DENSO、補機モーターのシステムアーキテクチャモデルを構築し、制御設計と検証を高速化

“MathWorksのツールで、モデルベースシステムズエンジニアリング領域に向けて抽象度を上げた設計環境を効率的に構築できました。”

課題

補機モーターを統合する前に、コア部とカスタマイズ部を別々にモデル化し、分析する。

ソリューション

システムアーキテクチャとしてSystem Composerを使用し、Simulinkを使用して補機モーターのカスタマイズ部をモデル化する

結果

  • 高品質を維持しながら、エンジニアリングリソースを3分の1削減
  • モデルベースデザインのプロセスを複数製品に拡大
  • Automotive SPICE に準じた開発プロセスを単一ツールチェーン内で一貫して構築
DENSOのブロワーモーター。車載空調システムから温風と冷風を送り出す様子。

DENSOのブロワーモーターは、SimulinkとSystem Composerでモデリングし、検証しています。

グローバルな自動車部品メーカーとして、DENSOは15年以上にわたって自動車部品の開発にMATLAB® とSimulink® を使用してきました。DENSOのエンジニアは、これらのツールを使ってモータードライブユニットを様々な車種に向けて個別に設計していたため、対応する車種を増やすたびに設計の規模が年々増大していきました。彼らはそれを受けて、設計効率性の向上、作業負荷の軽減そして設計プロセスの業界標準への準拠を達成するために新たにSystem Composer™を採用しました。

DENSOが最初にSystem Composerを適用したのは、車両のHVACシステムの温風と冷風を送るブロワーモーターの開発でした。SimulinkとSystem Composerを使用することで、DENSOのエンジニアは、これらの補機モーターのコア部とカスタマイズ部を、統合する前に別々にモデリングおよび解析できるようになりました。

「SimulinkとSystem Composerのおかげで、補機モーターを抽象的なレベルでモデリングできるようになりました。コア部とカスタマイズ部で分けられたモデリング環境は、開発効率をさらに向上させてくれました」とDENSOエレクトロニクス技術1部 第5設計室 設計3課 担当課長 平井 憲幸氏は述べています。

課題

DENSOは様々なタイプの補機モーターを設計していますが、従来のモデルでは、共通設計部分であるコア部と、アプリケーションに依存するカスタマイズ部が混在していました。また、Automotive SPICE(ASPICE)のような標準化された発注要件に基づいて補機モーターを開発するには、コア部とカスタマイズ部を別々にモデル化・テストし、その後全体として統合する必要がありました。

ソリューション

Automotive SPICE に準じたワークフローを構築するために、DENSOのエンジニアは、アーキテクチャモデ ルとして System Composer を使用して共通設計部であるコア部とアプリケーション毎にカスタマイズ部の機能配置を検討しました。Simulinkモデルでは、コアコンポーネントとカスタマイズコンポーネントは分離されていますが、データフローはアーキテクチャモデルで接続されています。

次に、Requirements Toolbox™を使用して、要件情報とシステムアーキテクチャモデルとの間のトレーサビリティを構築しました。そして、Simulink Test™を使用して、要件とテストの間のリンクを管理しました。特に、トレーサビリティマトリックス、Implemented Status、Verified Status機能は、割り当てられた要件が正確かつ完全であることの検証に役立ち、Automotive SPICE で要求される要件抽出からテストまでの一貫したプロセスを可能にしました。

最後に、DENSOのエンジニアは、MathWorksのエンジニアと協力して、APIを通じてMATLABスクリプトからSystem Composer、Requirements Toolbox、Simulink Test、Simulinkの機能を自動的に呼び出して実行する仕組みを作成しました。System Composerでステレオタイプやプロパティ値を定義できるため、GUIを介して各コンポーネントの設計のために必要なパラメータを簡単に変更することができました。

結果

  • 高品質を維持しながら、エンジニアリングリソースを3分の1削減。DENSOのエレクトロニクス技術1部の大石 陵平氏は、「System Composerによって、コア部の設計とカスタマイズ部の設計を切り離すことができ、作業負荷の軽減に大きく貢献しました。」と述べています。
  • モデルベースデザインのプロセスを複数製品に拡大。「より抽象度の高い補機モーターというレイヤーでのモデリングが可能になったことで、ブロワーモーターだけでなく、他の補機モーターにも展開できるようになると期待しています」と大石氏は述べています。
  • Automotive SPICE に準じた開発プロセスを単一ツールチェーン内で一貫して構築。 「MathWorksのツールにより、抽象度の高いモデルと具体的なモデルの両方を一貫して管理することができました」と平井氏は述べています。