ユーザー事例

ASML、半導体製造用に機械学習を使用したバーチャルメトロロジー技術を開発

課題

機械学習手法を応用して半導体製造における重ね合わせ計測を改善する

ソリューション

MATLABを使用して、アライメント計測から重ね合わせ計測を予測するニューラルネットワークの作成と学習を行う

結果

  • 業界でのリーダーシップを確立
  • 製造における潜在的な改善点を特定
  • 保守のオーバーヘッドを最小化

「プロセスエンジニアとして、ニューラルネットワークや機械学習の経験はありませんでしたが、MATLABの例からバーチャルメトロロジーに最適な機械学習機能を見つけることができました。CやPythonでは、適切なパッケージの特定、検証、統合に時間がかかりすぎて実現は難しかったかもしれません」

Emil Schmitt-Weaver氏, ASML

TWINSCANとTrackの断面:アライメント計測と重ね合わせ計測によるウエハーの測定


ナノファブリケーションにおいて、マイクロチップのサイズを左右する基本的なパターン形成ステップがフォトリソグラフィーです。フォトリソグラフィーの間、短波長の光の量が、画像を介して光学系によって調整され、基板(通常はシリコン)を覆う感光性物質の薄膜に照射する光を多くすることで薄膜のサイズを小さくしていきます。利用可能な基板の表面領域がすべて同じ画像で露出されるまでこのステップを繰り返します。このステップでできたものを層と呼びます。チップを形成する複雑な微細構造を作成するには、この露出した層が複数必要になります。層の間の接続の不具合による歩留まりの問題が生じないように、層の間のすべてのパターンを想定したとおりに整列させなければなりません。

スループットに影響を与えずに層のアライメントを確実にするために、ASMLのTWINSCANフォトリソグラフィーシステムでは、露光ステップの前に測定するアライメント用のマークの数を制限する必要があります。一般に、アライメント用マークの測定に、シーケンス内で一つ前のウエハーの露光に要する時間よりも長い時間をかけることはできません。バーチャルメトロロジーの重ね合わせモデルを適切に修正するには多くの重ね合わせマークが必要となるため、TWINSCANシステムで処理したウエハーをすべて測定することは不可能です。

ASMLは、MATLAB®とStatistics and Machine Learning Toolbox™を使用して、バーチャルメトロロジーによる重ね合わせ計測ソフトウェアを開発しました。このソフトウェアでは機械学習手法を応用しており、すべてのウエハーについて、アライメント計測データから重ね合わせ計測を予測することが可能になっています。

「MATLABと機械学習を応用したことで、既存の計測を最大限に活用するという点において、業界でのリーダーシップを実証することとなりました。この取り組みを文書にして発表したところ、ASML製品で製造プロセスを改善したいというお客様からたくさんの関心が寄せられました」 (ASMLのアプリケーション開発エンジニアEmil Schmitt-Weaver氏)

課題

重ね合わせ誤差の見落としは歩留まりの低下につながるリスクがあるにもかかわらず、ほとんどの半導体製造においては、重ね合わせを測定するウエハーの数は全体のわずか24%にとどまっています。ASMLは、TWINSCANシステムで収集したすべてのウエハーについてのアライメント計測データから機械学習手法を応用してウエハーの重ね合わせ計測を推定し、そのデータを既存のYieldStar計測と比較したいと考えていました。

これまでに機械学習アルゴリズムを開発した経験がなかったSchmitt-Weaver氏は、アルゴリズムの開発にあたり、Python、C、その他の低水準言語ではなく、ASML社内で大規模かつ多様なユーザーに展開され、専任の技術者によって管理されているMATLABの関数を使用することにしました。プロトタイプを迅速に開発したいとの考えからです。

ソリューション

Schmitt-Weaver氏は、MATLAB、Statistics and Machine Learning Toolbox、Deep Learning Toolbox™を使用して、バーチャルメトロロジーを生成する方法を開発しました。 

最初にSchmitt-Weaver氏が行ったのは、Neural Network Time Series Prediction and Modelingアプリを使用して、Deep Learning Toolboxで使用するデータを準備する方法を調べることでした。このアプリでサンプルコードを生成し、エクスポートすることで、どのように関数を組み合わせて使用するかの理解が深まりました。理解度が上がるにつれ、MATLAB Centralの多分野にわたる広範なユーザーコミュニティの例を参考にして、生成されたMATLABコードを活用できるようになりました。

Schmitt-Weaver氏は、TWINSCANシステムからアライメント計測データを、YieldStarシステムを使用して重ね合わせ計測データを同一のウエハーから収集すると、それらのデータを2つのグループに分けました。一つはネットワーク学習用データのグループ、もう一つは検証用データのグループです。

Deep Learning Toolbox と Statistics and Machine Learning Toolboxを使用して、外因的な入力を使用した非線形自己回帰ネットワーク(NARX)を設計し、学習用グループのデータで学習を行いました。

ニューラルネットワークの学習グループへの過剰適合を防ぐために、Deep Learning Toolbox を使用して、ベイズ理論に基づく自動正則化を実装しました。

ネットワークの学習が完了すると、テストデータを入力として与え、その結果をYieldStarシステムによる測定結果と比較しました。

ASMLは、収集したデータを使用して、リアルタイムの重ね合わせ制御装置のプロトタイプをMATLABで開発しました。このネットワークは、歩留まりを改善する基盤とともに、重ね合わせ計測を行っていない可能性があるウエハーを特定できる機能を提供しました。

結果

  • 業界でのリーダーシップを確立. Schmitt-Weaver氏は次のように述べています。「MATLABを使用して重ね合わせ計測を改善することで、重ね合わせ性能の目標を達成するための画期的な方法を生み出せる業界先進企業であることを証明できました。」
  • 製造における潜在的な改善点を特定.「設計から学習までをMATLABで行ったネットワークにより、従来であれば見落とされていた可能性がある系統的および確率的な重ね合わせ誤差を特定できるようになりました。」とSchmitt-Weaver氏は述べています。「この重ね合わせ性能の改善は、5nm以下のノードの誤差を扱うマイクロチップ製造においては欠かせないものです。」
  • 保守のオーバーヘッドを最小化.「ASMLのシステムでは、当初から、コンパイルされたMATLABアルゴリズムを活用してきました。」とSchmitt-Weaver氏は述べています。「専門家によって相互検証された大量の既存スクリプト資産のデータベースを利用できるため、新しい機械学習機能に集中することができました。」

『Virtual overlay metrology for fault detection supported with integrated metrology and machine learning』 Proc. SPIE 9424、『Metrology, Inspection, and Process Control for Microlithography XXIX』、94241T (2015年3月19日)、doi:10.1117/12.2085475

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