ユーザー事例

Bosch、自動車用テストデータ解析プラットフォームを開発

課題

自動車用テストベンチで得られたデータの処理と解析にかかる時間と工程を短縮する

ソリューション

MATLABを使用して、さまざまな分野のエンジニアリングデータの解析と可視化が可能なプラットフォームを開発して展開する

結果

  • 検証期間を平均で40~50%短縮
  • 開発期間を3~4か月短縮
  • 解析の精度が向上

「ENValyzerを短期間で開発できたのはMATLABのおかげです。さまざまな形式のエンジニアリングデータの解析、可視化に対応した、カスタマイズ可能で使いやすいツールを開発することができました。今では、スプレッドシートやサードパーティ製ツールを使用した従来の方法に比べて、製品の検証を短時間で行えるようになり、精度も向上しています」

Sharath SL氏, Bosch

突出率(PR)とRPMの分布を示したENValyzerのプロット。突出率は音響データの解析でよく使用されます。


世界最大の独立系自動車部品サプライヤーであるBoschの製品には、さまざまな品質要件を満たすことが求められます。そのため、テストベンチを用いて、製品の機能性や耐久性などの各種テストを実施しています。

計測機器、テストベンチ、車両から収集したテストデータをエンジニアが迅速かつ正確に解釈できるように、Boschは、測定データの解析と可視化が可能なENValyzer (Engineering Test Data Visualizer and Analyzer) というMATLAB®ベースのツールを開発しました。

「ENValyzerにより、データの解析と可視化にかかる時間が短縮されると同時に、精度も向上し、テストベンチの結果を詳細に可視化できるようになりました。MATLABには、私たちが必要としていたデータの読み込み、信号処理、統計解析、可視化の機能が組み込まれており、開発期間を数か月も短縮できました」 (Bosch IndiaプロジェクトマネージャーSharath SL氏)

課題

テストは製品の開発ライフサイクルにおいて最も重要なフェーズの1つであり、膨大な時間と労力を必要とします。Boschでは、製品に対してさまざまな種類のテストを実施しており、エンジニアはスプレッドシートやその他のデータ後処理ツールの機能の範囲内でテストシナリオを作成しなければなりませんでした。収集される測定データの形式も、データ収集ソフトウェア、テストベンチメーカー、収集手法によってそれぞれ異なっていました。

Boschのエンジニアは、使用しているツールがばらばらであることに起因して、いくつかの問題が生じていると感じていました。

まず、社内で開発したツールには継続的な保守作業が必要であること。二番目に、チームで処理するデータの量がツールの限界を超えて拡大していること。三番目に、ツールによるテスト結果の精度が不十分で、テストした製品の品質を正確に特定できず、また、多くの場合、データ後処理ツールの機能強化もできないこと。最後に、ツールを使うために設定をし、データ解析を終えるまでに非常に多くの手作業が必要であること。

こうした理由から、Boschでは、さまざまな自動車用システムの大量のエンジニアリングテストデータを正確に解析して可視化できる、単一のプラットフォームを開発して展開したいと考えていました。

ソリューション

Boschのエンジニアリングツールチームは、MATLABを使用してENValyzerを開発しました。このツールは、従来の手法との整合性を維持したまま解析作業を簡略化し、エンジニアの意思決定を支援するように設計されています。MATLAB言語のオブジェクト指向プログラミングにより、アプリケーション全体で250以上のクラス定義ファイルを作成するなど、継続的な保守作業を省力化しました。

ENValyzerでは、MATLABの機能を使用して、テストベンチ、車両、収集システムから収集したさまざまな形式の測定データの読み取りと書き込みが可能です。

MATLABとMATLAB用のツールボックスを使用して、回帰分析、曲線近似、フィルター処理、スペクトル解析、データ平滑化、主成分分析(PCA)の計算に使用する関数などの汎用的な解析機能を追加したほか、専門分野に特化した解析用のMATLAB関数も独自に開発しました。

エンジニアがENValyzerで解析結果を可視化できるように、MATLABを使用して、単一プロット、二次プロット、行列プロット、複数軸のビューを追加しています。

結果を表やプロットで表示するPDF、HTML、Microsoft PowerPoint®形式の解析レポートや可視化レポートも生成可能です。レポート作成用テンプレートは、さまざまな分野に合わせて作成やカスタマイズすることができます。

ENValyzerの初期バージョンの作成後、Signal Processing Toolbox™の機能を使用して、さらに高度な機能も追加しました。これにより、フーリエ解析の実行、チェビシェフフィルターやバタワースフィルターによるノイズの除去、Savitzky-Golay平滑化フィルターの適用などが可能になっています。

これらの新しい機能では、特定分野のテストや検証を担当するエンジニアが頻繁に実行するプロセスを自動化しています。たとえば、ステアリンググループに対しては、ステアリングギアの品質を自動で評価できるように、ステアリング角度やトルクなどの測定チャネルについてフィルター処理、平滑化、その他の信号処理を実行する機能をENValyzerに加えました。

Parallel Computing Toolbox™を使用して複数のプロセッサコアで同時に計算を実行できるため、複数のデータファイルをまとめて解析することができます。

また、MATLABをインストールしていないテストエンジニアでもENValyzerを使用できるように、MATLAB Compiler™を使用してスタンドアロンバージョンも作成しました。

Boschは現在、ENValyzerを自社の環境で運用しているほか、MathWorks Connections Programや他のマーケティングフォーラムを通じて他の企業にも販売しています。Boschのインド、ドイツ、北米のエンジニアは、コモンレールシステムやステアリングシステムのデータの評価、ステアリングギアや燃料計センサの検証にENValyzerを使用しています。

結果

  • 検証期間を平均で40~50%短縮.「MATLABにより、ENValyzerで解析ステップを自動化し、複数のデータファイルを同時に複数のコアで解析することが可能になりました。」とSharath氏は述べています。「これにより、検証サイクルの期間を40~50%短縮できました。」
  • 開発期間を3~4か月短縮.「ENValyzerで何よりも必要だったのは、さまざまな形式のバイナリファイルからデータをインポートできるようにすることでした。」とBosch IndiaシニアエンジニアSathvik Tarikere氏は述べています。「MATLABはデータ構造がわかりやすく、コードの記述も簡単だったため、約6か月ですべての開発が完了しました。別の環境で後処理ソフトウェアを開発していたら、あと3~4か月はかかっていたかもしれません。」
  • 解析の精度が向上.「スプレッドシートを使用してデータ解析を行っていた当時は、結果の精度に満足していませんでした。」とSharath氏は述べています。「MATLABの平滑化フィルターや各種の解析手法を取り入れることで、精度を高めることができました。その結果、ENValyzerを使用すれば、以前よりもはるかに小さい許容誤差で、ギアやその他の製品の良否を分類できるようになりました。」