MATLAB や Simulink の対話型ワークフローに最も適したクラウド ソリューションを判断するには、まず主な 4 つのユースケースを理解することが重要です。

  • インタラクティブな設計開発: 選択したクラウド プラットフォームから MATLAB や Simulink にアクセス
  • 大規模なシミュレーションと設計の検討: シミュレーションや計算処理を CPU、GPU、または計算クラスターに拡張
  • 継続的インテグレーション (CI) システムと自動テストシステムの統合: クラウドベースの CI システムを活用し、ビルドプロセスやコードテストを自動化することでコード品質を改善
  • 運用環境へのデプロイと運用: コードとモデルをクラウドにデプロイし、企業システムやアプリケーションと統合

本ガイドでは、MATLAB と Simulink を使用したインタラクティブな設計開発に適したクラウド ソリューションに限定して解説しています。

非対話型ソリューションに関する情報については、リソースページを参照してください。

クラウド環境で MATLAB と Simulink を操作するには

MATLAB と Simulink を使用したインタラクティブな設計開発ワークフローに対応するクラウドサービスには、類似する 2 つのユーザー エクスペリエンスが提供されており、それぞれに異なる特徴があります。

リモートデスクトップまたは VDI

リモートデスクトップ環境で動作する MATLAB のスクリーンショット。

リモートデスクトップ接続を通じて AWS 上の MATLAB を操作できます。

クラウド上で稼働する仮想デスクトップ環境 (Linux® や Windows® など) に接続し、PC 上でデスクトップアプリを操作する感覚で MATLAB を利用できます。

主な違い

  • MATLAB は仮想 OS デスクトップ上で動作するアプリケーションとして提供されます。
  • すべてのバージョンと製品機能がサポートされています。
  • より直観的に、サードパーティ製ツールや他のデスクトップ ソフトウェアに連携できます。
  • リモートデスクトップ環境では、対話形式のタスクに遅延が生じる場合があります。

ブラウザーベース

Web ブラウザー経由で動作する MATLAB のスクリーンショット。

matlab-proxy パッケージを使用してブラウザー経由で MATLAB を操作できます。

従来のウェブサイトを利用する感覚で、MATLAB をブラウザーベースのアプリケーションとして利用できます。

主な違い

  • ブラウザーのタブ全体に MATLAB が表示されます。
  • 一部のバージョンや製品機能が制限される場合があります。
  • サードパーティ製ツールや他のデスクトップ ソフトウェアとの連携には手間がかかることがあります。
  • ブラウザーベースの環境では、対話形式のタスクに対する応答がより速い傾向にあります。

MATLAB と Simulink を実行する環境

多くのエンジニアリング企業では、戦略的な IT 施策の実現のために、クラウドベンダーや他のインフラパートナーと提携することが一般的になっています。企業が AWS®、Azure®、Google Cloud Platform™ (GCP) などのクラウドサービスやオンプレミス環境を推奨している場合でも、エンドユーザーはさまざまな統合手段や参照アーキテクチャを活用して MATLAB や Simulink を利用することができます。

MATLAB と Simulink の実行環境を示す図。ローカル、オンプレミス、パブリッククラウド、mathworks.com が含まれます。

以下の表は、さまざまなクラウド環境やプラットフォームで MATLAB や Simulink を実行できる MathWorks のソリューション例を示しています。

ソリューション 説明 実行環境

MATLAB Online

MathWorks が管理するクラウドリソースを利用して、すぐに MATLAB を実行できます。ダウンロード、インストール、メンテナンスは不要で、ブラウザーから最新バージョンの MATLAB を利用できます。

MathWorks が管理するクラウドリソース

MATLAB 向け参照アーキテクチャ

カスタマイズ可能なテンプレートを活用して、事前に MATLAB がインストールされたバーチャルマシンをパブリッククラウド上で作成、管理します。AWS、Azure、GCP 環境にベストプラクティスを適用します。

AWS、Azure、または Google Cloud のアカウント

Cloud Center

ポイントアンドクリック インターフェイスを使用して、事前に MATLAB がインストールされたバーチャルマシンを AWS 上で作成、管理します。クラウドの専門知識がなくても、AWS アカウントで MATLAB を実行できます*。

* 管理者権限が必要になる場合があります。

AWS アカウント

MATLAB Integration for Jupyter

既存の Jupyter 環境を再利用して、MATLAB へのアクセスを提供します。Jupyter Notebook で MATLAB コードを実行するか、ブラウザーから MATLAB を開いて、他のツールを使いながら MATLAB のアプリや対話型機能にアクセスできます。

JupyterHub、Jupyter Notebook Server、その他 Jupyter ベースの実行環境

matlab-proxy パッケージ

既存のオーケストレーション システムからブラウザー経由で MATLAB を起動し、MATLAB のアプリや対話型機能にアクセスできます。

オンプレミスまたはクラウド上のブラウザーベース開発プラットフォーム

仮想デスクトップ上の MATLAB

既存の VDI を再利用して MATLAB にアクセスし、実行します。

既存の VDI プラットフォーム

上記に示した例は、MATLAB と Simulink を使用したインタラクティブな設計開発をサポートするクラウド ソリューションの一部です。これらのワークフローをサポートするクラウド ソリューションの詳細については、リソースページを参照してください。

使用する MATLAB と Simulink 製品

MathWorks が提供するクラウド ソリューションは、任意のクラウド プラットフォームに MATLAB と Simulink の機能を拡張することを目的としています。ソリューションによっては、利用できる製品やバージョンに制限があり、ソリューションを選定する際には確認が必要です。たとえば、MATLAB Online のようなブラウザーベースのソリューションでは、多くのツールボックスが制限なく利用できますが、一部の機能やコマンドはサポートされていません

お問い合わせ

このガイドでは、MATLAB や Simulink の対話型ワークフローに適したクラウド ソリューションを選択する際に考慮すべき重要なポイントを中心に紹介しています。具体的な要件の確認や、ライセンス、セキュリティ、エンタープライズ統合など高度な内容については、お問い合わせください。