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電気自動車の熱管理

この例では、バッテリー式電気自動車 (BEV) の熱管理システムをモデル化します。このシステムは、2 つの液体冷却ループ、冷媒ループ、車室空気 HVAC ループで構成されます。熱負荷は、バッテリー、パワートレイン、および車室です。

2 つの冷却ループは、4 方向バルブを使用して逐次モードで結合される場合と並列モードで別々になる場合があります。寒い気候下では、モーターからの熱でバッテリーが暖まるように冷却ループが逐次モードになります。必要に応じて、ヒーターから追加の熱を供給できます。暖かい気候下では、冷却ループは逐次モードのままで、バッテリーとパワートレインの両方がラジエーターによって冷却されます。暑い気候下では、並列モードに切り替わり、冷却ループが別々になります。一方のループで、ラジエーターを使用してパワートレインが冷却されます。もう一方のループで、冷媒ループの冷却器を使用してバッテリーが冷却されます。

冷媒ループは、コンプレッサー、凝縮器、受液器、2 つの膨張弁、冷却器、蒸発器で構成されます。冷却器は、暑い気候下において、ラジエーター単独では不十分な場合に冷却液の冷却に使用されます。蒸発器は、空調をオンにしたときに車室の冷却に使用されます。コンプレッサーは、冷却器と蒸発器のいずれかまたは両方に吸収された熱を凝縮器が放散できるように制御されます。

車室空気 HVAC ループは、送風機、蒸発器、PTC ヒーター、車室で構成されます。PTC ヒーターは、寒い気候下で暖房を提供します。蒸発器は、暑い気候下で空調を提供します。送風機は、指定の車室温度設定点を保つように制御されます。

このモデルにはシナリオが 3 つ設定されています。ドライブ サイクル シナリオでは、30℃の気候下で空調をオンにして運転条件をシミュレーションします。車両速度は NEDC に基づき、それに続く 30 分の高速走行でバッテリーの熱負荷をプッシュします。冷却シナリオでは、40℃の気候下で空調をオンにして静止車両をシミュレーションします。最後に、寒冷シナリオでは、-10℃の気候下で運転条件をシミュレーションします。バッテリーと車室をバッテリー ヒーターと PTC ヒーターでそれぞれ暖める必要があります。

車室暖房にヒート ポンプを使用した同様の例については、Electric Vehicle Thermal Management with Heat Pumpも参照してください。

モデル

Scenario サブシステム

このサブシステムは、選択されたシナリオに合わせて環境条件とシステムへの入力を設定します。バッテリーの電流要求とパワートレインの熱負荷は、表形式データに基づく車両速度の関数です。

Controls サブシステム

このサブシステムは、熱管理システム内のポンプ、コンプレッサー、ファン、送風機、およびバルブ用のすべてのコントローラーで構成されます。

Parallel-Serial Mode Valve サブシステム

このサブシステムの 4 方向バルブは、冷却ループが逐次モードと並列モードのどちらで動作するかを制御します。端子 A と端子 D が接続され、端子 C と端子 B が接続されている場合は並列モードです。2 つの冷却ループは分かれており、それぞれ独自の冷却タンクとポンプを使用します。

端子 A と端子 B が接続され、端子 C と端子 D が接続されている場合は逐次モードです。2 つの冷却ループはマージされており、2 つのポンプが同期されて同じ流量を供給します。

Motor Pump サブシステム

このポンプは、充電器、モーター、インバーターを冷却する冷却ループを駆動します。

Charger サブシステム

このサブシステムは、充電器を囲む冷却ジャケットをモデル化したものです。熱流量源と熱質量で表されます。

Motor サブシステム

このサブシステムは、モーターを囲む冷却ジャケットをモデル化したものです。熱流量源と熱質量で表されます。

Inverter サブシステム

このサブシステムは、インバーターを囲む冷却ジャケットをモデル化したものです。熱流量源と熱質量で表されます。

Radiator サブシステム

ラジエーターは、冷却液の熱を空気に放散する矩形のチューブ-フィン型熱交換器です。車両速度と凝縮器の後ろにあるファンによって空気の流れが駆動されます。

Radiator Bypass Valve サブシステム

寒い気候下では、パワートレインからの熱を利用してバッテリーを暖められるようにラジエーターがバイパスされます。これは、3 方向バルブにより、冷却液をラジエーターに送るかラジエーターをバイパスすることで制御されます。

Battery Pump サブシステム

このポンプは、バッテリーと DC-DC コンバーターを冷却する冷却ループを駆動します。

Chiller サブシステム

冷却器は、冷却液からの熱を冷媒に吸収させるシェル-チューブ型熱交換器であると仮定しています。

Chiller Bypass Valve サブシステム

冷却器は、バッテリー温度に応じてオンオフ方式で作動します。これは、3 方向バルブにより、冷却液を冷却器に送るか冷却器をバイパスすることで制御されます。

Heater サブシステム

バッテリー ヒーターは、熱流量源と熱質量としてモデル化されます。寒い気候下でオンになり、バッテリー温度が 5℃を超えるようにします。

DCDC サブシステム

このサブシステムは、DC-DC コンバーターを囲む冷却ジャケットをモデル化したものです。熱流量源と熱質量で表されます。

Battery サブシステム

バッテリーは、冷却ジャケットで囲まれた 4 つの別々のパックとしてモデル化されます。バッテリー パックは電流要求に基づいて電圧と熱を生成します。冷却液はバッテリー パックの周囲の狭い経路を流れるものと仮定しています。

Pack 1 サブシステム

各バッテリー パックは、熱モデルと結合されたリチウムイオン セルのスタックとしてモデル化されます。セル内の電力損失に基づいて熱が生成されます。

Compressor サブシステム

コンプレッサーは、冷媒ループ内の流れを駆動します。冷却器と蒸発器の内部の圧力を 0.3 MPa に保つように制御されます。これは、約 1℃の飽和温度に対応する圧力です。

Condenser サブシステム

凝縮器は、冷媒の熱を空気に放散する矩形のチューブ-フィン型熱交換器です。車両速度とファンによって空気の流れが駆動されます。受液器は冷媒の貯蔵場所を提供し、過冷却液体のみを膨張弁に流します。

Chiller Expansion Valve サブシステム

この膨張弁は、定格過熱度を保つように冷却器への冷媒の流量を調整します。

Evaporator Expansion Valve サブシステム

この膨張弁は、定格過熱度を保つように蒸発器への冷媒の流量を調整します。

Evaporator サブシステム

蒸発器は、空気からの熱を冷媒に吸収させる矩形のチューブ-フィン型熱交換器です。湿度が高いときは空気の除湿も行います。

Blower サブシステム

送風機は、HVAC ループ内の空気の流れを駆動します。車室温度設定点を保つように制御されます。空気源は、環境または再循環される車室空気のいずれかになります。

Recirculation Flap サブシステム

再循環フラップは、環境空気または車室空気のいずれかを送風機に送るように反対の働きをする 2 つの制限としてモデル化されます。

PTC サブシステム

PTC ヒーターは、熱流量源と熱質量としてモデル化されます。寒い気候下でオンになり、車室の暖房を提供します。

Cabin サブシステム

車室は、大きな体積の湿り空気としてモデル化されます。車両の中にいるそれぞれの人が、熱、水分、CO2 のソースになります。

Cabin Heat Transfer サブシステム

このサブシステムは、車室内部と外部環境の間の熱抵抗をモデル化したものです。

Scope からのシミュレーション結果

次のスコープは、ドライブ サイクル シナリオの車両速度、放熱、車室温度、コンポーネント温度、および制御コマンドを示しています。冷却ループは、最初は逐次モードになっています。約 1100 秒後に並列モードに切り替わり、バッテリーを 35℃未満に保つために冷却器が使用されます。

Simscape ログからのシミュレーション結果

次のプロットは、車両コンポーネントと車室を冷却するために熱管理システムによって消費される電力を示しています。冷媒コンプレッサーにおいて冷却器を使用してバッテリーを冷却するときに、消費電力が最も高くなっています。

参考

トピック