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データシートからの区分的線形ダイオード モデルのパラメーター化

簡単な回路の作成とシミュレーションでも説明されている三角波発生器のモデル例には、オペアンプ回路の最大出力電圧を制御する 2 つのツェナー ダイオードが含まれています。これらのダイオードはそれぞれ、Simscape™ Electrical™ の Diode ブロックを使って実装され、[区分線形] オプションを使用してパラメーター化されています。この単純なモデルは、回路の正しい動作を確認するために十分であり、必要なパラメーターが Diode ブロックの [指数] オプションよりも少なくなっています。ただし、パラメーターを指定する場合には、回路で使用されるバイアス条件を考慮する必要があります。この例では、これを行う方法を説明します。

Phillips Semiconductors の BZX384–B4V3 用データシートによれば、データは次のとおりです。

IZtest = 5 mA での使用電圧、VZ (V)4.3
ダイオードの静電容量、Cd (pF)450
VR = 1 V での逆電流、IR (μA)3
IF = 5 mA での順電圧、VF (V)0.7

データシートで表に記載された VF の値は、より大きい順電流用です。この 5 mA での値 0.7 V は、データシートの電流電圧曲線から抽出され、使用電圧を 4.3 V とした場合のツェナー電流と一致するために選択されています。

データシートの値と一致させるため、この例では区分的線形ダイオードのブロック パラメーターを次のように設定しています。

  • 順電圧。既定値の 0.6 V のままにします。これは大半のダイオードにおける標準値で、正確な値は重要ではありません。ただし、[オン抵抗] パラメーターを計算する際には、この値セットを考慮することが重要です。

  • オン抵抗。これは、電流が 5 mA であるときの順電流が 0.7 V であるというデータシート情報を使用して設定されます。[オン抵抗] パラメーターによって降下する電圧は、0.7 V から [順電圧] パラメーターを引いた値、すなわち 0.1 V となります。したがって、[オン抵抗] は 0.1 V / 5 mA = 20 Ω です。

  • オフ コンダクタンス。これは、逆電流に関するデータシート情報を使用して設定されます。逆電流は、逆電圧 1 V に対して 3 μA です。したがって、[オフ コンダクタンス] は、3 μA / 1V = 3e-6 S に設定されなければなりません。

  • 逆ブレークダウン電圧。このパラメーターは、データシートの使用電圧パラメーターである 4.3 V に設定しなければなりません。

  • ツェナー抵抗。これは、適切な小さい数値に設定する必要があります。小さすぎて、電圧と電流の関係が急峻になると、シミュレーションがあまり効率よく収束しなくなる可能性があります。大きすぎると、ツェナー電圧が不正確になります。Diode ブロックが実際のデバイスを表すには、シミュレートされた逆電圧が、5 mA (回路によって提供される逆バイアス電流) で 4.3 V 近くにならなければなりません。ツェナー電圧に 5 mA で 0.01 V の誤差を許容すると、ツェナーの抵抗 RZ は 0.01 V / 5 mA = 2 Ω になります。

  • 接合容量。このパラメーターは、データシートのダイオードの静電容量値 450 pF に設定されます。