風力タービンが供給する平均電力の評価
この例では、Symbolic Math Toolbox™ と Statistics and Machine Learning Toolbox™ を使って風力タービンの平均電力の出力を計算する方法を説明します。この例では、風力エネルギーからタービン電力への変換をモデル化するパラメトリック解析式を定義します。次に、風速がワイブル分布に従うと仮定して平均電力の出力を評価します。
風力タービン モデルの定義
風力タービンに供給される全電力は、風の運動エネルギーの導関数を計算することで推定できます。
この方程式のパラメーターは以下のとおりです。
– タービン ブレードの受風面積 ()
– 空気密度 ()
– 風速 ()
この図に示すように、風力エネルギーを電力に変換する過程で効率損失が発生します。
この方程式は、実際の風力タービンの電力出力 を表します。
ここで、 は風速に依存する風力エネルギーの全体の効率または変換係数です。
全体の効率は 0.3 から 0.5 の範囲で、タービンの風速および回転速度で変化します。固定の回転速度の場合、風力タービンで供給される電力は、定格の風速で最大 () に達します。この定格の風速での全体の効率は として表されます。
固定の回転速度を仮定すると、風力タービンの電力出力は風速に依存します。このグラフは のプロファイルを の関数として推定したものです。
グラフのパラメーターは以下のとおりです。
– カットイン速度 (電力出力が 0 を超えて発電が開始される速度)
– 定格の風速
– ファーリング風速 (構造への被害を防ぐためにタービンが停止する速度)
電力出力のプロファイルは と の間で増加します。この領域では、電力出力 は に指数関数的、つまり、 のべき乗に依存します。 と の間の領域では、電力出力は の一定の最大値になります。その他すべての条件では、電力出力は 0 です。
電力出力の区分的関数の定義
区分的関数を定義することで、タービンの電力出力を記述します。風力 とパラメーター 、、、 および が正の実数であると仮定します。また、カットイン速度は定格の風速より小さく、定格の風速はファーリング風速より小さいと仮定します。
syms C_1 C_2 syms u u_c u_r u_f k P_er positive real assume(0 < u_c < u_r < u_f) Pe(u) = piecewise(u < u_c, 0, ... u_c <= u <= u_r, C_1 + C_2*u^k, ... u_r < u <= u_f, P_er, ... u_f < u, 0)
Pe(u) =
および という条件に基づき、 および の係数を求めます。
sol = solve([Pe(u_c) == 0; Pe(u_r) == P_er],[C_1 C_2]);
と の解を区分的関数に代入します。
Pe = subs(Pe,{C_1,C_2},{sol.C_1,sol.C_2})
Pe(u) =
風速のプロファイルの定義
定格の電力出力は、風力タービンの可能な発電量を示します。ただし、タービンの電力出力は風速に依存します。タービンで生成される平均電力を計算するには、外部の風力条件を考慮する必要があります。この例では、ワイブル分布を使って風速をモデル化します。風速のプロファイルはワイブル確率密度関数に従います。
パラメーター および は、それぞれスケールと形状を表します。一般に、 の値が大きくなると、風速の中央値が高くなり、 の値が大きくなると、風速のばらつきが小さくなることを意味します。
ワイブル分布 (Statistics and Machine Learning Toolbox) から乱数を生成するには、関数 wblrnd
を使用することができます。たとえば、パラメーター および を選択します。ワイブル分布に従う 1000 個の乱数を生成します。これらの乱数を確率密度関数で正規化したヒストグラムとしてプロットします。
a = 12.5;
b = 2.2;
N = 1000;
r = wblrnd(a,b,[1 N]);
histogram(r,15,Normalization="pdf")
ワイブル確率密度関数 (pdf) を生成するには、wblpdf
を使用します。pdf をプロットし、サンプリングされた乱数のヒストグラム プロットと比較します。
hold on x = linspace(0,34,N); y = wblpdf(x,a,b); plot(x,y,LineWidth=2) hold off title("Weibull Distribution of Wind Speeds") xlabel("Wind Speed (m/s)")
平均電力出力の計算
次の積分を使って、風力タービンの平均電力出力を計算できます。
ワイブル pdf を解析的に定義し、パラメーター および が正の実数であると仮定します。
syms a b positive real f(u) = (b/a)*(u/a)^(b-1)/exp((u/a)^b)
f(u) =
平均電力出力の評価に使用するための被積分を求めます。
Pintegrand(u) = simplify(Pe(u)*f(u))
Pintegrand(u) =
int
を使用して、 から の範囲を風速 で積分を行います。得られた解析式は、風力タービンの平均電力出力を表します。
Pav = int(Pintegrand,u,0,Inf)
Pav =
特定のパラメーター値の平均電力出力を評価するには、関数 subs
を使用します。たとえば、これらのパラメーターの平均電力出力を求めます。
params.a = 12.5; params.b = 2.2; params.k = 2; params.uc = 5; params.ur = 15; params.uf = 40; params.Per = 2e5; Pav = subs(Pav,{a b k u_c u_r u_f P_er},{params.a params.b params.k params.uc params.ur params.uf params.Per})
Pav =
結果は、指数関数とガンマ関数を含む厳密なシンボリック数です。シンボリック数を倍精度の数値に変換するには、double
を使用します。
Pav_num = double(Pav)
Pav_num = 9.7744e+04
この例で定義したパラメトリック式を使用して、さまざまな風力タービン構成や風力発電プラント用地を評価できます。詳細は、Wind Resource Assessment を参照してください。
参考
syms
| assume
| piecewise
| int
| subs
関連するトピック
- シンボリック計算の実行
- 確率分布の操作 (Statistics and Machine Learning Toolbox)