳細については、調整目標を参照してください。

  6. systune を使って制御システムを調整します。systune は、K0,...,KM のパラメーター セットを、設計グリッド内のすべてのプラント モデルに対して同時に調整します (マルチモデル調整)。

  7. 調整結果を検証します。調整されたゲイン曲面を確認して、各設計点で線形化したシステムの性能を検証できます。ただし、局所的な線形性能は、非線形システム全体の性能を保証するものではありません。したがって、調整後のゲイン スケジュールを使ってシミュレーションベースの検証を実行することが重要です。

    詳細については、ゲイン スケジュール制御システムの検証を参照してください。

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