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水分レベルと微量気体レベルのモデル化
湿り空気ソース ドメイン
湿り空気ドメインとは異なり、"湿り空気ソース" ドメインは、湿り空気システム内の水分レベルと微量気体レベルをモデル化するための別個のドメインです。
Moist Air ライブラリ ブロックの通常の接続端子 (境界ノード) は湿り空気ドメインに属します。これらの端子は通常、[A] または [B] と名付けられます。
有限の湿り空気体積をもつブロックには内部ノードも含まれており、コンポーネント内の圧力、温度、水分レベル、および微量気体レベルを提供します。この内部ノードは湿り空気ソース ドメインに接続します。対応する端子は [S] と名付けられます。
たとえば、Pipe (MA) ブロックの端子は次のとおりです。
A および B ― 境界ノードに関連付けられている湿り空気保存端子。これらの端子は、このブロックを湿り空気回路内の他のブロックに接続するために使用します。
S ― 内部ノードに関連付けられている湿り空気ソース保存端子。この端子は、Moisture & Trace Gas Sources ライブラリ内のブロックに接続することにより、水分レベル、水滴レベル、および微量気体レベルをモデル化するために使用します。この端子は既定では非表示です。[湿り空気および微量気体のソース] パラメーターは、端子 S の表示/非表示を制御し、水分レベルと微量気体レベルをモデル化するためのオプションを提供します。
H ― ブロック内の空気混合体またはブロック要素 (パイプの壁など) の温度に関連付けられている熱保存端子。
W および F ― 物理量信号出力端子。
水蒸気、水滴、微量気体を挿入または抽出する、Moisture & Trace Gas Sources ライブラリのブロックには、湿り空気ソース ドメインに属する端子 [S] も備わっています。この命名規則は、2 つの異なるドメイン タイプを区別するうえで役立ちます。詳細については、水分と微量気体のソースの使用を参照してください。
微量気体モデル化のオプション
Moist Air Properties (MA) ブロックには、接続された回路の空気混合体に含まれる微量気体の量をモデル化するために 3 つの方法が用意されています。
なし
— 微量気体は存在しません。湿り空気混合体は乾き空気と水蒸気のみで構成されています。質量分率のみを追跡
— 微量気体レベルはゼロではなく、シミュレーション時に変化する可能性があります。ただし、微量気体の量は、湿り空気混合体の流体特性への影響を無視できる程度に小さいと仮定されます。質量分率と気体特性を追跡
— 微量気体レベルはゼロではなく、シミュレーション時に変化する可能性があります。湿り空気混合体の流体特性は、混合体に含まれる微量気体の量に左右されます。
微量気体 — なし
Moist Air Properties (MA) ブロックの [微量気体モデル] パラメーターを [なし]
に設定する場合、接続された回路内の湿り空気混合体は、乾き空気と水分のみで構成されます。回路に接続されているブロックのパラメーター、変数ターゲット、および入力における微量気体レベルの非ゼロの値はすべて無視されます。これには、たとえば、タンク内の微量気体の量、湿り空気体積内の微量気体の初期量、およびすべての微量気体ソースなどが含まれます。ブロックのリファレンス ページに記載されているブロック方程式は、混合体の特性の計算で微量気体の質量分率やモル分率の項を 0 に置き換えることによって簡略化されます。
微量気体に関連付けられている流体特性を入力する必要はなく、実行時の微量気体特性テーブル ルックアップもありません。実行時の効率を高めるために、基となるシステム方程式も簡略化されます。
微量気体 — 質量分率のみを追跡
[質量分率のみを追跡]
オプションを選択する場合、これは、モデル内で変化する微量気体の量を追跡するものの、微量気体が混合体特性に及ぼす影響は無視できると見なしていることを意味します。このオプションは、混合体に含まれる微量気体の量がごくわずかだと想定される場合に使用してください。
空気中での微量気体の拡散係数 (平滑化された風上法のため) および気体定数は指定しなければなりませんが、微量気体に関連付けられている他の流体特性を入力する必要はなく、実行時の微量気体特性テーブル ルックアップもありません。したがって、このオプションは、微量気体の特性データがない場合にも便利です。
ブロック方程式内の微量気体の特性は、乾き空気の対応する特性に置き換えられます。これ以外の方程式の簡略化はありません。
微量気体 — 質量分率と気体特性を追跡
[質量分率と気体特性を追跡]
オプションを選択する場合、これは、変化する微量気体の諸量を、混合体特性に対する影響も含めて追跡することを意味します。これは、最も一般的で完全なオプションです。微量気体の特性を指定しなければなりません。ブロックのリファレンス ページに記載されている方程式はすべて、このオプションを想定しています。
混入する水滴のモデル化
R2024b 以降
湿り空気ネットワークに接続されている Moist Air Properties (MA) ブロックで [水滴の混入を有効にする] を選択すると、ネットワーク内のブロックは湿り空気の流れにある水滴をモデル化します。また、ブロックは水滴の量を追跡し、対流によって下流に移動します。
[水滴の混入を有効にする] チェック ボックスをオフにすると、モデルはネットワークに接続されているブロックのパラメーターおよび入力内の水滴の非ゼロ値をすべて無視します。ブロックのリファレンス ページにリストされているブロック方程式では、計算における水滴の項が 0 に置き換えられます。
水滴のモデル化における仮定
水滴のモデル化を有効にすると、ネットワーク内のブロックは以下のように仮定します。
混入する水滴は湿り空気と同じ温度である。
水滴の比エンタルピーがエネルギー バランス方程式に含まれている。ネットワークに含まれる水滴の量が増加すると、水滴の熱容量が増えるため、温度は変化しにくくなります。
水滴は、密度、絶対粘度、熱伝導率、プラントル数などの他の特性に影響を与えない。
水滴の量は湿り空気の量より少ない。
流体体積をモデル化するブロックの場合:
湿り空気が飽和を超えている場合、または表面が十分に冷たい場合、水蒸気が凝縮する可能性がある。各ブロックで [水滴として混入する凝縮液の割合] パラメーターを使用して、水滴に変換される凝縮液の量を指定します。残りの凝縮液は流れから出ます。
湿り空気が飽和未満で水滴が存在する場合、水滴は湿り空気中に再蒸発する。
水分と微量気体のソースの使用
水分および微量気体を、有限の湿り空気体積をもつブロックに挿入できます (これらのブロックの完全なリストは、湿り空気体積をもつブロックを参照)。たとえば、Constant Volume Chamber (MA) ブロックに水分を追加すると、室内にいる人の呼吸を表現できます。水分および微量気体を、これらのブロックから抽出することもできます。たとえば、Pipe (MA) ブロックから微量気体を削除することで、湿り空気の流れから CO2 を抽出するフィルターを表現できます。
Moisture & Trace Gas Sources ライブラリ内のブロックを使用して、水蒸気、水滴、および微量気体を挿入または抽出できます。水分および微量気体のソースは、湿り空気体積をもつブロックの保存端子 [S] にのみ接続できます。これは、湿り空気ソース ドメインに関連付けられている端子です。詳細については、湿り空気ソース ドメインを参照してください。
有限の湿り空気体積をもつすべての Moist Air ライブラリ ブロックには [湿り空気および微量気体のソース] パラメーターがあります。これは、端子 [S] の表示/非表示を制御し、コンポーネント内の水分レベルと微量気体レベルをモデル化するためのオプションを提供します。
なし
— ブロックとの間で水分や微量気体の挿入や抽出は行われません。端子 [S] は非表示です。これは既定値です。定数
— ブロックとの間の水分や微量気体の挿入や抽出が一定の割合で行われます。ブロック インターフェイスの [湿り空気と微量気体] セクションで、Moisture Source (MA) ブロックおよび Trace Gas Source (MA) ブロックと同じパラメーターが利用可能になります。端子 [S] は非表示です。このオプションを使用すると、水分および微量気体のレベルの一定割合の変化を、追加のブロックに接続することなく、直接コンポーネント内で簡単にモデル化できます。これは、外部の一定のソースに接続することと等価です。制御
— ブロックとの間の水分や微量気体の挿入や抽出が時変の割合で行われます。端子 [S] が表示されます。Moisture Source (MA) ブロックと Trace Gas Source (MA) ブロックをこの端子に接続します。このオプションを使用すると、水分および微量気体の複数のソースを、湿り空気体積をもつ同じブロックに接続して、さまざまな効果を表現することもできます。たとえば、1 つの Constant Volume Chamber (MA) ブロックの端子 [S] に、以下のソースをすべて接続することができます。[添加または除去される水分] パラメーターが
[水蒸気]
に設定された Moisture Source (MA) ブロック。これは、水蒸気の入力または出力を表します。[添加または除去される水分] パラメーターが
[水滴]
に設定された 2 番目の Moisture Source (MA) ブロック。これは、水滴の入力または出力を表します。微量気体の入力または出力を表す Trace Gas Source (MA) ブロック。
湿り空気体積をもつブロックとの間で挿入または抽出される水蒸気、水滴、微量気体がない場合は、[湿り空気および微量気体のソース] パラメーターを [なし]
に設定して、未使用の端子 [S] を非表示にします。
メモ
水分ソース ブロックを使用した水分の除去は、凝縮とは異なる効果です。凝縮は、φw ≥ φws であればいつでも独自に発生します。詳細については、飽和と凝縮を参照してください。
水分レベルと微量気体レベルの測定
Moist Air ライブラリの Sensors サブライブラリには、他のドメイン内のものと類似した、通常のセンサー ブロックが含まれています。Moisture & Trace Gas Sensor (MA) ブロックを使用すると、測定ノードより上流にある湿り空気ネットワーク内の水分レベルと微量気体レベルを測定できます。これらのブロックは境界ノード (通常の湿り空気保存端子) にのみ接続できます。したがって、湿り空気体積を表す内部ノードでは、湿り空気の特性を測定できません。
湿り空気体積に含まれる水分と微量気体の量を、圧力および温度とともに測定するために、有限の内部湿り空気体積をもつブロックにはそれぞれ物理量信号端子 [F] があり、これによってベクトルの物理量信号を基本 SI 単位で出力します。
% Moist air volume measurements F == [value(p_I, 'Pa'); value(T_I, 'K'); RH_I; x_w_I; y_w_I; HR_I; x_g_I; y_g_I; x_d_I];
ここで、
p_I は湿り空気体積の圧力 (Pa)
T_I は湿り空気体積の温度 (K)
RH_I は湿り空気体積の相対湿度
x_w_I は湿り空気体積の比湿
y_w_I は湿り空気体積の水蒸気のモル分率
HR_I は湿り空気体積の湿度混合比
x_g_I は湿り空気体積の微量気体の質量分率
y_g_I は湿り空気体積の微量気体のモル分率
x_d_I は湿り空気体積の湿り空気に対する水滴の質量比
Measurement Selector (MA) ブロックを使用してベクトル信号をアンパックし、圧力と温度の値に単位を再度割り当てます。有限の内部湿り空気体積をもつブロックの物理量信号出力端子 [F] に Measurement Selector (MA) ブロックを接続して、データにアクセスします。