住友重機械工業、油圧ショベル用の組み込み型モデル予測制御ソフトウェアの開発を加速

「モデルベースデザインを使用することで、当社の油圧エンジニアは、組み込みエンジニアを介さずにコントローラーの設計および実装を完了できるようになりました。開発時間が短縮され、結果的にコントローラー品質の向上につながるため、これは大きなメリットです。

課題

油圧ショベル用の組み込みエンジン制御ソフトウェアの設計および実装を迅速化

ソリューション

Simulink および Embedded Coder によるモデルベースデザイン (MBD、モデルベース開発) を使用した、ショベルの作業性能を最大限に高めるモデル予測コントローラーのモデル化、シミュレーション、コード生成

結果

  • 燃料効率が 15% 向上
  • エンジニアの作業量を 50% 削減
  • 厳しい納期に対応
住友重機械工業の油圧ショベル。

住友重機械工業の油圧ショベル。

油圧ショベルには、重い荷物を積み降ろしする際に、エンジンの回転数を一定に保つ制御が必要です。このような組み込みコントローラーを設計する際には、急激な負荷変動を考慮し、厳しい排出ガス規制や安全性を確保する必要があります。

新しい排出ガス規制への対応を迫られた住友重機械工業のエンジニアは、Simulink® を使用したモデルベースデザインによって、油圧ショベル制御ソフトウェアの設計と実装を加速させました。

住友重機械工業のエンジニア、Eisuke Matsuzaki 氏は次のように話します。「低水準コードを記述するのではなく、モデルベースデザインを使用して、制御アルゴリズムを開発することに注力しました。その結果、厳しい時間的制約の中、限られた時間で高品質のコントローラーを実現することができました。」

課題

住友重機械工業は、多くの重機メーカーと同様に、エンジンを別のサプライヤーから調達しています。そのため、エンジニアリング チームは、エンジンとそのブラックボックス型の RPM コントローラーの特性を判別する方法を必要としていました。そして、CAN バス通信に伴う遅延を管理しながら、負荷変動時のエンジン回転数の変化を最小限に抑えるモデル予測コントローラー (MPC) を設計する必要がありました。MPC を採用したのは、入出力の制約を考慮していること、また、内部予測モデルの変更により複数のエンジンタイプに対応できることが理由でした。

これまで、住友重機械工業では、油圧のエンジニアが制御アルゴリズムを設計し、組み込みエンジニアがコード化してターゲットプロセッサに実装した後、油圧エンジニアが実際のショベルでテストするという従来の開発手法を取っていました。エンジニア間のコミュニケーション ミスや、コーディングエラー、テスト用ハードウェアへのアクセス制限などが原因で、開発の反復作業に遅れが生じることも少なくありませんでした。排出ガス規制がますます強化される中、開発期間を短縮し、厳しいスケジュールで新しいコントローラーを納品する必要がありました

ソリューション

住友重機械工業のエンジニアは、Simulink を使用したモデルベースデザインによって、油圧ショベル用の組み込み MPC を開発しました。

Simulink および Simulink Design Optimization™ によって、エンジンのテストデータからパラメーターを推定して、伝達関数ベースのプラントモデルを構築し、油圧ポンプにかかるトルク負荷などの入力外乱や、電源の出力制限やむだ時間などの非線形要素を取り込みました。

推定されたプラントモデルを、Model Predictive Control Toolbox™ で設計した MPC の内部予測モデルとして使用しました。また、Simulink を使用したシミュレーションによって、コントローラーのパラメーターを調整し、コントローラーの設計を検証しました。

また、Embedded Coder® を使用して、32 ビット RISC マイクロコントローラーのコントローラー モデルから数百行の C コードを生成しました。生成されたコードは、1 つのコントローラーで複数のエンジンタイプをサポートするように更新されました。

住友重機械工業は、実際のショベルを使った性能評価テストを終えた後、実稼働環境での新しいコントローラーの使用を開始しました。

結果

  • 燃料効率が 15% 向上。Matsuzaki 氏は次のように話します。「住友重機械工業は、ショベルの動的性能を損なうことなく、燃料消費量を 15% 削減することに成功しました。Model Predictive Control Toolbox の使用と制御設計の改善により、エンジン回転数の変動を 50% 低減できたことも、効率向上の一因となっています。」
  • エンジニアの作業量を 50% 削減。Matsuzaki 氏は次のように続けます。「モデルベースデザインのおかげで、従来の開発手法の非効率性が解消されただけでなく、制御設計から展開まで一貫したワークフローを実現できたことで、開発にかかる時間は間違いなく短縮されました。正確に計ることは難しいですが、モデルベースデザインの導入により、エンジニアリング時間は半分になったと考えています。」
  • 厳しい納期に対応。Matsuzaki 氏は次のように締めくくります。「もし、納期を過ぎてしまっていたら、Tier4 Final の排出ガス規制への対応が遅れ、ショベルの販売を継続できなかったでしょう。Simulink でコントローラーのモデル化とシミュレーションを行い、Embedded Coder でコードを生成することで、コードの記述よりも制御アルゴリズムに注力することができ、予定どおりに納品することができました。」