電動自転車のアンチロック ブレーキ システムを検証するためのテストベンチ構築

自動車業界や建設業界における応用の可能性を秘めたアプローチ

「当初、これまで一度も試みたことがなかったので、インターフェースを通じて Speedgoat と Simulink を接続するのは難しいだろうと考えていました。しかし、MathWorks と Speedgoat の両方からインターフェース ライブラリとドキュメンテーションを利用できたので、予想していたよりもはるかに簡単に作業できました。」

主な成果

  • HIL テストベンチにより、実験室環境で電動自転車のABSを安全かつ信頼性の高い再現可能な方法で検証が可能になり、路上テストでの急ブレーキに伴うリスクを軽減
  • 全体のカスタマイズが可能な自転車モデルはあらゆるタイプの電動自転車や重量配分に対応できるだけでなく、異なるメーカーの既存 ABS システムの統合も実現可能
  • 西スイス応用科学大学フリブール校のチームは自動車業界や建設機械業界にも応用できる専門技術を開発
ブレーキレバー付きのハンドルバー、車輪の回転を模倣するフォニックホイール、ABS、ブレーキキャリパーの力センサーなどを含む、電動自転車モデルを実行するリアルタイム マシンを示す HIL テストベンチのフローチャート。下部の個々のグラフには、シミュレーションの結果が示されています。

HIL テストベンチの設定環境 (上) と検証結果 (下)。

電動自転車は、個人やビジネスのさまざまな用途でますます利用されるようになってきています。こうした車両は安全性が重要事項であるため、電動自転車業界でもアンチロックブレーキシステム (ABS) 技術の導入が始まっています。しかし、電動自転車の ABS をテストするのは難しく、特に路上検証の初期段階では、前輪がロックする急ブレーキは運転者を危険にさらす恐れがあります。

この課題を克服するために、西スイス応用科学大学フリブール校工学部の Emmanuel Viennet 教授は、実験室で電動自転車に搭載された ABS の安全かつ信頼性が高い再現可能な検証を可能にするハードウェアインザループ (HIL) テストベンチを構築することにしました。Viennet 教授のチームは、ゼロから方程式を書き起こして、電動自転車の Simulink® プラントモデルを作成しました。ブレーキキャリパーへの力伝達、ブレーキディスクとパッド間の摩擦係数、サスペンションの動作に関するパラメーターは、ABS を無効にした実際の自転車で実施した計測から特定されました。チームは、シミュレーションされた前輪の速度、減速度、縦方向の加速度が、実際の自転車で得られた結果とほぼ一致していることを発見しました。この検証済み Simulink モデルを基にコードが生成され、Speedgoat® リアルタイムマシンにダウンロードされました。このマシン自体はインターフェースを通じて ABS ハードウェアと接続されています。

物理的なテストベンチには、空気圧シリンダーで操作される油圧式フロントブレーキレバーを備えたハンドルバーが含まれています。センサーがブレーキキャリパーの力を検出し、仮想電動自転車への唯一の入力として機能します。電気モーターとリアルタイムモデルからの信号によって駆動するフォニック ホイールは、前輪の回転をシミュレーションして、ABS 用の速度センサー信号を生成します。さらに、リアルタイム モデルは、電動自転車の加速度を計算し、Speedgoat I/O ドライバー ライブラリを使用して CAN メッセージ経由で ABS ハードウェアに送信することにより、組み込み慣性計測ユニットをシミュレーションします。

この自転車モデルは全体のカスタマイズが可能で、あらゆるタイプの電動自転車や重量配分に対応できます。異なるサプライヤーの既存 ABS システムと統合でき、テストの自動化が可能になります。電動自転車メーカーや ABS メーカーは、これを使用して、多くのテストケースで性能を定量的かつ安全で再現可能な方法で迅速に検証できるようになります。西スイス応用科学大学フリブール校のチームが得た専門知識は、自動車業界や建設機械業界の今後の開発プロジェクトでも活かされていきます。