オーバーシュート目標
目的
制御システム調整器を使用しているときに、指定した入力から指定した出力へのステップ応答のオーバーシュートを制限します。
説明
オーバーシュート目標は、指定した信号の位置の間のステップ応答のオーバーシュートを制限します。この制約は、調整された応答のオーバーシュートがターゲット オーバーシュートより小さいときに達成されます。
ソフトウェアは、2 次システムの特性を想定して、最大のオーバーシュートをピーク ゲイン制約にマッピングします。したがって、より高次のシステムを調整する場合、オーバーシュート制約は近似にしかなりません。また、オーバーシュート目標はオーバーシュートを 5% 未満に確実に減らすことはできません。
制御システム調整器で調整目標を作成すると、調整目標プロットが作成されます。プロットの影付き領域は、周波数領域内の調整目標が満たされない範囲を表しています。
作成
制御システム調整器の [調整] タブで [新規目標] 、 [最大オーバーシュート] を選択してオーバーシュート目標を作成します。
コマンド ラインにおける同等の操作
コマンド ラインで制御システムを調整する場合、TuningGoal.Overshoot
を使用してステップ応答目標を指定します。
応答選択
ダイアログ ボックスのこのセクションを使用して、調整目標を評価するための入力、出力およびループ開始点の位置を指定します。
ステップ応答入力の指定
ステップ入力を適用するモデル内の信号の位置を 1 つ以上選択します。SISO 応答を制約するには、単一値の入力信号を選択します。たとえば、
'u'
という名前の位置から'y'
という名前の位置へのステップ応答を制約するには、 [信号をリストに追加] をクリックして'u'
を選択します。MIMO 応答を制約するには、複数の信号またはベクトル値の信号を選択します。ステップ応答出力の指定
ステップ入力への応答を測定するモデル内の信号の位置を 1 つ以上選択します。SISO 応答を制約するには、単一値の出力信号を選択します。たとえば、
'u'
という名前の位置から'y'
という名前の位置へのステップ応答を制約するには、 [信号をリストに追加] をクリックして'y'
を選択します。MIMO 応答を制約するには、複数の信号またはベクトル値の信号を選択します。MIMO システムの場合、出力の数は入力の数と等しくなければなりません。次の開ループのオーバーシュートの評価
この調整目標を評価するために、フィードバック ループを開くモデル内の信号の位置を 1 つ以上選択します。調整目標は、特定した位置でフィードバック ループを開くことにより作成される開ループの構成に対して評価されます。たとえば、
'x'
という名前の位置が開始点の調整目標を評価するには、 [信号をリストに追加] をクリックして、'x'
を選択します。
ヒント
Simulink® モデル内で選択された任意の信号を強調表示するには、 をクリックします。入力リストまたは出力リストから信号を削除するには、 をクリックします。複数の信号を選択した場合、 および を使用してそれらの信号を並べ替えることができます。調整目標のために信号の位置を指定する方法の詳細については、対話型調整の目標の指定を参照してください。
オプション
ダイアログ ボックスのこのセクションを使用して、オーバーシュート目標の追加特性を指定します。
% オーバーシュートの制限
最大オーバーシュートの割合を入力します。オーバーシュート目標は、オーバーシュートを 5% 未満に確実に減らすことはできません。
ステップ振幅の調整
MIMO 調整目標において、単位の選択によって応答の異なるチャネルの小さい信号と大きい信号が混合される結果になる場合、このオプションを使用してベクトル値ステップ入力のエントリごとの相対振幅を指定できます。この情報は、追従誤差の参照によって伝達関数の非対角項をスケーリングするために使用されます。このスケーリングは、それぞれの基準信号の振幅に比例して相互干渉が測定されるようにします。
たとえば、出力
'y1' and 'y2'
が基準信号'r1'and 'r2'
に追従する調整目標を仮定します。さらに、出力は相互干渉 10% 未満で基準信号に追従する必要があると仮定します。r1
とr2
が同程度の振幅の場合、r1
からy2
、r2
、y1
へのゲインは 0.1 未満に維持すれば十分です。しかし、r1
がr2
よりも 100 倍大きい場合、r1
によるy2
の変動を確実にr2
ターゲットの 10% 未満にするためには、r1
からy2
へのゲインは 0.001 未満でなければなりません。この結果を確実に得るためには、[ステップ振幅の調整] を[はい]
に設定します。そして [ステップ コマンドの振幅] テキスト ボックスに[100,1]
を入力します。これを行うことで、1 番目の基準信号は 2 番目の基準信号より 100 倍大きいことを考慮するように制御システム調整器に指示します。既定値の [
No
] は、スケーリングが適用されないことを表します。目標を適用
たとえば、Simulink モデルを異なる操作点またはブロックパラメーター値で線形化することによって得られるモデルの配列などの複数のモデルを同時に調整している場合、このオプションを使用します。既定では、アクティブな調整目標がすべてのモデルに適用されます。調整要件を配列内の一部のモデルに適用するには、[モデルのみ] を選択します。次に目標を適用するモデルの配列インデックスを入力します。たとえば、モデル配列の中の 2 番目、3 番目、4 番目のモデルに調整目標を適用する必要があると仮定します。要件の適用を制限するには、[モデルのみ] テキスト ボックスに
2:4
と入力します。複数モデルの調整の詳細については、Robust Tuning Approaches (Robust Control Toolbox)を参照してください。
アルゴリズム
制御システムを調整するときに、各調整目標は正規化されたスカラー値 f(x) に変換されます。ここで x は、制御システムの自由 (調整可能な) パラメーターのベクトルです。その後、ソフトウェアはパラメーター値を調整して f(x) を最小化するか、調整目標が厳密な制約値の場合、f(x) が 1 より小さくなるようにします。
[オーバーシュート目標] の場合、f(x) は目標の相対的な達成度または逸脱度を反映します。f(x) = 1 からのパーセント偏差は、指定したオーバーシュートのターゲットからのパーセント偏差にほぼ一致します。たとえば、f(x) = 1.2 は実際のオーバーシュートがターゲットを約 20% 超えていることを意味し、f(x) = 0.8 は実際のオーバーシュートがターゲットを約 20% 下回っていることを意味します。
[オーバーシュート目標] では、2 次モデルの特性に基づいて、オーバーシュートの代わりに を使用します。ここで、T は要件によって制約を受ける閉ループ伝達関数です。オーバーシュートは 5% ( = 1) から 100% () の範囲で調整されます。[オーバーシュート目標] では、5% 未満のオーバーシュートの適用は効果がありません。
また、この調整目標は、指定されたループ開始点でループが開いた状態で評価される、指定された入力から出力への閉ループ伝達関数に暗黙的な安定性の制約を課します。この暗黙的な制約に影響を受けるダイナミクスは、この調整目標の "安定ダイナミクス" です。[最小 decay 率] と [最大固有振動数] の調整オプションは、これらの暗黙的に制約されるダイナミクスの下限と上限を制御します。最適化が既定の制限を満たしていない場合、または既定の制限が他の要件と競合している場合、[調整] タブで [調整オプション] を使用して既定の設定を変更します。