残差分析とは
"残差" とは、モデルからの 1 ステップの予測出力と検証データ セットからの測定出力の差です。つまり、残差はモデルで示されない検証データの部分を表します。
残差分析は、白色性テストと独立テストの 2 つのテストで構成されます。
"白色性テスト" の基準では、残差の自己相関関数が対応する推定の信頼区間内にあれば、残差が無相関であることを示し、良好なモデルとなります。
"独立テスト" の基準では、残差が過去の入力と無相関であれば良好なモデルとなります。相関があれば、出力の部分と対応する入力の関係がモデルで示されていないことになります。たとえば、ラグ "k" の信頼区間外にピークがあれば、入力 "u(t-k)" からの出力 "y(t)" がモデルで適切に示されていないことを意味します。
モデルは、次の場合を除き、白色性テストと独立テストの両方にパスしなければなりません。
出力誤差 (OE) モデルで操作変数 (IV) 法を使用している場合は、モデルの
e
とu
の独立性を確認します。e
の白色性の結果については、それほど注意する必要はありません。この場合、モデル化の焦点はダイナミクス "G" であり、外乱のプロパティ "H" ではありません。
負のラグの残差と入力の相関は、必ずしも不正確なモデルを示すとは限りません。
"t" の時点における現在の残差が将来の入力値に影響する場合、システムにフィードバックがある可能性があります。フィードバックの場合は、モデル検証時に相互相関プロットの正のラグに注目します。
サポートされるモデル タイプ
モデル残差の動作をチェックして、線形と非線形のパラメトリック モデルを検証できます。残差分析の詳細については、データの領域別の残差プロットに表示される内容を参照してください。
メモ
残差分析プロットは周波数応答 (FRD) モデルには使用できません。時系列モデルの場合、時間領域の時系列 (入力なし) の測定データを使用して、パラメトリック モデルのモデル出力プロットのみを生成できます。
データの領域別の残差プロットに表示される内容
残差分析プロットには、検証データに時間領域と周波数領域のどちらの入出力データを使用するかに応じて異なる情報が表示されます。
時間領域の検証データの場合、プロットに次の 2 つの座標軸が表示されます。
各出力の残差の自己相関関数
各入出力ペアの入力と残差の相互相関
メモ
時系列モデルの場合、残差分析プロットで入力と残差の相関プロットは提供されません。
周波数領域の検証データの場合、プロットに次の 2 つの座標軸が表示されます。
各出力の残差の推定パワー スペクトル
各入出力ペアの入力から残差への伝達関数の振幅
線形モデルの場合、時間領域データを使用してモデルを推定してから、周波数領域データを使用してモデルを検証できます。非線形モデルの場合、System Identification Toolbox™ 製品では時間領域データしかサポートされません。
次の図は、System Identification アプリで作成された残差分析プロットのサンプルを示しています。
信頼区間の表示
"信頼区間" は、システムに対して統計的に有意である特定の確率をもつ残差値の範囲に対応します。ツールボックスはモデル パラメーターの推定された不確かさを使用して信頼区間を計算し、推定にガウス分布があると仮定します。
たとえば、95% 信頼区間の場合、ゼロ周辺の領域は、統計的に有意である確率が 95% である残差値の範囲を表します。信頼区間を確率 (0 と 1 の間) またはガウス分布の標準偏差の数として指定できます。たとえば、0.99 (99%) の確率は 2.58 の標準偏差に対応します。
アプリでプロットに信頼区間を表示して、モデルの質について詳しく調べることができます。信頼区間を表示または非表示にする方法については、How to Plot Residuals in the Appのプロット設定の説明を参照してください。
メモ
System Identification アプリで作業している場合は、カスタムの信頼区間を指定できます。resid
コマンドを使用している場合は、信頼区間は 99% で固定です。