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ISO/IEC TS 17961 [nullref]

Dereferencing an out-of-domain pointer

説明

ルール定義

領域外のポインターのデリファレンス。1

Polyspace 実装

このチェッカーは以下の問題をチェックします。

  • 安全でないポインター演算

  • 標準ライブラリ メモリ ルーチンの無効な使用

  • NULL ポインター

  • NULL ポインターを使用した算術演算

  • 標準ライブラリ文字列ルーチンの無効な使用

入力値が不明であり、入力のサブセットのみがエラーの原因として考えられる場合、既定の Bug Finder 解析ではこのルールに対する違反が報告されない場合があります。特定のシステム入力値を原因とする違反の有無をチェックするには、より厳密な Bug Finder 解析を実行してください。特定のシステム入力値から欠陥を見つけるための Bug Finder チェッカーの拡張を参照してください。

チェッカーの拡張

入力値が不明であり、入力のサブセットのみが問題の原因となっている場合、Bug Finder が "NULL ポインター" を検出しない場合があります。特定のシステム入力値を原因とする違反の有無をチェックするには、より厳密な Bug Finder 解析を実行してください。特定のシステム入力値から欠陥を見つけるための Bug Finder チェッカーの拡張を参照してください。

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問題

この問題は、ポインター オペランドに対する演算の結果として得られるポインターが、そのポインター オペランドと同じ配列の要素をアドレス指定しない場合に発生します。

Polyspace® は、コードに以下の問題が含まれている場合に、このルールの違反を報告します。

リスク

無効な配列の添字を使用するとプログラムの誤動作につながる可能性があります。実行時に派生した配列の添字は、手動によるレビューまたは静的解析で容易にチェックできないため特に問題となります。

C 標準では配列の終わりを超えた要素を指すポインターの生成を定義しています。ルールは C 標準を許可しています。配列の終わりを超えた要素を指すポインターのデリファレンスは未定義の動作を発生させ、準拠しません。

問題

標準ライブラリ メモリ ルーチンの無効な使用は、メモリ ライブラリ関数が無効な引数で呼び出された場合に発生します。たとえば、関数 memcpy でコピー先の配列に格納できないバイト数をコピーする場合が該当します。

リスク

無効な引数でメモリ ライブラリ関数を使用すると、バッファー オーバーフローなどの問題が発生する可能性があります。

修正方法

修正方法は欠陥の根本原因によって異なります。多くの場合、結果の詳細には欠陥につながる一連のイベントが表示されます。そのシーケンス内のどのイベントについても修正を実装できます。結果の詳細にイベント履歴が表示されない場合は、ソース コード内で右クリック オプションを使用して逆のトレースを行い、これまでの関連するイベントを確認できます。Polyspace デスクトップ ユーザー インターフェイスでの Bug Finder の結果の解釈も参照してください。

以下の修正例を参照してください。

問題を修正しない場合は、改めてレビューされないように結果またはコードにコメントを追加します。詳細は、以下を参照してください。

例 - 標準ライブラリ メモリ ルーチンの無効な使用エラー
#include <string.h>
#include <stdio.h>

char* Copy_First_Six_Letters(void)
 {
  char str1[10],str2[5];

  printf("Enter string:\n");
  scanf("%s",str1);

  memcpy(str2,str1,6); 
  /* Defect: Arguments of memcpy invalid: str2 has size < 6 */

  return str2;
 }

文字列 str2 のサイズは 5 ですが、関数 memcpy を使用して 6 文字の文字列 str1str2 にコピーされています。

修正 — 有効な引数による関数の呼び出し

1 つの修正方法として、関数 memcpy でコピーされる文字が収まるように、str2 のサイズを調整するとします。

#include <string.h>
#include <stdio.h>

char* Copy_First_Six_Letters(void)
 {
  /* Fix: Declare str2 with size 6 */
  char str1[10],str2[6]; 

  printf("Enter string:\n");
  scanf("%s",str1);

  memcpy(str2,str1,6);
  return str2;
 }
問題

NULL ポインターは、NULL 値のポインターを有効なメモリ位置を指しているかのように使用する場合に発生します。

リスク

NULL ポインターのデリファレンスは未定義の動作です。ほとんどの実装では、このデリファレンスによってプログラムがクラッシュする可能性があります。

修正方法

デリファレンスの前にポインターが NULL かどうかをチェックします。

以前に NULL かどうかをチェックしていたにもかかわらず、この問題が発生する場合は、このチェックと以降のデリファレンスの間で中間イベントを探します。多くの場合、結果の詳細には欠陥につながる一連のイベントが表示されます。そのシーケンス内のどのイベントについても修正を実装できます。結果の詳細にイベント履歴が表示されない場合は、ソース コード内で右クリック オプションを使用して逆のトレースを行い、これまでの関連するイベントを確認できます。Polyspace デスクトップ ユーザー インターフェイスでの Bug Finder の結果の解釈も参照してください。

以下の修正例を参照してください。

例 - NULL ポインター エラー
#include <stdlib.h>

int FindMax(int *arr, int Size) 
{
 int* p=NULL;

 *p=arr[0];
 /* Defect: Null pointer dereference */

 for(int i=0;i<Size;i++)
  {
   if(arr[i] > (*p))
     *p=arr[i];    
  }

 return *p;
}

ポインター pNULL の値で初期化されます。しかし、値 arr[0]*p に書き込まれるとき、p は有効なメモリ位置を指していると想定されます。

修正 — デリファレンスの前に null ポインターにアドレスを割り当てる

1 つの修正方法として、デリファレンスの前に有効なメモリ アドレスで p を初期化することができます。

#include <stdlib.h>

int FindMax(int *arr, int Size) 
{
 /* Fix: Assign address to null pointer */
 int* p=&arr[0];       

 for(int i=0;i<Size;i++)
  {
   if(arr[i] > (*p))
     *p=arr[i];    
  }

 return *p;
}
問題

NULL ポインターを使用した算術演算は、値が NULL であるポインターを算術演算で使用する場合に発生します。

リスク

NULL ポインターに対するポインター演算および結果として得られるポインターのデリファレンスの実行は未定義の動作です。ほとんどの実装では、このデリファレンスによってプログラムがクラッシュする可能性があります。

修正方法

ポインターでの算術演算の前にポインターが NULL かどうかをチェックします。

以前に NULL かどうかをチェックしていたにもかかわらず、この問題が発生する場合は、このチェックと以降のデリファレンスの間で中間イベントを探します。多くの場合、結果の詳細には欠陥につながる一連のイベントが表示されます。そのシーケンス内のどのイベントについても修正を実装できます。結果の詳細にイベント履歴が表示されない場合は、ソース コード内で右クリック オプションを使用して逆のトレースを行い、これまでの関連するイベントを確認できます。Polyspace デスクトップ ユーザー インターフェイスでの Bug Finder の結果の解釈も参照してください。

以下の修正例を参照してください。

例 - NULL ポインターを使用した算術演算エラー
#include<stdlib.h>

int Check_Next_Value(int *loc, int val) 
 {
  int *ptr = loc, found = 0; 
  
  if (ptr==NULL)
   { 
      ptr++; 
      /* Defect: NULL pointer shifted */

      if (*ptr==val) found=1;
   } 
   
  return(found);    
 }

ptrNULL ポインターである場合、このコードは if ステートメントの本体に入ります。したがって、NULL ポインターはステートメント ptr++ でシフトします。

修正 — NULL ポインターの算術演算を行わない

1 つの修正方法として、ptrNULL でないときに算術演算を実行することができます。

#include<stdlib.h>

int Check_Next_Value(int *loc, int val) 
 {
  int *ptr = loc, found = 0; 
  
  /* Fix: Perform operation when ptr is not NULL */
  if (ptr!=NULL)
   { 
      ptr++;

      if (*ptr==val) found=1;
   }
   
  return(found);    
 }
問題

標準ライブラリ文字列ルーチンの無効な使用は、文字列ライブラリ関数が無効な引数で呼び出された場合に発生します。

リスク

リスクは無効な引数のタイプによって異なります。たとえば、コピー先引数より大きいコピー元引数を指定して関数 strcpy を使用すると、バッファー オーバーフローが発生する可能性があります。

修正方法

修正方法は欠陥に関連する標準ライブラリ関数に依存します。場合によっては、関数呼び出しの前に関数の引数を制約することができます。たとえば、次の関数 strcpy を考えます。

char * strcpy(char * destination, const char* source);
これが、使用可能なバッファーに比べて大きすぎるバイト数をコピー先引数にコピーしようとする場合、strcpy を呼び出す前にコピー元引数を制約します。場合によっては、代替となる関数を使用してエラーを回避できます。たとえば、strcpy の代わりに strncpy を使用するとコピーされるバイト数を制御できます。

以下の修正例を参照してください。

問題を修正しない場合は、改めてレビューされないように結果またはコードにコメントを追加します。詳細は、以下を参照してください。

例 - 標準ライブラリ文字列ルーチンの無効な使用によるエラー
 #include <string.h>
 #include <stdio.h>
 
 char* Copy_String(void)
 {
  char *res;
  char gbuffer[5],text[20]="ABCDEFGHIJKL";

  res=strcpy(gbuffer,text); 
  /* Error: Size of text is less than gbuffer */

  return(res);
 }

文字列 text はサイズが gbuffer より大きくなっています。したがって、関数 strcpytextgbuffer にコピーできません。

修正 — 有効な引数を使用

1 つの修正方法として、コピー先の文字列 gbuffer をソース文字列 text 以上のサイズで宣言するとします。

#include <string.h>
 #include <stdio.h>
 
 char* Copy_String(void)
 {
  char *res;
  /*Fix: gbuffer has equal or larger size than text */
  char gbuffer[20],text[20]="ABCDEFGHIJKL";

  res=strcpy(gbuffer,text);

  return(res);
 }

チェック情報

決定可能性:決定不可能

バージョン履歴

R2019a で導入


1 Extracts from the standard "ISO/IEC TS 17961 Technical Specification - 2013-11-15" are reproduced with the agreement of AFNOR. Only the original and complete text of the standard, as published by AFNOR Editions - accessible via the website www.boutique.afnor.org - has normative value.