メインコンテンツ

このページの内容は最新ではありません。最新版の英語を参照するには、ここをクリックします。

MTPA Control Reference

最大トルク/電流 (MTPA) および弱め界磁操作に用いる指令電流の計算

ライブラリ:
Motor Control Blockset / Controls / Control Reference

説明

MTPA Control Reference ブロックは、最大トルク/電流 (MTPA) および弱め界磁操作に用いる d 軸と q 軸の指令電流値を計算します。計算した指令電流値により、永久磁石同期モーター (PMSM) の効率的な出力が得られます。

指令トルクとフィードバックの機械角速度を指定でき、ブロックは MTPA および弱め界磁操作に用いる対応する d 軸と q 軸の指令電流値を出力します。与えられた機械角速度では、ブロックは可能な限り高いトルク値に加えて、PMSM の定格トルクを下回る指令トルク値もサポートします。

このブロックは、数学的関係を解くことで指令電流値を計算します。

また、[Vdc の入力方法] パラメーターを使用して、[DC 電圧 (V)] パラメーターによる固定基準 DC 電圧または個別の入力端子 Vdc による可変基準 DC 電圧を受け入れるようにブロックを構成できます。

このブロックによる指令 d 軸電流値と指令 q 軸電流値の計算は次の方程式で記述されます。

PMSM の数学モデル

回転子磁束の基準座標系における PMSM のダイナミクスは次のモデル方程式で記述されます。

vd=idRs+ dλddt  ωeLqiq

vq=iqRs+ dλqdt + ωeLdid+ ωeλpm

λd=Ldid+ λpm

λq=Lqiq

Te= 32p(λpmiq+(Ld Lq)idiq)

Te TL=Jdωmdt +Bωm

ここで以下のようになります。

  • vdd 軸電圧 (ボルト) です。

  • vqq 軸電圧 (ボルト) です。

  • idd 軸電流 (アンペア) です。

  • iqq 軸電流 (アンペア) です。

  • Rs は固定子の相巻線抵抗 (オーム) です。

  • λpm は永久磁石の鎖交磁束 (ウェーバー) です。

  • λdd 軸の鎖交磁束 (ウェーバー) です。

  • λqq 軸の鎖交磁束 (ウェーバー) です。

  • ωe は固定子の電圧の周波数に対応する電気角速度 (ラジアン/秒) です。

  • ωm は回転子の機械角速度 (ラジアン/秒) です。

  • Ldd 軸の巻線インダクタンス (ヘンリー) です。

  • Lqq 軸の巻線インダクタンス (ヘンリー) です。

  • Te は PMSM によって生成される電気機械トルク (Nm) です。

  • TL は負荷トルク (Nm) です。

  • p はモーターの極対数です。

  • J は慣性係数 (kg-m2) です。

  • B は摩擦係数 (kg-m2/秒) です。

ベース速度

ベース速度は、弱め界磁領域の外側の定格電圧と定格負荷におけるモーターの最大速度です。モーターのベース速度の計算は次の方程式で記述されます。

インバーターの電圧制約は、d 軸と q 軸の電圧を計算することで定義されます。

vdo= ωeLqiq

vqo=ωe(Ldid+ λpm)

vmax= vdc 3 Rsimax  vdo2+ vqo2

電流制限円は電流制約を定義するもので、次のように考えることができます。

imax2= id 2+ iq2

上記の方程式で、id は表面 PMSM の場合はゼロです。埋込 PMSM の場合、ブロックでは MTPA に対応する idiq の値が考慮されます。

これらの方程式を使用して、ベース速度を次のように計算できます。

ωbase= 1p vmax(Lqiq)2+(Ldid+ λpm)2

ここで以下のようになります。

  • ωe は固定子の電圧の周波数に対応する電気角速度 (ラジアン/秒) です。

  • ωbase はモーターの機械ベース速度 (ラジアン/秒) です。

  • idd 軸電流 (アンペア) です。

  • iqq 軸電流 (アンペア) です。

  • vdoid がゼロの場合の d 軸電圧 (ボルト) です。

  • vqoiq がゼロの場合の q 軸電圧 (ボルト) です。

  • Ldd 軸の巻線インダクタンス (ヘンリー) です。

  • Lqq 軸の巻線インダクタンス (ヘンリー) です。

  • Rs は固定子の相巻線抵抗 (オーム) です。

  • λpm は永久磁石の鎖交磁束 (ウェーバー) です。

  • vdd 軸電圧 (ボルト) です。

  • vqq 軸電圧 (ボルト) です。

  • vmax はモーターに供給される最大基本線-中性点電圧 (ピーク) (ボルト) です。

  • vdc はインバーターに供給される DC 電圧 (ボルト) です。

  • imax はモーターの最大相電流 (ピーク) (アンペア) です。

  • p はモーターの極対数です。

表面 PMSM

表面 PMSM については、モーターがベース速度を下回る場合の d 軸の電流をゼロにして最大トルクを実現できます。弱め界磁操作のために、ブロックは次の方程式で定義される定電圧定電力制御 (CVCP) アルゴリズムを使用して指令 d 軸電流を計算します。

ωm ωbase の場合:

  • id_mtpa= 0

  • iq_mtpa= Tref32pλpm

  • id_sat= id_mtpa= 0

  • iq_sat=sat(iq_mtpa,  imax)

ωm> ωbase の場合:

  • id_fw= (ωe_base ωe)λpmωeLd

  • id_sat=max(id_fw,  imax)

  • iq_fw= Tref32pλpm

  • iq_lim= imax2 id_sat2

  • iq_sat=sat(iq_fw,  iq_lim)

iq_sat を計算する飽和関数は次のとおりです。

iq_fw< iq_lim の場合

iq_sat= iq_lim

iq_fw>iq_lim の場合

iq_sat= iq_lim

 iq_limiq_fwiq_lim の場合

iq_sat= iq_fw

ブロックは次の値を出力します。

Idref=id_sat

Iqref=iq_sat

ここで以下のようになります。

  • ωe は固定子の電圧の周波数に対応する電気角速度 (ラジアン/秒) です。

  • ωm は回転子の機械角速度 (ラジアン/秒) です。

  • ωbase はモーターの機械ベース速度 (ラジアン/秒) です。

  • ωe_base はモーターの電気ベース速度 (ラジアン/秒) です。

  • id_mtpa は MTPA に対応する d 軸相電流 (アンペア) です。

  • iq_mtpa は MTPA に対応する q 軸相電流 (アンペア) です。

  • Tref は指令トルク (Nm) です。

  • p はモーターの極対数です。

  • λpm は永久磁石の鎖交磁束 (ウェーバー) です。

  • id_fwd 軸弱め界磁電流 (アンペア) です。

  • iq_fwq 軸弱め界磁電流 (アンペア) です。

  • Ldd 軸の巻線インダクタンス (ヘンリー) です。

  • imax はモーターの最大相電流 (ピーク) (アンペア) です。

  • id_satd 軸飽和電流 (アンペア) です。

  • iq_satq 軸飽和電流 (アンペア) です。

  • Idref は指令トルクと指令速度に対応する d 軸電流 (アンペア) です。

  • Iqref は指令トルクと指令速度に対応する q 軸電流 (アンペア) です。

埋込 PMSM

埋込 PMSM については、トルク方程式から d 軸と q 軸の指令電流を計算して最大トルクを実現できます。弱め界磁操作のために、ブロックは電圧/電流制限最大トルク制御 (VCLMT) アルゴリズムを使用して指令 d 軸電流を計算します。

MTPA および弱め界磁操作に用いる指令電流は、次の方程式で定義されます。

im_ref= 2Tref3pλpm

im=min(im_ref,  imax)

id_mtpa=λpm4(LqLd)λpm216(LqLd)2+im22

iq_mtpa=im2(id_mtpa)2

vdo=ωeLqiq

vqo=ωe(Ldid+ λpm)

vdo2+vqo2=vmax2

(Lqiq)2+(Ldid+ λpm)2 vmax2ωe2

iq= imax2 id2

(Ld2 Lq2)id2+2λpmLdid+ λpm2+ Lq2imax2vmax2ωe2=0

与えられた速度値に対応する利用可能な最大トルクの弱め界磁電流の計算は、次の 2 つの方程式で記述されます。

id_fw= λpmLd+ (λpmLd)2 (Ld2 Lq2)(λpm2+  Lq2imax2 vmax2ωe2  )(Ld2 Lq2)

iq_fw= imax2 id_fw2

与えられた速度値とトルク値の弱め界磁電流の計算は、次の 2 つの方程式で記述されます。

9p2(LdLq)2Lq2ωe2iq_fw4+(9p2λpm2Lq2ωe29p2(LdLq)2vmax2)iq_fw212TrefpλpmLdLqωe2iq_fw+4(Tref)2Ld2ωe2=0

id_fw=λpmLd+1Ldvmax2ωe2(Lqiq_fw)2

計算時間を短縮するために、ブロックは近似を使用して上記の多項式を解きます。

ωm ωbase の場合

Idref= id_mtpa

Iqref= iq_mtpa

ωm> ωbase の場合

Idref=max(id_fw,imax)

iq_fw= imax2 id_fw2

iq_fw<im の場合

Iqref=iq_fw

iq_fwim の場合

Iqref=im

指令トルク値が負の場合、ブロックは imIqref の符号を更新し、それに応じて方程式を変更します。

ここで以下のようになります。

  • im_ref は指令トルクを生成するための推定最大電流 (アンペア) です。

  • im は推定最大電流の飽和値 (アンペア) です。

  • id_max は最大 d 軸相電流 (ピーク) (アンペア) です。

  • iq_max は最大 q 軸相電流 (ピーク) (アンペア) です。

  • Tref は指令トルク (Nm) です。

  • Idref は指令トルクと指令速度に対応する d 軸電流成分 (アンペア) です。

  • Iqref は指令トルクと指令速度に対応する q 軸電流成分 (アンペア) です。

  • p はモーターの極対数です。

  • λpm は永久磁石の鎖交磁束 (ウェーバー) です。

  • id_mtpa は MTPA に対応する d 軸相電流 (アンペア) です。

  • iq_mtpa は MTPA に対応する q 軸相電流 (アンペア) です。

  • Ldd 軸の巻線インダクタンス (ヘンリー) です。

  • Lqq 軸の巻線インダクタンス (ヘンリー) です。

  • imax はモーターの最大相電流 (ピーク) (アンペア) です。

  • vmax はモーターに供給される最大基本線-中性点電圧 (ピーク) (ボルト) です。

  • vdoid がゼロの場合の d 軸電圧 (ボルト) です。

  • vqoiq がゼロの場合の q 軸電圧 (ボルト) です。

  • ωe は固定子の電圧の周波数に対応する電気角速度 (ラジアン/秒) です。

  • idd 軸電流 (アンペア) です。

  • iqq 軸電流 (アンペア) です。

  • id_fwd 軸弱め界磁電流 (アンペア) です。

  • iq_fwq 軸弱め界磁電流 (アンペア) です。

  • ωbase はモーターの機械ベース速度 (ラジアン/秒) です。

端子

入力

すべて展開する

ブロックで指令電流を計算する指令トルク入力値。この端子の単位は、[入力単位] パラメーター値によって異なります。このパラメーターを [SI 単位] に設定すると、端子は Nm 単位の入力信号を受け入れます。

データ型: single | double | fixed point

ブロックで指令電流を計算する指令機械角速度値。この端子の単位は、[入力単位] パラメーター値によって異なります。このパラメーターを [SI 単位] に設定すると、端子は機械のラジアン/秒単位の入力信号を受け入れます。

データ型: single | double | fixed point

可変 DC 母線電圧。この端子の単位は、[入力単位] パラメーター値によって異なります。このパラメーターを [SI 単位] に設定すると、端子はボルト単位の入力信号を受け入れます。

依存関係

この端子を有効にするには、[モーターのタイプ][埋込 PMSM][Vdc の入力方法][入力端子] に設定します。

データ型: single | double | fixed point

出力

すべて展開する

入力トルク値と入力速度値を効率的に生成できる指令 d 軸相電流。

この端子の単位は、[入力単位] パラメーターで定義されたブロックの入力単位によって異なります。このパラメーターを [SI 単位] に設定すると、端子はアンペア単位の信号を出力します。

データ型: single | double | fixed point

入力トルク値と入力速度値を効率的に生成できる指令 q 軸相電流。

この端子の単位は、[入力単位] パラメーターで定義されたブロックの入力単位によって異なります。このパラメーターを [SI 単位] に設定すると、端子はアンペア単位の信号を出力します。

データ型: single | double | fixed point

パラメーター

すべて展開する

モーター パラメーター

永久磁石の位置に基づく PMSM のタイプ。

モーターで使用可能な極対数。

固定子の相巻線の抵抗 (Ω 単位)。

依存関係

このパラメーターを有効にするには、[モーターのタイプ][埋込 PMSM] に設定します。

回転 dq 基準座標系の d 軸方向の固定子巻線インダクタンス (ヘンリー単位)。

回転 dq 基準座標系の q 軸方向の固定子巻線インダクタンス (ヘンリー単位)。

依存関係

このパラメーターを有効にするには、[モーターのタイプ][埋込 PMSM] に設定します。

固定子巻線と回転子の永久磁石の間の鎖交磁束 (ウェーバー単位)。

モーターの相電流上限 (アンペア単位)。

Vdc 入力の指定方法として次のいずれかを使用します。

  • ダイアログにより指定 — パラメーター [DC 電圧 (V)] を使用して固定基準電圧 Vdc を指定します。

  • 入力端子 — 入力端子 Vdc を使用して可変基準電圧 Vdc を指定します。

    メモ

    Vdc の入力方法として [入力端子] を選択した場合は、[入力単位] タブで [ベース電圧 (V)] パラメーターを必ず構成してください。

依存関係

このパラメーターを有効にするには、[モーターのタイプ][埋込 PMSM] に設定します。

DC 母線電圧 (ボルト単位)。

依存関係

このパラメーターを有効にするには、[モーターのタイプ][埋込 PMSM][Vdc の入力方法][ダイアログにより指定] に設定します。

入力単位

ブロック入力値の単位。

弱め界磁領域の外側の定格電圧と定格電流におけるモーターの速度 (rpm 単位)。

依存関係

このパラメーターを有効にするには、[入力信号の単位][Per-Unit (PU)] に設定します。

1 pu に対応する電流 (アンペア単位)。アナログ デジタル コンバーター (ADC) によって検出された最大電流をベース電流として使用することをお勧めします。

依存関係

このパラメーターを有効にするには、[入力信号の単位][Per-Unit (PU)] に設定します。

1 pu に対応するトルク (Nm 単位)。詳細については、Per-Unit Systemのページを参照してください。

この値は指定できません。ブロックは他のパラメーターを使用して内部的にこの値を計算します。

依存関係

このパラメーターを表示するには、[入力信号の単位][Per-Unit (PU)] に設定します。

1 pu に対応する電圧 (ボルト単位)。詳細については、Per-Unit Systemのページを参照してください。

この値は指定できません。ブロックは他のパラメーターを使用して内部的にこの値を計算します。

依存関係

このパラメーターを表示するには、[入力信号の単位][Per-Unit (PU)] に設定します。

実装

このパラメーターをオンにすると、ブロックは計算の近似に従い、アルゴリズムの実行時間を優先して短縮します。近似を使用せずにブロック アルゴリズムを反復実行するには、このフィールドをオフにします。

参照

[1] B. Bose, Modern Power Electronics and AC Drives. Prentice Hall, 2001. ISBN-0-13-016743-6.

[2] Morimoto, Shigeo, Masayuka Sanada, and Yoji Takeda. "Wide-speed operation of interior permanent magnet synchronous motors with high-performance current regulator." IEEE Transactions on Industry Applications, Vol. 30, Issue 4, July/August 1994, pp. 920-926.

[3] Li, Muyang. "Flux-Weakening Control for Permanent-Magnet Synchronous Motors Based on Z-Source Inverters." Master's Thesis, Marquette University, e-Publications@Marquette, Fall 2014.

[4] Briz, Fernando, Michael W. Degner, and Robert D. Lorenz. "Analysis and design of current regulators using complex vectors." IEEE Transactions on Industry Applications, Vol. 36, Issue 3, May/June 2000, pp. 817-825.

[5] Lorenz, Robert D., Thomas Lipo, and Donald W. Novotny. "Motion control with induction motors." Proceedings of the IEEE, Vol. 82, Issue 8, August 1994, pp. 1215-1240.

[6] Briz, Fernando, et al. "Current and flux regulation in field-weakening operation [of induction motors]." IEEE Transactions on Industry Applications, Vol. 37, Issue 1, Jan/Feb 2001, pp. 42-50.

[7] TI Application Note, "Sensorless-FOC With Flux-Weakening and MTPA for IPMSM Motor Drives."

[8] Haque, M. E., L. Zhong, and M. F. Rahman. "Improved trajectory control for an interior permanent magnet synchronous motor drive with extended operating limit." Journal of Electrical & Electronics Engineering. Vol. 22, Number 1, 2003, p. 49.

拡張機能

すべて展開する

C/C++ コード生成
Simulink® Coder™ を使用して C および C++ コードを生成します。

固定小数点の変換
Fixed-Point Designer™ を使用して固定小数点システムの設計とシミュレーションを行います。

バージョン履歴

R2020a で導入