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Simulink のマルチパス フェージング チャネル

このモデルでは、Communications Toolbox™ の SISO Fading Channel ブロックを使用して、無線通信における実際の現象の有効なモデルであるマルチパスのレイリーおよびライス フェージング チャネルをシミュレートする方法を示します。これらの現象には、マルチパス散乱効果、時間分散、送信側と受信側の間の相対的な運動が原因で起こるドップラー シフトが含まれます。モデルでは、インパルス応答と周波数応答、ドップラー スペクトル、コンポーネント ゲインなどのチャネルの特性を可視化する方法も示します。

モデルおよびパラメーター

この例のモデルでは、マルチパス レイリー フェージング チャネル経由およびマルチパス ライス フェージング チャネル経由の QPSK 送信をシミュレートします。どちらのチャネル ブロックも SISO Fading Channel ライブラリ ブロックから構成されます。伝送とチャネル パラメーターは、ワークスペース変数によって制御できます。

次の変数は、"Bit Source" ブロックを制御します。既定の設定では、ビット レートが 10 M b/s (5 M sym/s)、送信された各フレームが 2000 ビット長 (1000 シンボル) です。

bitRate =

    10000000


bitsPerFrame =

        2000

次の変数は、レイリー フェージング チャネル ブロックとライス フェージング チャネル ブロックの両方を制御します。既定の設定では、チャネルは 4 つのフェージング パスとしてモデル化され、各パスはほぼ同じ遅延で受信するマルチパス成分の集まりを表します。

delayVector =

   1.0e-06 *

         0    0.2000    0.4000    0.8000


gainVector =

     0    -3    -6    -9

慣例により、最初のパスの遅延は一般にゼロに設定されます。それ以降のパスの場合、1 マイクロ秒の遅延はパス長では 300 m の違いに相当します。一部の屋外のマルチパス環境では、反射されたパスが最短パスより数キロメートルも長くなることがあります。パス遅延を上のように指定した場合、最後のパスは最短パスより 240 m 長くなるため、0.8 マイクロ秒遅れて到着します。

チャネルの遅延プロファイルは、パス遅延と平均パス ゲイン両方の影響を受けます。一般に、平均パス ゲインは、遅延により指数関数的に減衰します (つまり、dB 値は直線的に減衰します) が、特定の遅延プロファイルは伝播環境に依存します。各チャネル ブロックでは、平均ゲインが時間の経過と共に 0 dB になるように平均パス ゲインを正規化するオプションもオンにしました。

次の変数は、v*f/c で計算される最大ドップラー シフトを制御します。ここで、v は移動体速度、f は搬送周波数、c は光速です。モデルの既定の最大ドップラー シフトは 200 Hz で、これは移動体速度 65 mph (30 m/s) と搬送周波数 2 GHz に対応します。

maxDopplerShift =

   200

次の変数は、ライス フェージング チャネル ブロックに適用されます。見通し内成分のドップラー シフトは一般に、最大ドップラー シフト maxDopplerShift より小さくなり、見通し内パスの方向に対する移動体の移動方向に依存します。K ファクターは、関連付けられた拡散成分の平均受信電力に対する見通し内パスの平均受信電力の比を指定します。

LOSDopplerShift =

   100


KFactor =

    10

SISO Fading Channel ブロックでは、モデルの実行中にチャネル インパルス応答、周波数応答およびドップラー スペクトルを可視化できます。これを呼び出すには、モデルを実行する前に Channel visualization パラメーターを目的のチャネルの特性に設定します。チャネルの視覚化をオンにするとシミュレーションの速度が遅くなる可能性があることに注意してください。

広帯域または周波数選択性フェージング

既定の設定では、チャネルの遅延スパン (0.8 マイクロ秒) が、入力 QPSK シンボル周期 (0.2 マイクロ秒) より大きく、かなりの符号間干渉 (ISI) が発生します。そのため、結果として得られるチャネル周波数応答はフラットではなく、10 M Hz 信号帯域幅を超えると大きく減衰する場合があります。これは、この帯域幅を超えると強度レベルが変化することが原因で、周波数選択性フェージングと呼ばれます。

チャネル ブロックの Channel visualization パラメーターを 'Impulse response' に設定すると、帯域制限インパルス応答 (黄色の円) が表示されます。この可視化には、インパルス応答のピーク近辺に密集して存在する、潜在的なフェージング パス ゲイン (ピンクのステム) の遅延と振幅も示されます。ドップラー効果によりゲインは経時変化するため、パス ゲインは Average path gains (dB) パラメーター値と同じではありません。

表示すると、チャネルのインパルス応答は、この遅延プロファイルのパス ゲインと一致します。離散パス表示はすべて入力シンボル周期の整数倍であるためです。この場合、チャネル フィルターの遅延もありません。

同様に Channel visualization パラメーターを 'Frequency response' に設定すると、チャネルの周波数応答が表示されます。また、Channel visualization を 'Impulse and frequency responses' に設定すれば、インパルスと周波数の両方の応答を並べて表示できます。チャネルの強度レベルは帯域幅全体で異なることがわかります。

チャネル可視化プロットで示したように、入力サンプルを可視化するパーセンテージはチャネル ブロックの Percentage of samples to display パラメーターを変更することで制御できます。一般にパーセンテージが小さいほどモデルの実行速度は速くなります。可視化された図が表示されたら、[Playback] ボタンをクリックし、[Reduce Updates to Improve Performance] または [Reduce Plot Rate to Improve Performance] オプションをオフにして表示の精度を上げます。シミュレーション速度を上げるために、既定ではこのオプションがオンになっています。すべての入力サンプルのチャネル応答を確認するには、このオプションをオフにして [Percentage of samples to display] を '100%' に設定します。

同じチャネル仕様について、今度はその最初の離散パスのドップラー スペクトルを表示します。これはフェージング処理の統計的特性描写です。チャネル ブロックはドップラー スペクトル (青色の星) を定期的に測定します。時間の経過とともにブロックで処理されるサンプルが増えるに従い、この測定値の平均が理論上のドップラー スペクトル (黄色の曲線) に近づいていきます。

レイリー チャネル ブロックに続くコンスタレーション ダイアグラムを開くと、広帯域フェージングがコンスタレーションに及ぼす影響がわかります。可視化するためにチャネル ダイナミクスを減速させ、最大ドップラー シフトを 5 Hz に低減しました。QPSK チャネルの入力信号に比べ、広帯域信号の時間分散に由来する ISI によって生じる、チャネル出力信号の明らかな歪みを確認できます。

狭帯域または周波数フラット フェージング

帯域幅が狭く信号を個別の成分に分解できないと、周波数応答はほぼフラットになります。これは、インパルス応答が引き起こした最小の時間分散と非常に小さな ISI が原因です。このようなマルチパス フェージングは、"狭帯域フェージング" または "周波数フラット フェージング" とも呼ばれます。

影響を確認するために、信号帯域幅を 10M b/s (5M sym/s) から 1M b/s (500K sym/s) に減少します。これでチャネルの遅延スパン (0.8 マイクロ秒) が QPSK シンボル周期 (2 マイクロ秒) よりかなり小さくなります。すべての遅延成分が、1 つの遅延 (この場合はゼロで) で結集します。

bitRate =

     1000000

この狭帯域フェージング動作は、レイリー チャネル ブロックの Channel visualization パラメーターを 'Impulse and frequency responses' に設定してからモデルを実行することで、視覚的に検証できます。

シミュレーションを簡略化して高速にするため、狭帯域フェージング チャネルは、多くの場合、単一パス フェージング チャネルとしてモデル化されます。つまり、マルチパス フェージング モデルは、狭帯域フェージング チャネルを重複して指定したものです。次の設定は、完全にフラットな周波数応答の狭帯域フェージング チャネルに対応します。

ここで、レイリー チャネル ブロックに続くコンスタレーション ダイアグラムを開いて、元の 4 パス フェージング チャネルに戻り、狭帯域フェージングがどのように信号減衰と位相回転を招くかを確認します。減衰と回転以外に、チャネル出力信号の ISI が少量であるために生じる信号の歪みも確認できます。歪みは、上で確認した広帯域チャネルのものよりかなり小さくなります。

ライス フェージング

ライス フェージング チャネル ブロックは、拡散マルチパス散乱と共に見通し内伝播をモデル化します。これにより、パス ゲインの振幅の変化が小さくなります。レイリー チャネルとライス チャネルの間の変動を比較するため、単一パス遅延をモデル化するようにチャネル ブロックを再構成し、Time Scope ブロックを使用してパス ゲインを経時的に表示します。レイリー フェージング チャネルの振幅が約 15 dB であるのに対し、ライス フェージング チャネルの場合、振幅は約 5 dB の範囲で変動することに注意してください。ライス フェージング チャネルでは、この変化は、K ファクター (現在の設定値は 10) を大きくするとさらに小さくなります。