データ変換ルール

このトピックでは、MATLAB^® Compiler™ のコンポーネントのデータ変換ルールを説明します。これらのコンポーネントは Automation と互換性のあるデータ型をサポートするデュアルインターフェイス Microsoft^® COM オブジェクトです。

メモ

"Automation" (以前は OLE Automation と呼ばれた) はソフトウェアパッケージが固有の機能をスクリプトツールやその他のアプリケーションに公開できるようにするテクノロジーです。Automation はコンポーネントオブジェクトモデル (COM) を使用しますが、インプレースアクティベーションなど他の OLE 機能とは独立して実装される場合があります。

MATLAB Compiler のコンポーネントでメソッドが呼び出されると、入力パラメーターは MATLAB 内部の配列形式に変換され、コンパイルされた MATLAB 関数に渡されます。関数が終了すると、出力パラメーターは MATLAB 内部の配列形式から COM オートメーション型に変換されます。

COM クライアントはコンパイルされた MATLAB 関数内のすべての入力引数と出力引数を VARIANT 型として渡します。COM VARIANT 型は複数の単純データ型の共用体です。VARIANT 型変数は、任意の単純型の変数およびそれら任意の値の配列を格納することができます。

Win32 アプリケーションプログラムインターフェイス (API) は C/C++ で VARIANT を作成し操作する関数を多数提供し、Visual Basic^® はこの型のネイティブ言語サポートを提供します。

メモ

このデータの説明は VARIANT データ型と Variant データ型の両方に該当します。VARIANT は C++ での名前であり、Variant は Visual Basic での対応するデータ型です。

COM VARIANT の定義と API サポートについては、Visual Studio^® ドキュメンテーションを参照してください。VARIANT 変数は自己記述型で、その型のコードを構造体の内部フィールドとして格納します。

以下の表は、MATLAB Compiler のコンポーネントによってサポートされている VARIANT 型コードをリストしています。

サポートされる VARIANT 型コード

`VARIANT` 型コード (C/C++)	C/C++ の型	`Variant` 型コード (Visual Basic)	Visual Basic の型	定義
`VT_EMPTY`	`—`	`vbEmpty`	`—`	初期化されていない `VARIANT`
`VT_I1`	`char`	`—`	`—`	符号付き 1 バイト文字
`VT_UI1`	符号なし `char`	`vbByte`	`Byte`	符号なし 1 バイト文字
`VT_I2`	`short`	`vbInteger`	`Integer`	符号付き 2 バイト整数
`VT_UI2`	`unsigned short`	—	—	符号なし 2 バイト整数
`VT_I4`	`long`	`vbLong`	`Long`	符号付き 4 バイト整数
`VT_UI4`	`unsigned long`	—	—	符号なし 4 バイト整数
`VT_R4`	`float`	`vbSingle`	`Single`	IEEE^® 4 バイト浮動小数点値
`VT_R8`	`double`	`vbDouble`	`Double`	IEEE 8 バイト浮動小数点値
`VT_CY`	`CY`⁺	`vbCurrency`	`Currency`	通貨値 (64 ビット整数、10,000 でスケーリング)
`VT_BSTR`	`BSTR`⁺	`vbString`	`String`	文字列値
`VT_ERROR`	`SCODE`⁺	`vbError`	—	`HRESULT` (COM エラーコードを表す符号付き 4 バイト整数)
`VT_DATE`	`DATE`⁺	`vbDate`	`Date`	日付と時刻を表す 8 バイト浮動小数点値
`VT_INT`	`int`	—	—	符号付き整数、`int` 型と等価
`VT_UINT`	`unsigned int`	—	—	符号なし整数、`unsigned int` 型と等価
`VT_DECIMAL`	`DECIMAL`⁺	`vbDecimal`	—	96 ビット (12 バイト) 符号なし整数、10 のべき乗の変数でスケーリング
`VT_BOOL`	`VARIANT_BOOL`⁺	`vbBoolean`	`Boolean`	2 バイトのブール値 (0xFFFF = True、0x0000 = False)
`VT_DISPATCH`	`IDispatch*`	`vbObject`	`Object`	オブジェクトへの `IDispatch*` ポインター
`VT_VARIANT`	`VARIANT`⁺	`vbVariant`	`Variant`	`VARIANT` (`VT_BYREF` または `VT_ARRAY` と組み合わせる場合のみ指定可能)
<"任意"`>\|VT_ARRAY`	—	—	—	配列として宣言するために `VT_ARRAY` をビット単位で任意の基本型と組み合わせます
<"任意"`>\|VT_BYREF`	—	—	—	値への参照として宣言するため `VT_BYREF` をビット単位で任意の基本型と組み合わせます
⁺は Windows 固有の型を表します。標準 C/C++ の一部ではありません。

以下の表は MATLAB から COM への変換ルールをリストしています。

MATLAB から COM VARIANT への変換ルール

MATLAB データ型	スカラーデータの `VARIANT` 型	配列データの `VARIANT` 型	コメント
`cell`	1 行 1 列の cell 配列はセル内容の MATLAB データ型の変換ルールに準拠した型をもつ単一の `VARIANT` に変換されます。	多次元 cell 配列は、各配列メンバーの型が対応するセルの MATLAB データ型の変換ルールに準拠する、`VT_VARIANT\|VT_ARRAY` 型の `VARIANT` に変換されます。
`structure`	`VT_DISPATCH`	`VT_DISPATCH`	MATLAB `struct` 配列は `MWStruct` オブジェクトに変換されます (クラス MWStruct (MATLAB Compiler SDK)を参照)。このオブジェクトは `VT_DISPATCH` 型として渡されます。
`char`	1 行 1 列の `char` 行列は文字列の長さが 1 で `VT_BSTR` 型の `VARIANT` に変換されます。	1 行 L 列の `char` 行列は MATLAB では長さ L の文字ベクトルを表すとみなされます。この場合は、`VT_BSTR` 型で文字列の長さ L の `VARIANT` に変換されます。複数行、あるいはより高度な次元の `char` 行列は `VT_BSTR\|VT_ARRAY` 型の `VARIANT` に変換されます。変換された配列の各文字列の長さは 1 で、元の行列の各文字に対応しています。	文字ベクトルの配列は `char` 行列としてサポートされません。文字ベクトルの配列を渡すには、1 行 L 列の `char` 行列の cell 配列を使用します。
`sparse`	`VT_DISPATCH`	`VT_DISPATCH`	MATLAB スパース配列は `MWSparse` オブジェクトに変換されます (クラス MWSparse (MATLAB Compiler SDK)を参照)。このオブジェクトは `VT_DISPATCH` 型として渡されます。
`double`	実数で 1 行 1 列の double 行列は `VT_R8` 型の `VARIANT` に変換されます。複素数で 1 行 1 列の double 行列は `VT_DISPATCH` 型の `VARIANT` に変換されます。	実数で多次元の double 行列は `VT_R8\|VT_ARRAY` 型の `VARIANT` に変換されます。複素数で多次元の double 行列は `VT_DISPATCH` 型の `VARIANT` に変換されます。	複素数配列は `MWComplex` クラスを使用して、コンパイルされた MATLAB 関数との間で受け渡しされます (クラス MWComplexを参照)。
`single`	実数で 1 行 1 列の single 行列は `VT_R4` 型の `VARIANT` に変換されます。複素数で 1 行 1 列の single 行列は `VT_DISPATCH` 型の `VARIANT` に変換されます。	実数で多次元の single 行列は `VT_R4\|VT_ARRAY` 型の `VARIANT` に変換されます。複素数で多次元の single 行列は `VT_DISPATCH` 型の `VARIANT` に変換されます。	複素数配列は `MWComplex` クラスを使用して、コンパイルされた MATLAB 関数との間で受け渡しされます (クラス MWComplexを参照)。
`int8`	実数で 1 行 1 列の `int8` 行列は `VT_I1` 型の `VARIANT` に変換されます。複素数で 1 行 1 列の `int8` 行列は `VT_DISPATCH` 型の `VARIANT` に変換されます。	実数で多次元の `int8` 行列は V`T_I1\|VT_ARRAY` 型の `VARIANT` に変換されます。複素数で多次元の `int8` 行列は `VT_DISPATCH` 型の `VARIANT` に変換されます。	複素数配列は `MWComplex` クラスを使用して、コンパイルされた MATLAB 関数との間で受け渡しされます (クラス MWComplexを参照)。
`uint8`	実数で 1 行 1 列の `uint8` 行列は `VT_UI1` 型の `VARIANT` に変換されます。複素数で 1 行 1 列の `uint8` 行列は `VT_DISPATCH` 型の `VARIANT` に変換されます。	実数で多次元の `uint8` 行列は `VT_UI1\|VT_ARRAY` 型の `VARIANT` に変換されます。複素数で多次元の `uint8` 行列は `VT_DISPATCH` 型の `VARIANT` に変換されます。	複素数配列は `MWComplex` クラスを使用して、コンパイルされた MATLAB 関数との間で受け渡しされます (クラス MWComplexを参照)。
`int16`	実数で 1 行 1 列の `int16` 行列は `VT_I2` 型の `VARIANT` に変換されます。複素数で 1 行 1 列の `int16` 行列は `VT_DISPATCH` 型の `VARIANT` に変換されます。	実数で多次元の `int16` 行列は `VT_I2\|VT_ARRAY` 型の `VARIANT` に変換されます。複素数で多次元の `int16` 行列は `VT_DISPATCH` 型の `VARIANT` に変換されます。	複素数配列は `MWComplex` クラスを使用して、コンパイルされた MATLAB 関数との間で受け渡しされます (クラス MWComplexを参照)。
`uint16`	実数で 1 行 1 列の `uint16` 行列は `VT_UI2` 型の `VARIANT` に変換されます。複素数で 1 行 1 列の `uint16` 行列は `VT_DISPATCH` 型の `VARIANT` に変換されます。	実数で多次元の `uint16` 行列は `VT_UI2\|VT_ARRAY` 型の `VARIANT` に変換されます。複素数で多次元の `uint16` 行列は `VT_DISPATCH` 型の `VARIANT` に変換されます。	複素数配列は `MWComplex` クラスを使用して、コンパイルされた MATLAB 関数との間で受け渡しされます (クラス MWComplexを参照)。
`int32`	1 行 1 列の `int32` 行列は `VT_I4` 型の `VARIANT` に変換されます。複素数で 1 行 1 列の `int32` 行列は `VT_DISPATCH` 型の `VARIANT` に変換されます。	多次元の `int32` 行列は `VT_I4\|VT_ARRAY` 型の `VARIANT` に変換されます。複素数で多次元の `int32` 行列は `VT_DISPATCH` 型の `VARIANT` に変換されます。	複素数配列は `MWComplex` クラスを使用して、コンパイルされた MATLAB 関数との間で受け渡しされます (クラス MWComplexを参照)。
`uint32`	1 行 1 列の `uint32` 行列は `VT_UI4` 型の `VARIANT` に変換されます。複素数で 1 行 1 列の `uint32` 行列は `VT_DISPATCH` 型の `VARIANT` に変換されます。	多次元の `uint32` 行列は `VT_UI4\|VT_ARRAY` 型の `VARIANT` に変換されます。複素数で多次元の `uint32` 行列は `VT_DISPATCH` 型の `VARIANT` に変換されます。	複素数配列は `MWComplex` クラスを使用して、コンパイルされた MATLAB 関数との間で受け渡しされます (クラス MWComplexを参照)。
関数ハンドル	`VT_EMPTY`	`VT_EMPTY`	サポートされていません
Java^® クラス	`VT_EMPTY`	`VT_EMPTY`	サポートされていません
ユーザークラス	`VT_EMPTY`	`VT_EMPTY`	サポートされていません
logical	`VT_Bool`	`VT_Bool\|VT_ARRAY`

以下の表では COM から MATLAB への変換ルールをリストしています。

COM VARIANT から MATLAB への変換ルール

`VARIANT` 型	MATLAB データ型 (スカラーまたは配列データ)	コメント
`VT_EMPTY`	該当なし	空配列が作成されます。
`VT_I1`	`int8`
`VT_UI1`	`uint8`
`VT_I2`	`int16`
`VT_UI2`	`uint16`
`VT_I4`	`int32`
`VT_UI4`	`uint32`
`VT_R4`	`single`
`VT_R8`	`double`
`VT_CY`	`double`
`VT_BSTR`	`char`	`VT_BSTR` 型の `VARIANT` は 1 行 L 列の MATLAB `char` 配列に変換されます。ここで、L は変換される文字ベクトルの長さです。`VT_BSTR\|VT_ARRAY` 型の `VARIANT` は 1 行 L 列の `char` 配列の MATLAB cell 配列に変換されます。
`VT_ERROR`	`int32`
`VT_DATE`	`double`	1. `VARIANT` 日付は 1899 年 12 月 31 日午前 0 時に開始する double として格納されます。MATLAB 日付は 0/0/00 00:00:00 に開始する double として格納されます。したがって、`VARIANT` 日付である 0.0 は MATLAB の数値の日付である 693960.0 にマッピングされます。`VARIANT` 日付は MATLAB double 型に変換され、693960.0 ずつインクリメントされます。 2. `VARIANT` 日付はオプションで文字ベクトルに変換できます。型強制の詳細は、データ変換フラグを参照してください。
`VT_INT`	`int32`
`VT_UINT`	`uint32`
`VT_DECIMAL`	`double`
`VT_BOOL`	`logical`
`VT_DISPATCH`	("場合により異なる")	`IDispatch*` ポインターは、指し示す先のコンテキスト内で処理されます。オブジェクトは既知のデータ抽出および変換ルールでサポートされる型でなければなりません。あるいは、単一の `VARIANT` 型を指す汎用 `Value` プロパティを公開します。オブジェクトから抽出されたデータは取得した特定の `VARIANT` のルールに基づいて変換されます。現在、Excel^® の `Range` オブジェクトと共に、MATLAB Compiler の `MWStruct` 型、`MWComplex` 型、`MWSparse` 型、`MWArg` 型がサポートされています。
<"任意"`>\|VT_BYREF`	("場合により異なる")	任意の基本型へのポインターは、指し示す先のルールに従って処理されます。結果の MATLAB 配列には値のディープコピーが含まれます。
<"任意"`>\|VT_ARRAY`	("場合により異なる")	多次元の `VARIANT` 配列は多次元の MATLAB 配列に変換され、各要素は基本型のルールに従って変換されます。`VT_VARIANT\|VT_ARRAY` 型の多次元の `VARIANT` 配列は多次元の cell 配列に変換され、各セルはその特定の型のルールに従って変換されます。