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リアルタイム モデルの準備のワークフロー

次の図は、リアルタイム モデルの準備のワークフローを示します。

リアルタイム対応モデルは、速度と精度を兼ね備えています。リアルタイム対応モデルのシミュレーションをリアルタイム ターゲット マシン上で実行すると、シミュレーションは最後まで実行され、理論モデルと実測データに基づいた予測に合致する結果が生成されます。モデルがリアルタイム対応かどうかを判定する唯一の方法は、リアルタイム ターゲット マシン上で実行することです。ただし、デスクトップ シミュレーション (開発用コンピューターでのシミュレーション) を使用して、モデルがリアルタイム対応になっているかどうかの見込みを展開前に判断することはできます。

リアルタイム モデルの準備のワークフローは、モデルがリアルタイム対応になる確度を上げるために開発用コンピューターで実行する 2 つのワークフローの 1 番目です。このワークフローでは、モデルのサイズや忠実度を調整して、精度を損なわずに速度を上げる方法を示します。このワークフローを完了したら、リアルタイム シミュレーション ワークフローを実行して、モデルのリアルタイム シミュレーションに最適な固定ステップ、固定コストのソルバー構成を探します。

リアルタイム シミュレーション用モデルの準備

参照結果の取得

実測データまたは理論データを使用して、Simscape™ モデルを設計し、作成します。Simulink® グローバル可変ステップ ソルバーを使用して、モデルのシミュレーションを実行します。基となるデータによって裏付けられるシミュレーション結果を取得するため、必要に応じてモデルを調整します。参照結果は、モデルの準備のワークフローとリアルタイム シミュレーション ワークフローの全段階にわたってモデルの精度を評価する基準となります。

オーバーランのリスクの評価

ステップ サイズが小さすぎて、いずれかのステップで必要とされるすべての処理をリアルタイム コンピューターで完了できない場合、オーバーランが発生します。モデルで必要とされるステップ サイズに、オーバーランを発生させる可能性がある小さいステップがある場合、モデルはリアルタイム シミュレーションに十分な速度を備えているとはいえません。小さいステップによってオーバーランが発生する可能性が高いかどうかを判断するには、可変ステップ ソルバーでモデルのシミュレーション実行に使用されるステップ サイズのプロットを作成します。ステップ サイズのプロットにより、ソルバーがシミュレーション時に使用する小さいステップの数とサイズがわかります。

リアルタイム シミュレーションのオーバーランを発生させる可能性が高い小さいステップのサイズと数に関する、固定のメトリクスはありません。デスクトップ シミュレーションからリアルタイム シミュレーションへのモデルの移行は反復的なプロセスです。このプロセスはモデルの修正、シミュレーション、解析を伴い、モデルに含まれる小さいステップの時間制限が厳しすぎたり、数が多すぎたりして、オーバーランの原因になるかどうかを判断するのに役立ちます。

また、リアルタイム マシン上でさまざまなモデルのシミュレーションを行うことで培われる経験も、モデルに含まれる小さいステップがオーバーランの原因になる可能性を判断するのに役立ちます。たとえば、2 つのモデル M1、M2 と、2 つの異なるリアルタイム プロセッサ RT1、RT2 があるケースを考えます。プロセッサ RT1 と RT2 の定格処理速度は同じです。モデル M1 は機械モデル、M2 は電気モデルで、どちらにも 1e-15 秒の複数のステップがあります。モデル M1 で、リアルタイム プロセッサ RT1 を使用して十分に精度の高い結果でシミュレーションを実行できたのに、リアルタイム プロセッサ RT2 ではオーバーランが発生したり、シミュレーションの精度が不十分になるという場合があります。また、モデル M1 は RT1 と RT2 の両方で最後まで実行されて精度の高い結果が生成されたのに、モデル M2 ではどちらのプロセッサでもオーバーランが発生するという場合もあります。これらのシナリオが可能なのは、モデルのトポロジが異なるとダイナミクスが異なるため、定格処理速度だけがシミュレーションの実行時間を決定する要因ではないためです。オペレーティング システムや I/O 構成などその他の要因も、リアルタイム プロセッサでのシミュレーションの進行に影響を与えます。モデルのリアルタイム対応の実現性に対して小さいステップ サイズが与える影響を評価する際には、使用するリアルタイム機器のシステムのダイナミクスと処理能力を熟知しておくと、意思決定の指針として役立ちます。

モデルの忠実度やスコープの調整

解析によって、モデルのリアルタイム シミュレーションを実行するとオーバーランが発生したり、結果の精度が不十分になる可能性が高いと示された場合には、モデルを修正して速度や精度を上げます。

オーバーランのリスクを評価した際に、シミュレーションで使用している小さいステップの数が多すぎることが判明した場合、次のアプローチによってシミュレーション速度を向上させます。

  • 計算コストの削減。

  • 数値的剛性の軽減。

  • ゼロクロッシングの削減。

  • 高速ダイナミクスの削減

  • 並列処理用にモデルを分割。

モデルの精度を評価した際に、シミュレーション結果が参照結果に一致しないことが判明した場合、次のアプローチによってモデルの精度を向上させます。

  • 動的システムをモデル化する際の Simulink ベスト プラクティス

  • Simscape の基本的なモデル化手法

可変ステップ ソルバーを使用した結果の取得

Simulink グローバル可変ステップ ソルバーを使用して、修正版のモデルの結果を取得します。

ステップ サイズをプロットすると、次の場合にも役立ちます。

  • 固定ステップ ソルバーを使用してリアルタイム シミュレーション時に精度の高い結果を得るために使用する、最大ステップ サイズの推定。

  • 不連続点または高速なダイナミクスによってシミュレーション速度が低下する正確なタイミングの特定。

モデルの精度の評価

ターゲット コンピューター上でのシミュレーション結果を、参照結果と比較します。参照結果と修正モデルの結果は同じか。そうでない場合、両者の結果は、実測データまたは理論データを使用しても、修正モデルのシミュレーション結果をサポートするのに十分なほど類似しているか。修正モデルは、測定対象の現象を表しているか。それらの現象を正しく表しているか。モデルを使用してコントローラーの設計をテストする計画がある場合、モデルはシステムの検定で信頼できる結果を生成するのに十分な精度を備えているか。これらの点を確認すると、リアルタイム シミュレーションの結果が十分な精度を備えているかどうかを判断するのに役立ちます。

リアルタイム シミュレーション ワークフローの実行

可変シミュレーションの結果によって、モデルがリアルタイム処理に必要な速度と精度を備えていることが示された場合は、リアルタイム シミュレーション ワークフローを使用して、モデルを固定ステップ、固定コスト シミュレーション用に構成できます。

リアルタイム モデルの準備のワークフローに戻る

コネクタは、他のワークフロー (リアルタイム シミュレーション ワークフローやハードウェアインザループ シミュレーション ワークフローなど) からリアルタイム モデルの準備のワークフローに戻るための入口です。

ワークフローを完了するには計算能力が不十分な場合

リアルタイム ターゲット マシンが、モデルをリアルタイムで実行するのに十分な計算能力を備えていない場合があります。ワークフローを複数回反復しても、モデルをリアルタイム対応にする複雑度レベルがない場合は、処理能力を高めるための次のオプションを検討してください。

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