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コール オプション価格についてのブラック・ショールズの公式
この例では、ブラック・ショールズの公式を使用してコール オプション価格を計算する方法を示します。この例では、vpasolve
を使用して、ブラック・ショールズの公式からスポット価格とインプライド ボラティリティを求める問題を数値的に解きます。
コール オプション価格を求める
ブラック・ショールズの公式は、ヨーロピアン コール オプションの価格をモデル化したものです [1]。配当のない原株について、式のパラメーターが次のように定義されます。
は、現在の株価またはスポット価格。
は、行使価格。
は、株式の連続複利の年次収益の標準偏差。ボラティリティと呼ばれる。
は、オプションが満期となるまでの期間 (年単位)。
は、年率換算した無リスク金利。
ブラック・ショールズのパラメーターに基づくコール オプションの価格 は次のようになります。
,
ここで
は標準正規累積分布関数で、 となります。
95 ドルの行使価格で 3 か月で有効期限が切れるヨーロピアン ストック オプションの価格を求めます。原株が無配当で、100 ドルで取引され、ボラティリティが年間 50% であると仮定します。無リスク金利は年間 1% です。
sym
を使用して、ブラック・ショールズのパラメーターの値を表現するシンボリック数を作成します。
syms t d S = sym(100); % current stock price (spot price) K = sym(95); % exercise price (strike price) sigma = sym(0.50); % volatility of stock T = sym(3/12); % expiry time in years r = sym(0.01); % annualized risk-free interest rate
オプション価格を近似なしで計算します。標準正規累積分布関数を表現するシンボリック関数 N(d)
を作成します。
PV_K = K*exp(-r*T); d1 = (log(S/K) + (r + sigma^2/2)*T)/(sigma*sqrt(T)); d2 = d1 - sigma*sqrt(T); N(d) = int(exp(-((t)^2)/2),t,-Inf,d)*1/sqrt(2*sym(pi))
N(d) =
Csym = N(d1)*S - N(d2)*PV_K
Csym =
可変精度の数値結果を取得するには、vpa
を使用します。既定では、vpa
は有効桁数 32 桁の数値を返します。
Cvpa = vpa(Csym)
Cvpa =
精度を変更するには、digits
を使用します。有効桁数 6 桁でのオプション価格は 12.5279 ドルです。
digits(6) Cvpa = vpa(Csym)
Cvpa =
コール オプション価格のプロット
次に、同じストック オプションで、満期までの期間が変わり、日々の株価がわからないとします。満期までの期間 を 0~0.25 年まで変動させ、スポット価格 を 50 ドル~140 ドルまで変動させた場合の、このコール オプションの価格を求めます。行使価格 (K
)、ボラティリティ (sigma
)、および金利 (r
) は、前の例の値を使用します。この場合、満期までの期間 T
と日々の株価 S
を変量として使用します。
シンボリック式 C
を定義し、T
と S
を未知の変数として使用してコール オプション価格を表現します。
syms T S PV_K = K*exp(-r*T); d1 = (log(S/K) + (r + sigma^2/2)*T)/(sigma*sqrt(T)); d2 = d1 - sigma*sqrt(T); Nd1 = int(exp(-((t)^2)/2),-Inf,d1)*1/sqrt(2*pi); Nd2 = int(exp(-((t)^2)/2),-Inf,d2)*1/sqrt(2*pi); C = Nd1*S - Nd2*PV_K;
スポット価格と満期までの期間の関数としてコール オプション価格をプロットします。
fsurf(C,[50 140 0 0.25]) xlabel('Spot price') ylabel('Expiry time') zlabel('Call option price')
満期までの期間 0.1 年、スポット価格 105 ドルで、コール オプション価格を計算します。subs
を使用して T
と S
の値を式 C
に代入します。vpa
を使用して価格を数値結果として返します。
Csym = subs(C,[T S],[0.1 105]); Cvpa = vpa(Csym)
Cvpa =
スポット価格を求める
オプション価格が変化した場合に、原株価にどのような影響があるかを知りたいとします。これは、既知のパラメーター 、、、、および を与えたブラック・ショールズの公式から を求める問題です。
たとえば、1 か月後に、同じコール オプション価格が満期までの期間 2 か月で 15.04 ドルで取引されるとします。原株のスポット価格を求めます。未知のパラメーター S
をもつブラック・ショールズの公式を表現するシンボリック関数 C(S)
を作成します。
syms C(S) d1(S) d2(S) Nd1(S) Nd2(S) K = 95; % exercise price (strike price) sigma = 0.50; % volatility of stock T = 2/12; % expiry time in years r = 0.01; % annualized risk-free interest rate PV_K = K*exp(-r*T); d1(S) = (log(S/K) + (r + sigma^2/2)*T)/(sigma*sqrt(T)); d2(S) = d1 - sigma*sqrt(T); Nd1(S) = int(exp(-((t)^2)/2),-Inf,d1)*1/sqrt(2*pi); Nd2(S) = int(exp(-((t)^2)/2),-Inf,d2)*1/sqrt(2*pi); C(S) = Nd1*S - Nd2*PV_K;
vpasolve
を使用して原株のスポット価格を数値的に解きます。正の数値でのみ解を求めます。原株のスポット価格は 106.162 ドルです。
S_Sol = vpasolve(C(S) == 15.04,S,[0 Inf])
S_Sol =
インプライド ボラティリティを求める
オプション価格が変化した場合に、インプライド ボラティリティがどうなるか知りたいとします。これは、既知のパラメーター 、、、、および を与えたブラック・ショールズの公式から の値を求める問題です。
95 ドルの行使価格で、3 か月で有効期限が切れる、同じストック オプションを考えます。原株が 100 ドルで取引され、無リスク金利が年間 1% であると仮定します。6 ドル~25 ドルの範囲のオプション価格の関数としてインプライド ボラティリティを求めます。オプション価格の範囲のベクトルを作成します。未知のパラメーター sigma
をもつブラック・ショールズの公式を表現するシンボリック関数 C(sigma)
を作成します。vpasolve
を使用してインプライド ボラティリティを数値的に解きます。
syms C(sigma) d1(sigma) d2(sigma) Nd1(sigma) Nd2(sigma) S = 100; % current stock price (spot price) K = 95; % exercise price (strike price) T = 3/12; % expiry time in years r = 0.01; % annualized risk-free interest rate C_Range = 6:25; % range of option price sigma_Sol = zeros(size(C_Range)); PV_K = K*exp(-r*T); d1(sigma) = (log(S/K) + (r + sigma^2/2)*T)/(sigma*sqrt(T)); d2(sigma) = d1 - sigma*sqrt(T); Nd1(sigma) = int(exp(-((t)^2)/2),-Inf,d1)*1/sqrt(2*pi); Nd2(sigma) = int(exp(-((t)^2)/2),-Inf,d2)*1/sqrt(2*pi); C(sigma) = Nd1*S - Nd2*PV_K; for i = 1:length(C_Range) sigma_Sol(i) = vpasolve(C(sigma) == C_Range(i),sigma,[0 Inf]); end
オプション価格の関数としてインプライド ボラティリティをプロットします。
plot(C_Range,sigma_Sol) xlabel('Option price') ylabel('Implied volatility')