メモリ関数のコード置換
この例では、関数 memcpy
に対するコード置換の定義方法に関する情報を提供することで、メモリ関数のパフォーマンスを最適化するコード置換ライブラリを開発する方法を示します。コード置換ライブラリを開発するには、対話的な方法またはプログラムによる方法のいずれかを使用します。詳細については、コード置換ライブラリの開発を参照してください。
対話的なコード置換ライブラリの開発
MATLAB コマンド ラインから次のコマンドを使用して コード置換ツール (crtool) を開きます。
>>crtool
table を作成します。
crtool のコンテキスト メニューから、[ファイル]、[新しいテーブル] を選択します。
右側のペインで、table に
crl_table_memcpy
と名前を付けます。[適用] をクリックします。
エントリを作成します。crtool のコンテキスト メニューから、[ファイル]、[新しいエントリ]、[関数] を選択します。
エントリ パラメーターを作成します。[関数] ドロップダウン リストで、
[memcpy]
を選択します。概念表現を作成します。概念表現は、置換する関数のシグネチャを記述します。crtool の [概念関数] サブセクションで、void の [データ型] およびポインターの [引数タイプ] をもつ戻り引数
y1
、void の [データ型] およびポインターの [引数タイプ] をもつ入力引数u1
およびu2
、符号なし整数の [データ型] およびスカラーの [引数タイプ] をもつu3
を指定します。実装表現を作成します。実装表現は最適化関数のシグネチャを記述します。この例では、概念引数と同じ順序およびプロパティをもつ実装引数を指定するために、[概念引数と実装引数のタイプを同じにする] チェック ボックスをオンにします。
[関数プロトタイプ] の下にある置換関数に対して [名前] を指定します。
ビルド情報を指定します。[ビルド情報] タブをクリックして、ビルド要件のペインを開きます。コード ジェネレーターがコード置換に必要なファイル (ソース、ヘッダー、オブジェクト) を指定します。この例では、ビルド情報を指定する必要はありません。
table を確認して保存します。[マッピング情報] タブで、[エントリの検証] をクリックします。crtool のコンテキスト メニューから、[ファイル]、[テーブルの保存]、[保存] を選択します。
コード置換ライブラリを登録します。登録することにより、指定した table で構成されるライブラリが作成されます。[ファイル]、[登録ファイルの作成] を選択します。[登録ファイルの作成] ダイアログ ボックスで、以下のフィールドに入力します。
コード置換ライブラリを使用するには、現在の MATLAB セッションを次のコマンドで更新します。
>>sl_refresh_customizations
コード置換ライブラリを確認します。MATLAB コマンド ラインから、コード置換ビューアーを使用してライブラリを開き、table およびエントリが正しく指定されていることを確認します。詳細については、Verify Code Replacement Libraryを参照してください。コード置換ライブラリを使用するようにモデルを構成し、コードを生成して、その置換が予期したとおりに行われることを確認します。予期しない動作が行われた場合、ヒット ログとミス ログを調べて問題のトラブルシューティングを行います。
プログラムによるコード置換ライブラリの開発
[新規]、[関数] を選択し、[MATLAB] メニューからプログラム インターフェイスを開きます。
table を作成します。
コード置換ライブラリ テーブルを呼び出す関数を作成します。この関数は引数をもつべきではなく、table オブジェクトを返します。
RTW.TflTable
を呼び出して table オブジェクトを作成します。
function hTable = crl_table_memcpy() % Create a function to call the code replacement library table %% Create a table object hTable = RTW.TflTable;
エントリを作成します。この例では関数を置き換えるため、エントリ関数
RTW.TflCFunctionEntry
を呼び出して table にコード置換エントリを作成します。function hTable = crl_table_memcpy() % Create a code replacement library table %% Create a table object hTable = RTW.TflTable; %% Create an entry hEntry = rtw.TflCFunctionEntry;
エントリ パラメーターを作成します。この例では関数を置き換えるため、関数
setTflCFunctionEntryParameters
を呼び出してエントリ パラメーターを作成します。function hTable = crl_table_memcpy() % Create a code replacement library table %% Create a table object hTable = RTW.TflTable; %% Create an entry hEntry = RTW.TflCFunctionEntry; %% Create entry parameters % Set SideEffects to 'true' for function returning void to prevent it from % being optimized away. hEntry.setTflCFunctionEntryParameters(... 'Key', 'memcpy', ... 'Priority', 90, ... 'ImplementationName', 'memcpy_int', ... 'ImplementationHeaderFile', 'memcpy_int.h',... 'SideEffects', true);
概念表現を作成します。概念表現は、置換する関数のシグネチャを記述します。引数プロパティを明示的に指定するには、関数
getTflArgFromString
を呼び出します。function hTable = crl_table_memcpy() % Create a code replacement library table %% Create a table object hTable = RTW.TflTable; %% Create an entry hEntry = RTW.TflCFunctionEntry; %% Create entry parameters % Set SideEffects to 'true' for function returning void to prevent it from % being optimized away. hEntry.setTflCFunctionEntryParameters(... 'Key', 'memcpy', ... 'Priority', 90, ... 'ImplementationName', 'memcpy_int', ... 'ImplementationHeaderFile', 'memcpy_int.h',... 'SideEffects', true); %% Create conceptual arguments arg = getTflArgFromString(hTable, 'y1', 'void*'); arg.IOType = 'RTW_IO_OUTPUT'; addConceptualArg(hEntry, arg); arg = getTflArgFromString(hTable, 'u1', 'void*'); addConceptualArg(hEntry, arg); arg = getTflArgFromString(hTable, 'u2', 'void*'); addConceptualArg(hEntry, arg); arg = getTflArgFromString(hTable, 'u3', 'size_t'); addConceptualArg(hEntry, arg);
実装表現を作成します。実装表現は最適化関数のシグネチャを記述します。実装引数が概念引数と同じ順序とプロパティをもつように指定するには、関数
copyConceptualArgsToImplementation
を呼び出します。関数addEntry
を呼び出して、table に完全なエントリを追加します。function hTable = crl_table_memcpy() % Create a code replacement library table %% Create a table object hTable = RTW.TflTable; %% Create an entry hEntry = RTW.TflCFunctionEntry; %% Create entry parameters setTflCFunctionEntryParameters(hEntry, ... 'Key', 'memcpy', ... 'Priority', 90, ... 'ImplementationName', 'memcpy_int', ... 'ImplementationHeaderFile', 'memcpy_int.h',... 'SideEffects', true); %% Create conceptual arguments arg = getTflArgFromString(hTable, 'y1', 'void*'); arg.IOType = 'RTW_IO_OUTPUT'; addConceptualArg(hEntry, arg); arg = getTflArgFromString(hTable, 'u1', 'void*'); addConceptualArg(hEntry, arg); arg = getTflArgFromString(hTable, 'u2', 'void*'); addConceptualArg(hEntry, arg); arg = getTflArgFromString(hTable, 'u3', 'size_t'); addConceptualArg(hEntry, arg); %% Create the Implementation Representation copyConceptualArgsToImplementation(hEntry); %% Add the entry to the table hTable.addEntry(hEntry);
ビルド情報を指定します。エントリ パラメーターで、コード ジェネレーターがコード置換に必要なファイル (ソース、ヘッダー、オブジェクト) を指定します。この例では、ビルド情報は必要ありません。
カスタマイズ ファイルを確認して保存します。[MATLAB] メニューから、[ファイル]、[保存] を選択して、このカスタマイズ ファイルを保存します。コマンド ラインから、次のようにしてコード置換ライブラリ テーブルを呼び出し、確認します。
>> hTable = crl_table_memcpy
コード置換ライブラリを登録します。登録では、ライブラリ名、コード置換テーブル、その他の情報を定義することにより、コード置換ライブラリが作成されます。以下の仕様を使用して登録ファイルを作成します。
function rtwTargetInfo(cm) cm.registerTargetInfo(@loc_register_crl); end function this = loc_register_crl this(1) = RTW.TflRegistry; this(1).Name = 'CRL for memory function replacement’; this(1).TableList = {'crl_table_memcpy.m'}; % table created in this example this(1).TargetHWDeviceType = {'*'}; this(1).Description = 'Example code replacement library'; end
コード置換ライブラリを使用するには、現在の MATLAB セッションを次のコマンドで更新します。
>>sl_refresh_customizations
コード置換ライブラリを確認します。MATLAB コマンド ラインから、コード置換ビューアーを使用してライブラリを開き、table およびエントリが正しく指定されていることを確認します。詳細については、Verify Code Replacement Libraryを参照してください。コード置換ライブラリを使用するようにモデルを構成し、コードを生成して、その置換が予期したとおりに行われることを確認します。予期しない動作が行われた場合、ヒット ログとミス ログを調べて問題のトラブルシューティングを行います。