PI Section Line
集中定数を使用して伝送線路またはケーブルを実装する
ライブラリ
Simscape / Electrical / Specialized Power Systems / Power Grid Elements
説明
PI Section Line ブロックは、π型セクションの集中定数を使用して N 相伝送線路またはケーブルを実装します。
伝送線路では、抵抗、インダクタンス、および静電容量が、線路に沿って均一に分布しています。分布定数線路の近似モデルは、複数の同一のπ型セクションをカスケードすることで得られます。次の図は、三相伝送線路の 1 つのπ型セクションを示しています。
相数が 1 より大きい場合は、直列抵抗およびインダクタンスが、行列 R および L で定義された相互インダクタンス デバイスによって実装されます。
相数が 1 の場合は、直列抵抗およびインダクタンスが、単一の抵抗 R およびインダクタンス L によってモデル化されます。相間コンデンサ Cp はモデル化されません。
各相の分路静電容量 Cg および相間静電容量 Cp は次のように定義されます。
Cg = sum(C(:,p)) / 2;
Cp = -C(p,k)
ここで、C は静電容量行列、p および k は Cp が接続される相の数です。
状態の数が無限の Distributed Parameters Line ブロックとは異なり、π型セクション線形モデルでは、線形状態空間モデルを計算できる状態の数は有限です。使用するセクションの数は、表す周波数範囲によって異なります。
π型線路モデルで表される最大周波数範囲の近似は、次の方程式で与えられます。
ここで、
Nbpi | π型セクションの数 |
v | 伝播速度 (km/s) = (l は H/km 単位、c は F/km 単位) |
ltot | 線路の長さ (km) |
たとえば、伝播速度が 300,000 km/s である 100 km の架空線路の場合、単一のπ型セクションで表される最大周波数範囲は約 375 Hz です。電力システムと制御システム間の交互作用を調べる目的では、この単純なモデルで十分かもしれません。しかし、kHz 範囲の高周波数の変化に関する開閉サージの調査では、はるかに短いπ型セクションを使用する必要があります。実際、分布定数線路モデルを使用することで最も正確な結果を得ることができます。
メモ:
powergui ブロックには Power Line Parameters アプリおよび Power Cable Parameters アプリが用意されており、線路またはケーブルのジオメトリおよび導体の特性に基づいて、抵抗、インダクタンス、および単位長さあたり静電容量が計算されます。
RLC 要素の双曲線補正
短い線路セクション (概ね lsec <50 km) では、各線路セクションの RLC 要素は単に以下によって与えられます。
ここで、
r | 単位長さあたり抵抗 (Ω/km) |
l | 単位長さあたりインダクタンス (H/km) |
c | 単位長さあたり静電容量 (F/km) |
f | 周波数 (Hz) |
lsec | 線路セクションの長さ = ltot / N (km) |
ただし、長い線路セクションでは、上記の方程式で与えられる RLC 要素は、指定した周波数で正確な線路モデルを得るために補正する必要があります。その場合は、RLC 要素は、以下に説明するように、双曲線関数を使用して計算されます。
周波数 f における単位長さあたりの直列インピーダンスは、次のとおりです。
周波数 f における単位長さあたりの分路アドミタンスは、次のとおりです。
特性インピーダンスは次のとおりです。
伝播定数は次のとおりです。
双曲線補正により、RLC 値は補正なしの場合とは若干異なる値になります。R と L は減少しますが、C は増加します。このような補正は、線路セクションの長さが増すにつれてさらに重要になります。たとえば、次の正シーケンスおよびゼロ シーケンスのパラメーター (Three-Phase PI Section Line ブロックおよび Distributed Parameters Line ブロックの既定のパラメーター) をもつ 735 kV の線路について考えてみましょう。
正シーケンス |
| |||
ゼロ シーケンス |
|
350 km の線路セクションでは、補正なしの RLC の正シーケンス値は次のとおりです。
60 Hz における双曲線補正により、次のようになります。
これらの特定のパラメーターおよび長い線路セクション (350 km) では、正シーケンスの RLC 要素の補正が比較的重要になります (それぞれ −6.8%、−3.4%、および + 1.8%)。ゼロ シーケンスのパラメーターでは、さらに大きい RLC 補正を適用する必要があることを確認できます (それぞれ −18%、−8.5%、および +4.9%)。
PI Section Line ブロックでは、線路セクションの長さに関係なく、常に双曲線補正が使用されます。
パラメーター
- Frequency used for rlc specifications
単位長さあたりのパラメーター r、l、c を指定する際の対象の周波数 f。単位はヘルツ (Hz) です。双曲線補正は、この周波数を使用した各線路セクションの RLC 要素に適用されます。既定は
60
です。- Resistance per unit length
単位長さあたりの抵抗。オーム/km (Ω/km) 単位の N 行 N 列の行列として指定します。既定は
0.01273
です。- Inductance per unit length
線路の単位長さあたりのインダクタンス。ヘンリー/km (H/km) 単位の N 行 N 列の行列として指定します。無効な伝播速度の計算になるため、行列の対角の項をゼロにすることはできません。既定は
0.9337e-3
です。- Capacitance per unit length
線路の単位長さあたりの静電容量。ファラッド/km (F/km) 単位の N 行 N 列の行列として指定します。無効な伝播速度の計算になるため、行列の対角の項をゼロにすることはできません。既定は
12.74e-9
です。- Length
線路の長さ (km)。既定は
100
です。- Number of pi sections
π型セクションの数。最小値は 1 です。既定は
1
です。- Specify Conductance
単位長さあたりの分流コンダクタンスを指定することを選択します。既定はオフです。
- Conductance per unit length
N 行 N 列の行列として単位長さあたりの分流コンダクタンス (mho/km) を指定します。
分流コンダクタンスは通常、伝送線路では考慮されません。これは、絶縁体および空気を流れる漏れ電流は通常の電流より大幅に小さいからです。ただし、Pi Section Line ブロックを使用してケーブルの配置をモデル化する場合は、分流コンダクタンスを無視できないことがあります。既定は
0
です。このパラメーターは、[Specify Conductance] が選択されていない場合にはアクセスできません。
- Measurements
[Number of phases [N]] パラメーターが
1
より大きい場合、ドロップダウン メニューで選択できる測定は[Phase-to-ground voltages]
のみです。[Number of phases [N]] が
1
の場合は、次のオプションを選択できます。線路モデルの送電端 (入力端子) および受電端 (出力端子) の電圧を測定するには、
Input and output voltages
を選択します。線路モデルの送電端および受電端の電流を測定するには、
Input and output currents
を選択します。各π型セクションの開始時および終了時の電圧と電流を測定するには、
All pi-section voltages and currents
を選択します。線路モデルの送電端および受電端の電圧と電流を測定するには、
All voltages and currents
を選択します。既定は
[None]
です。選択した測定値をシミュレーション中に表示するには、モデルに Multimeter ブロックを配置します。Multimeter ブロックの [Available Measurements] リスト ボックスでは、後ろにブロック名が続くラベルで測定値が識別されます。
測定
ラベル
送電端の電圧 (ブロック入力)
Us:
受電端の電圧 (ブロック出力)
Ur:
送電端の電流 (入力電流)
Is:
受電端の電流 (出力電流)
Ir:
相-対地間 (ブロック入力およびブロック出力)
Us phase 1, 2, 3, ...N
Ur phase 1, 2, 3, ...N
例
power_piline
の例では、単相π型セクション線路の送電線通電の電圧および電流が示されています。
バージョン履歴
R2006a より前に導入