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周波数応答のオンライン推定の基礎

Simulink® Control Design™Frequency Response Estimator ブロックでは、動作中のシステムの周波数応答を測定できます。ブロックによって、プラントに信号を挿入しプラントの出力を測定する実験が行われます。Simulink Coder™ のようなコード生成製品がある場合、ハードウェアに推定アルゴリズムを実装するコードを生成することが可能です。アルゴリズムをハードウェアに展開すると、物理プラントの周波数応答をリアルタイムで測定することができます。

組み込みの周波数応答の推定は、物理プラントと、動作のテスト ベッドまたは制御環境がある場合に役立つオプションです。その場合、Frequency Response Estimator ブロックをハードウェアに展開できます。ブロックへの入力によって調整プロセスをトリガーするので、コントローラーの調整をいつでも行うことができます。詳細については、リアルタイムで使用するための周波数応答の推定アルゴリズムの展開を参照してください。

Simulink にプラント モデルがある場合、Frequency Response Estimator ブロックを使用してプラント応答をプレビューし、推定をリアルタイムで実行する前に実験設定を調整できます。そうすることで、リアルタイム推定によってシステムが望ましい動作範囲の外に出ないようにします。詳細については、Simulink でモデル化されたプラントを使用したオンライン推定を参照してください。また、モデル線形化器または frestimate を使った周波数応答のオフライン推定に代わる方法として、ブロックを使用して Simulink で線形化できないプラントの周波数応答を取得することもできます。

周波数応答のオンライン推定を使用しない場合

周波数応答のオンライン推定は任意の安定した SISO プラントに使用できます。不安定なプラントの場合、閉ループが内的に安定であればオンライン推定はその閉ループ構成で機能します。閉ループ システムが内的に安定であるのは、ノミナル閉ループ特性方程式の根がすべて左開半平面にある場合のみです。伝達関数 G = NG/DG とコントローラー C = NC/DC をもつプラントの場合、特性方程式は次のとおりです。

DGDC + NGNC = 0.

実質的にこの条件は、G のどの不安定な極も GC の極-零点相殺によって安定化はしないということです。この条件を満たさない不安定なプラントにはオンライン推定を使用しないでください。

推定実験中にプラント内に大きな外乱がある場合、周波数応答のオンライン推定はうまく機能しません。外乱によって摂動信号へのプラント応答が歪むため、推定結果が劣化します。

周波数応答のオンライン推定のためのシステム構成

周波数応答のオンライン推定を使用するには、Frequency Response Estimator ブロックを構成して展開します。ブロックは、プラントにテスト信号を挿入してシステム応答を測定することで推定実験を行います。

次の概略図は、Frequency Response Estimator ブロックを閉ループ システムに適合させるための一般的な構成を示しています。

この構成では、ブロックが制御信号 u を受け取って摂動 Δu をこれに加え、摂動された信号をプラントに直接挿入します。その後、プラント応答 y を測定し、その結果を使用して推定された周波数応答を計算します。

あるいは、出力が摂動 Δu のみとなるようにブロックを構成することもできます。この場合、次の概略図に示すように、この信号をプラント入力に自分で追加できます。

上に示されている閉ループ構成に代わる方法として、ブロックを開ループ プラントで使用し、通常は定数入力信号 u を用いてプラントを望ましい操作点へと駆動することができます。リアルタイム推定では特に、閉ループ構成の使用をお勧めします。閉ループ構成では、挿入された外乱を抑えて安全なプラント動作を維持するようにコントローラーが機能します。

推定のワークフロー

周波数応答のオンライン推定の一般的なワークフローは次のとおりです。

  1. 上記で説明した構成のいずれかで Frequency Response Estimator ブロックをシステムに組み込みます。

  2. 推定実験の開始と終了のタイミングを制御する start/stop 信号を構成します。この信号を使って実験をいつでも開始できます。

  3. 応答および挿入された摂動の振幅を推定する周波数などの、実験パラメーターを構成します。

  4. start/stop 信号を使用して実験を開始し、ブロックにより推奨される実験の長さに基づいて、推定プロセスに十分な時間にわたり実行を続けます。

  5. 実験を終了し、推定された周波数応答を調べます。

これらの各手順を実行する方法の詳細については、以下を参照してください。

参考

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