Microsoft Azure Marketplace からの MATLAB Parallel Server の実行
このトピックでは、Azure® Marketplace を使用して MATLAB® Parallel Server™ を Azure で迅速に展開し実行する方法を説明します。クラウド インフラストラクチャの弾性を MATLAB Parallel Server と組み合わせることにより、より多くの計算リソースを活用し、計算でデータをいつでも利用できるようになります。
MATLAB Parallel Server が含まれる有効な MATLAB ライセンスと Azure アカウントがあれば、誰でも MATLAB Parallel Server をクラウドで実行できます。このオファリングは "MATLAB® Parallel Server (BYOL)" と呼ばれています。"BYOL" は "Bring Your Own License" (ライセンス持ち込み) のことです。
要件
この手順を実行するには、以下が必要です。
MATLAB Parallel Server が含まれる MATLAB ライセンス
Azure Resource Manager の実用的な知識
ライセンス
既定では、Azure Marketplace での MATLAB Parallel Server (BYOL) オファリングはオンライン ライセンスを使用します。以下の表は、オンライン ライセンスを使用したクラウドでの MATLAB Parallel Server の実行を、どのライセンスがサポートしているかをまとめたものです。
ライセンス タイプ | クラウドの使用可否 |
---|---|
インディビジュアル (個人使用ライセンスや学生ライセンスではない、当人のみが自身の名前で使用するライセンス) | ライセンスはクラウドでの MATLAB Parallel Server 用に構成済みです。 |
Campus-Wide License (学術機関が所有し、そこの所属者が使用するライセンス) | ライセンスはクラウドでの MATLAB Parallel Server 用に構成済みです。 |
個人使用および学生 (当人のみが自身の名前で使用するライセンス) | これらのライセンス タイプでは、MATLAB Parallel Server をクラウド上で使用できません。 |
コンカレントやネットワーク ネームド ユーザーを含む、その他のすべてのライセンス タイプ | ライセンス管理者にお問い合わせください。* ライセンス管理者は、クラウドで MATLAB Parallel Server を実行できるよう、ライセンスに何らかの変更を加えることが必要な場合があります。 管理者: この処理の詳細については、クラウド プラットフォーム用の MATLAB Parallel Server ライセンスの構成を参照してください。 |
*ライセンス管理者が不明な場合: MathWorks アカウントにサインインし、使用しているライセンスをクリックして、"管理者へのお問い合わせ" と記されたタブをクリックします。 |
ネットワーク ライセンス マネージャーを使用して管理されているライセンスを使用するには、Azure でクラウド リソースを作成する際にネットワーク ライセンス マネージャーのポートとホスト名または IP アドレスを指定することができます。既存のライセンス マネージャーの場所を指定するか、あるいはクラウドで新しいライセンス マネージャーを展開することができます。ライセンス マネージャーがクラウド リソースと通信できることを確認する必要があります。MathWorks® が開発した Azure Marketplace ソフトウェア プランを使用して Azure にネットワーク マネージャーを展開するには、Run Network License Manager from Azure Marketplace の手順に従います。
Azure での MATLAB Parallel Server リソースの展開
Marketplace からのテンプレートの構成と展開
以下の手順を使用して、MATLAB Parallel Server (BYOL) リソースをリソース グループに展開します。
https://portal.azure.comに移動し、Azure アカウントにログインします。
ポータルで [リソースの作成] をクリックします。
Marketplace で "matlab parallel server" を検索し、"MATLAB Parallel Server (BYOL)" オファリングを選択します。
オファリング ページで [作成] をクリックして設定を開始します。
設定プロセスでは、Resource Manager テンプレートを使用して、バーチャル マシン (VM) とネットワーク設定の構成に役立てます。設定を簡単にするために、多くのフィールドには適切な値があらかじめ入力されています。次の表は、テンプレートの各メニューでさまざまなオプションを設定する方法を説明したものです。各ステップの最後で [次へ] をクリックすると、次のメニューに進みます。
メニュー オプション 説明 基本
サブスクリプション
使用する Azure サブスクリプションを選択します。
リソース グループ
既存のリソース グループをドロップダウン メニューから選択するか、[新規作成] をクリックして新しいリソース グループを作成します。既存のリソース グループを選択する場合、そのグループに現在展開されているリソースがあってはなりません。
リージョン
ドロップダウン リストからリージョンを選択します。
Cluster Settings
Cluster Name
クラスターの名前を選択します。既定の名前は
myCluster
です。Num worker nodes
ワーカーを実行するために起動する Azure インスタンスの数。
Num workers per node
各インスタンスで起動する MATLAB ワーカーの数。物理コアあたり 1 つのワーカーを割り当てるには、2 つの vCPU ごとに 1 つのワーカーを指定します。たとえば、Standard_D64s_v3 インスタンスには 64 の vCPU があるため、32 の MATLAB ワーカーをサポートできます。インスタンス タイプごとの vCPU の数の詳細については、https://learn.microsoft.com/azure/virtual-machines/sizesを参照してください。
Headnode instance type
ヘッド ノードに使用する Azure インスタンス タイプ。ヘッド ノードはジョブ マネージャーを実行します。このノードではワーカーは起動されないため、このノードはワーカー ノードより小さなインスタンス タイプにできます。インスタンスのタイプとサイズのリストについては、https://learn.microsoft.com/azure/virtual-machines/sizesを参照してください。 Worker instance type
ワーカーに使用する Azure インスタンス タイプ。インスタンスのタイプとサイズのリストについては、https://learn.microsoft.com/azure/virtual-machines/sizesを参照してください。 Database volume size
データベース ファイルの格納に使用されるボリュームのサイズ (ギガバイト単位)。この値を 0 に設定すると、別のボリュームは作成されず、ルート ボリュームがデータベースに使用されます。 Client IP Address MATLAB からクラスターにアクセスするために使用できる IP アドレスの範囲。この範囲は、x.x.x.x/x の形式の有効な IP CIDR 範囲でなければなりません。アクセスを自分のコンピューターのみに制限するには、x.x.x.x/32 の形式の値を使用します。 Password ユーザー "matlab" の管理者パスワードを選択します。このパスワードは、リモート デスクトップ プロトコルを使用して任意のインスタンス (ヘッドノードまたはワーカー) にログインする場合に必要です。パスワードは少なくとも 12 文字で、Azure のパスワード要件を満たしている必要があります。パスワード要件の詳細については、What are the password requirements when creating a VM? を参照してください。 Confirm Password 選択したパスワードを再度入力します。 Network license manager port@server
ネットワーク ライセンス マネージャーを使用している場合は、ポートとホスト名または IP アドレスを入力します。ネットワーク ライセンス マネージャーが Azure リソースと通信できることを確認してください。Azure でネットワーク ライセンス マネージャーを展開するには、Run Network License Manager from Azure Marketplace を参照してください。
Networking
Virtual network
[Virtual network] フィールドには、
vnet01
という新しいバーチャル ネットワーク リソースが事前に入力されています。[新規作成] をクリックすると、新しいバーチャル ネットワーク リソースの名前、アドレス空間、またはサブネットを構成できます。
ドロップダウン メニューで既存のバーチャル ネットワーク リソースを選択できます。既存のリソースを使用することを選択した場合、テンプレートでは新しいバーチャル ネットワーク リソースは作成されません。
Subnets
[Subnet] フィールドには、
subnet-1
という新しいサブネットと、これに関連付けられたサブネット アドレスが事前に入力されます。ドロップダウン メニューで、選択したバーチャル ネットワークの別のサブネットを選択できます。
バーチャル ネットワークを新規作成せずに既存のバーチャル ネットワークを選択した場合は、[サブネット構成の管理] をクリックしてネットワークのサブネットを構成できます。
確認および作成
—
[確認および作成] メニューに進むと、Azure は自動的に、これまでの画面で入力された情報の最終検証チェックの一部を実行します。Azure でエラーが検出された場合は、先へ進む前に修正する必要があります。
検証が正常に完了したら、MathWorks の利用条件とプライバシー ポリシーを確認します。MATLAB Parallel Server を Azure で展開した後は、すべての関連コストに対し当人が責任を負うことになります。
入力した値に問題がなければ、[作成] をクリックしてセットアップを確定し、選択したリソースの展開を開始するか、[Automation のテンプレートをダウンロードする] をクリックして完成したテンプレートのコピーを取得します。
展開には数分かかる場合があります。展開が完了すると、Azure Portal に通知が表示されます。
展開が完了したら、MATLAB からクラスターへの接続の手順に従って、設定したクラスターを使用します。
MATLAB からクラスターへの接続
MATLAB Parallel Server (BYOL) リソースの構成と展開が正常に完了したら、以下の手順を使用して、設定したクラスターに接続します。
Azure Portal から、展開したリソースをもつリソース グループに移動します。
storage で終わるストレージ アカウントを選択します。
ファイル コンテナー タイプを選択します。
"shared" というファイル共有を選択します。
.settings
ファイルをダウンロードします。クライアント マシンで MATLAB を開きます。
MATLAB ツールストリップの [並列] ドロップダウン メニューで、[クラスターの作成と管理...] を選択します。
[インポート] をクリックします。
ダウンロードしたプロファイルを選択して、[開く] をクリックします。
[既定に設定] を選択します。
(オプション) [検証] ボタンをクリックして、クラスターを検証します。
クラウド クラスターを既定として設定した後、次に並列言語コマンド (parfor
、spmd
、parfeval
、batch
など) を実行すると、MATLAB はクラスターに接続します。はじめての接続では、MathWorks アカウントへのログインを要求されます。ワーカーではじめてタスクを実行すると、ワーカーの MATLAB が起動するのに数分かかる場合があります。この遅れは、インスタンス ディスクのプロビジョニングによるものです。これは 1 回限りの操作で、以降のタスクはより迅速に開始されます。
これでクラスターを使用する準備ができました。クライアント マシンで MATLAB を閉じた後でもクラスターは実行中のままとなります。
注意
クラウド リソースへのアクセスを管理するには、プロファイルとクライアント IP アドレスの範囲を使用します。.settings ファイルがあれば誰でも、指定した IP アドレス範囲内のマシンからリソースに接続し、そこでジョブを実行できます。
MATLAB Parallel Server にアクセスするためのポートの要件
MATLAB Parallel Server クラスターにクライアント MATLAB からアクセスするには、クライアント マシンが特定のポートで通信できなければなりません。ネットワークのファイアウォールが以下の発信接続を許可していることを確認してください。
必要なポート | 説明 |
---|---|
TCP 27350 ~ 27358 + 4*N | ポート 27350 ~ 27358 + 4*N。N は単一ノードでのワーカーの最大数 |
TCP 443 | (少なくとも) *.mathworks と *.microsoft.com への HTTP アクセス |
TCP 3389 | クラスター ノードにアクセスするためのリモート デスクトップ プロトコル |
Azure からの MATLAB Parallel Server リソースの削除
リソース グループと、それに関連付けられているすべてのリソースは、使い終わったら、コスト節約のために削除することができます。
Azure Portal にログインします。
展開した MATLAB Parallel Server (BYOL) リソースが含まれるリソース グループを選択します。
[リソース グループの削除] アイコンをクリックして、グループに展開されているすべてのリソースを削除します。
削除を確認するよう要求されます。
削除は最終的なものであり、ファイルは展開先環境間で維持されません。リソースを再度使用できるようにするには、リソースを作成する必要があります。
Azure での MATLAB Parallel Server のアーキテクチャとリソース
MATLAB Parallel Server を Azure で展開すると、リソース グループにいくつかのリソースが作成されます。この展開により、ヘッドノードの単一の Azure VM、ワーカーの Azure バーチャル マシン スケーリング セット (VMSS)、VM に接続するためのパブリック IP アドレスをもつネットワーク インターフェイス、ネットワーク トラフィックを制御するネットワーク セキュリティ グループ、およびリソース間の通信用のバーチャル ネットワークが設定されます。次の表は、作成されるリソースをまとめたものです。
リソース名 | Azure での既定のリソース名 | 説明 |
---|---|---|
バーチャル マシン | myclus-headnode | クラスター ヘッドノードのコンピューティング インスタンス。MATLAB インストールは VM イメージの一部であり、ジョブ データベースはローカルまたはルート ボリュームに保存されます。オプションで、別のデータ ディスクを使用することもできます。クライアントとヘッドノート間の通信は、SSL を使ってセキュリティ保護されます。 |
バーチャル マシンのスケーリング セット | mycl-vmss | ワーカー インスタンスの起動に伴うスケーリング セット。スケーリング機能は現在使用されていません。スケーリング セットは、展開時にクラスターのワーカー ノードとして構成されるインスタンスのそれぞれを拡張するよう構成されています。クライアントとワーカー間の通信は、SSL を使ってセキュリティ保護されます。 |
ネットワーク インターフェイス | myclus-headnodenic | ヘッドノードとワーカーが、インターネット、Azure、オンプレミス リソースと通信できるようにします。 |
ネットワーク セキュリティ グループ | mycluster-nsg | 接続元や接続先との間のトラフィックを許可または拒否します。 |
Virtual network | vnet01 | リソースが相互に通信できるようにします。既存のバーチャル ネットワーク リソースを選択した場合、テンプレートではこのリソースは作成されません。 |
これらのリソースのアーキテクチャを以下の図にまとめます。
VM ソフトウェア
展開を簡単にするため、事前構成された Windows® VM が提供されています。VM には以下のソフトウェアが含まれます。
MATLAB、Simulink®、ツールボックス、および GPU のサポート。
MATLAB の実行に使用されるライセンスにより、使用可能な製品およびツールボックスが決まります。ただし、すべての製品が VM 上にインストールされているため、
ver
コマンドは全製品のリストを返します。ライセンスに新しい製品を追加するには、製品・サービスを参照してください。アドオン: Deep Learning Toolbox™ Model for AlexNet Network、Deep Learning Toolbox Model for GoogLeNet Network、Deep Learning Toolbox Model for ResNet-50 Network。
Marketplace と参照アーキテクチャ
Azure Marketplace オファリングは、MATLAB Parallel Server の最新リリースのみを実行します。MATLAB Parallel Server の旧リリースを実行する場合、またはテンプレートや自動化スクリプトをより広範にカスタマイズする場合は、MATLAB Parallel Server Reference Architecture for Microsoft Azure を代わりに使用できます。
サポート
予期しない問題が発生した場合は、まず MATLAB Answers で解決法を探してください。多くの場合、他の人が同じ問題に遭遇し、既に解決済みです。
問題が解決しない場合や、問題に関連する投稿が MATLAB Answers にない場合は、テクニカル サポートにお問い合わせください。