グレー レベルの同時生起行列を使用したテクスチャ解析
グレー レベルの同時生起行列 (GLCM) は、テクスチャを検査する統計的手法です。テクスチャの統計的尺度の計算で説明されている他のテクスチャ フィルター関数とは異なり、GLCM はピクセルの空間関係を考慮します。GLCM は、特定の強度値をもつピクセルが、他の強度値をもつピクセルに対して特定の空間関係で出現する頻度をカウントすることによって、イメージのテクスチャを特徴付けます。
GLCM は、テクスチャ イメージにおけるグレー レベルの空間分布に関する特定の特性を明らかにすることができます。たとえば、GLCM のほとんどのエントリが対角成分に集中している場合、指定されたオフセットに関してテクスチャが粗いということになります。GLCM から各種の統計尺度を算出することもできます。詳細については、GLCM とプロットの相関からの統計の算出を参照してください。
グレー レベルの同時生起行列の作成
GLCM を作成するには、以下のように関数 graycomatrix を使用します。既定では、graycomatrix 関数は単一の GLCM を作成します。この GLCM の空間関係は、関心ピクセルとそのすぐ右のピクセルで構成されます。既定の GLCM では、各要素 (i, j) は、入力イメージ内でグレー レベル i のピクセルがグレー レベル j のピクセルの左側に出現する回数をカウントします。
説明のために、graycomatrix が既定の空間関係を使用して GLCM の最初の 3 つの値を計算する方法を図に示します。
GLCM の要素 (1, 1) には値
1が格納されます。入力イメージにおいて、値1のピクセルのすぐ左に値1のピクセルがあるインスタンスは 1 つだけです。GLCM の要素 (1, 2) には値
2が格納されます。値2のピクセルのすぐ左に値1のピクセルがあるインスタンスは 2 つあります。GLCM の要素 (1, 3) には値
0が格納されます。入力イメージにおいて、値3のピクセルのすぐ左に値1のピクセルがあるインスタンスはありません。
graycomatrix は入力イメージの処理を継続し、イメージ上で他のピクセル ペア (i, j) をスキャンして、GLCM の対応する要素にカウントを記録します。
GLCM の作成に使用されるプロセス
GLCM のサイズはイメージ内のグレー レベルの数によって決まります。既定では、graycomatrix はスケーリングを使用して、イメージ内の強度値の数を 8 に減らします。グレー レベルのスケーリングを制御するには、名前と値の引数 NumLevels と GrayLimits を使用できます。
GLCM 計算で使用するオフセットの指定
単一の GLCM では、入力イメージのテクスチャの特徴を十分に記述できない場合があります。たとえば、単一の水平方向オフセットは垂直方向のテクスチャに対して敏感ではない可能性があります。テクスチャの特徴に関する追加情報を取得するには、ピクセル間の空間関係が異なる複数の GLCM を作成できます。
複数の GLCM を作成するには、graycomatrix 関数にオフセットの行列を指定します。これらのオフセットは異なった方向と距離のピクセル関係を定義します。たとえば、4 つの方向 (水平、垂直、斜め 2 方向) と 4 つの距離を指定するオフセットの行列を定義できます。この場合、入力イメージは、16 の GLCM として表現されます。これらの GLCM から統計を計算するとき、平均をとることができます。
オフセットを 2 列の整数の行列として指定します。行列内の各行は [row_offset col_offset] の形式をもち、1 つのオフセットを指定します。row_offset は、関心ピクセルとその隣接ピクセルとの間の行数です。col_offset は、関心ピクセルとその隣接ピクセルと間の列数です。
次のサンプル コードは、4 つの方向に対するオフセットと各方向の 4 つの距離から成る行列を作成します。
offsets = [ 0 1; 0 2; 0 3; 0 4; ... % four offsets in the horizontal direction
-1 1; -2 2; -3 3; -4 4; ... % four offsets in the 45 degree diagonal direction
-1 0; -2 0; -3 0; -4 0; ... % four offsets in the vertical direction
-1 -1; -2 -2; -3 -3; -4 -4]; % four offsets in the 135 degree diagonal direction
次の図は、このオフセット配列によって定義されるピクセルの空間関係を示します。D は関心ピクセルからの距離を示します。
GLCM からの統計の算出
GLCM を作成した後、 graycoprops 関数を使用して GLCM から各種の統計を算出できます。これらの統計はイメージのテクスチャに関する情報を提供します。次の表は統計の一覧です。
統計 | 説明 |
|---|---|
コントラスト | グレーレベルの同時生起行列の局所変動を測定します。 |
相関 | 指定されたピクセル ペアの同時生起確率を測定します。 |
エネルギー | GLCM の要素の二乗和を提供します。均一性または角 2 次モーメントとして知られているものです。 |
均一性 | GLCM の要素の分布が GLCM 対角線に対してどの程度接近しているかを測定します。 |