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正準形

Fixed-Point Designer™ ソフトウェアでは、特定の固定小数点デジタル フィルター設計法での標準化は試みられません。たとえば、連続時間で設計を行った後、多くの変換方法の 1 つを使って「等価な」離散時間デジタル フィルターを取得できます。または、離散時間で直接デジタル フィルターを設計できます。デジタル フィルターの取得後、正準形の任意の数値を使用して固定小数点ハードウェアを実現できます。典型的な正準形には直接型、直列型、並列型があり、以下の節でそれぞれの概要を述べます。

正準形とは、特定のデジタル フィルターにおけるプロセッサの基本的な演算を指します。デジタル フィルターを実現する方法は無限にあるため、システムごとに最適な実現を考える必要があります。この章で紹介する正準形は、最小の遅延要素などの因子に対して実装を最適化します。

一般に、実現方法を選択するときには、以下の点を考慮しなければなりません。

  • コスト

    実現のコストは最小コードと最小データ サイズに依存する場合があります。

  • タイミング制約

    リアルタイムのシステムは一定時間内に計算サイクルを完了しなければなりません。実現によっては、異なるプロセッサ上で実行速度が向上する場合があります。

  • 出力信号の品質

    実際値の表現に使用されるバイナリ ワードの範囲と精度の限界により、誤差が生じます。これらの誤差に敏感な実現もあります。

Fixed-Point Designer ソフトウェアを使用すると、デジタル フィルターのさまざまな実現方法をシミュレーション環境で評価できます。固定小数点システムの開発とテストで説明する開発サイクルに従って、コスト (コードとデータ サイズ) の削減や信号品質の向上を目的とした微調整ができます。望ましいパフォーマンスを達成した後、Simulink® Coder™ 製品を使用して C コードのラピッド プロトタイピングを生成し、システムのリアルタイムのタイミング制約に照らしてパフォーマンスを評価できます。次に、ラピッド プロトタイピング システムからのフィードバックを基にモデルを修正できます。

さまざまな実現構造の説明では、加算結合が基本的な演算子であることを考慮しているため、ここで紹介する構造が固定小数点フィルター設計の文献と異なって見えるかもしれません。ここでは、実現の型ごとに伝達関数を使用して例を挙げます。

Hex(z)=1+2.2z1+1.85z2+0.5z310.5z1+0.84z2+0.09z3=(1+0.5z1)(1+1.7z1+z2)(1+0.1z1)(10.6z1+0.9z2)=5.55563.46391+0.1z1+1.0916+3.0086z110.6z1+0.9z2.