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2 台のモーター ドライブの機械的な接続

はじめに

さまざまな負荷条件下でモーター ドライブをテストするには、モーター シャフトに、可変かつ双方向の負荷を与える必要があります。さらに、モーターへの電力供給だけでなくエネルギーの回生が行える理想的なモーター ドライブでは、モーターの回転により生じる機械エネルギーを電気エネルギーとして、モーター駆動回路側にエネルギーを戻す働きも必要となります。これらの条件を満たすモーター ドライブとしては、DC2 モデルまたは DC4 モデルのような 4 象限モーター ドライブがあります。これら 2 台のモーター ドライブは、機械シャフト モデルを利用してテストされているモーター ドライブ モデルに、適切に接続してシミュレーションすることができます。

したがって、以下の例では、2 種類のモーター ドライブを表す AC4 モデル、DC2 モデルを接続したモデルで構成されます。AC4 モデルは、三相誘導モーターの直接トルク制御 (DTC) システムです。DC2 モデルは、DC モーターの単相双方向形 DC/DC コンバーター形の制御システムです。このようなシステムでは、1 台のドライブは速度が制御され、他方のドライブはトルク制御が行われています。それぞれのドライブは、後述するように、モーターあるいは発電機としての動作が可能です。DC2 モデルの定格値は 3hp、240V、1800rpm であり、AC4 モデルの定格値は 3hp、380V、60Hz、4 極です。

メモ:

GUI の下部にある [Mechanical input] メニューを利用して、2 台のモーター ドライブを接続することができます。次の図は、モーター発電機の構成におけるスティッフなシャフトでの相互接続をモデル化する方法を示しています。ドライブ 1 (機械的な入力は負荷トルク Tm) の速度出力は、ドライブ 2 (機械的な入力はモーター回転数) の速度入力に接続されますが、ドライブ 2 のトルク出力 Te は、ドライブ 1 の機械的なトルク入力 Tm と接続されます。ここで、係数 Kw は減速比を表します。さらに、慣性モーメント J2 と粘性摩擦係数 F2 は ドライブ 2 のモデルでは無視されるので、ドライブ 1 の慣性モーメント J1 と粘性摩擦係数 F1 に、J2 と F2 の影響を考慮した値を足し合わせて、下図のように J、F を設定する必要があります。

システムの説明

機械的に接続した 2 つのモーター ドライブから構成される完全なシステムを、2 台のモーター ドライブ (AC4 モデルと DC2 モデル) の相互接続関係を表す SimPowerSystems のブロック線図に示します。機械シャフト モデルは、図の 3 番目のサブシステム (図中の右側のサブシステム) に含まれています。このブロックを開くと、機械シャフト モデルの相互接続関係を表すブロック線図に示すように、AC4 モデルと DC2 モデルのモーター回転数が、それぞれ機械シャフト モデルの入力を表す Nm と Nl に接続されていることがわかります。機械シャフト モデルの出力トルク Tl(Mec_T) は、AC4 モデル (モーター) から DC2 モデル (発電機) へ伝達するトルクを表します。したがって、この出力は、AC4 モデルの機械的な入力トルク Tm には、そのまま接続されます。一方、2 台のモーター ドライブ (AC4 モデルと DC2 モデル) の相互接続関係を表す SimPowerSystems のブロック線図に示すように、C2 モデルの機械的な入力トルク Tm には、Mec_T の符号が反転 (-1 倍) されてから接続されます。

2 台のモーター ドライブ (AC4 モデルと DC2 モデル) の相互接続関係を表す SimPowerSystems のブロック線図

機械シャフト モデルの相互接続関係を表すブロック線図

トルク制御される DC2 モデルに対して、AC4 モデルにより速度制御を行う方法

まず、AC4 モデルは、トルク制御下にある発電機として動作する DC2 モデルにより負荷を与えられた、速度制御下の誘導モーターとして動作します。cs_coupling_1 ファイルに含まれているこの設定を使うことで、AC4 モデルの速度ランプと負荷トルクの外乱応答をテストできます。定常状態で、AC4 モデルがモーターとして動作するためには、AC4 モデルの誘導モーターの電気トルクと速度の符号は同じでなければならないことに注意してください。DC2 モデルが発電機として動作するためには、DC2 モデルの DC モーターの電気トルクと速度は、符号が逆でなければなりません。これは、DC2 モーター ドライブに与えられたトルク指令の符号が、速度の符号とは逆であることに従っています。

AC4 モデル ドライブの速度ランプと負荷トルクの外乱に対する応答は、直後に外乱トルクの負荷を伴う、ほぼいっぱいに負荷をかけられた時点での AC4 モーター ドライブの始動の結果を示します。AC4 モデルの誘導モーター回転数は、AC4 モデルの電気トルクの最大制限値が十分大きいので、ランプ状の加速度の指令値 +400rpm/s に対して良好に追従していることがわかります。AC4 モデルの誘導モーター回転数は、t = 1.0 秒において速度指令値 400 rpm になります。その時点で、AC4 モデルの誘導モーターの電気トルクが 10 N.m に低下します。t = 1.4 秒において DC2 のトルク指令は 0 N.m になります。AC4 の電気トルクは、コントローラーにより制御された速度を維持するために、直ちに 0 に低下します。t = 1.9 秒において、トルク指令 +10N.m が DC2 ドライブに供給されます。AC4 は発電機として、DC2 はモーターとして動作します (2 台のドライブの速度とトルクの符号に注目)。最終的に、t = 2.3 秒において、負の回転数ランプ指令値 -400 rpm/s が AC4 モデルに適用されます。再び、AC4 モデルの誘導モーターがランプ状の加速度の指令値に追従していることに注意してください。t = 2.8 秒において新たな定常状態に到達し、AC4 モデルの誘導モーターの電気トルクは -10 N.m に落ち着きます。さらに、AC4 モデル ドライブの速度ランプと負荷トルクの外乱に対する応答は、シャフトによって伝達される機械的なトルクを表します。このトルクは AC4 モデルの誘導モーターの電気トルクに似ていますが、含まれるトルク リップルは少なくなります。

AC4 モデル ドライブの速度ランプと負荷トルクの外乱に対する応答

速度制御される DC2 モデルに対して、AC4 モデルによりトルク制御を行う方法

この例の AC4 モデルは、トルク制御される誘導モーターとして動作します。ただし、負荷としては、速度制御される直流 (DC) モーターを表す DC2 モデルを使用します。完全なシステムを2 台のモーター ドライブ (AC4 モデルと DC2 モデル) の相互接続関係を表す SimPowerSystems のブロック線図に示します。このモデルは、cs_coupling_2 ファイルに含まれています。2 台のドライブを機械シャフトを使って相互に接続する方法は、機械シャフト モデルの相互接続関係を表すブロック線図とまったく同じモデルが利用できます。両方のドライブ (DC2 モデルと AC4 モデル) のすべての制御器の調整パラメーターは、以前の例と同じです。以前と同じ設定条件でテストされます。

2 台のモーター ドライブ (AC4 モデルと DC2 モデル) の相互接続関係を表す SimPowerSystems のブロック線図

DC2 モーター ドライブの速度ランプと負荷トルクの外乱に対する応答は、負荷がかけられたときの DC2 モデルの起動の結果を示します。さらに、負荷を妨げるトルクを利用する場合を示します。DC2 モデルの DC モーター回転数は、小さなオーバーシュートとアンダーシュートが発生していますが、加速度の指令値 400rpm/s に追従していることに注意してください。DC2 でのモーター回転数は、t = 1.0 秒で指令値 400 rpm に達し、t = 1.2 秒で完全に安定します。t = 1.4 秒において、トルク指令 0 N.m が AC4 に供給されます。AC4 のトルクが迅速に応答する様子を観測してください。t = 1.9 秒において、トルク指令 +10N.m が AC4 ドライブに供給されます。DC2 は発電機として、AC4 はモーターとして動作します (2 台のドライブの速度とトルクの符号に注目)。負荷トルクが変化するときに、DC2 モデルの DC モーターの速度のオーバーシュートが観測されます。最終的に、t = 2.3 秒において、負の速度ランプ指令値 -400 rpm/s が DC2 モデルに入力されます。DC2 モデルの DC モーターの速度は良好に追従していますが、小さなオーバーシュートやアンダーシュートが発生しています。t = 2.8 秒において新たな定常状態に到達し、DC2 モデルの誘導モーターの電気トルクは -10 N.m に落ち着きます。さらに、DC2 モーター ドライブの速度ランプと負荷トルクの外乱に対する応答は、シャフトによって伝達される機械的なトルクを表します。このトルクは DC2 モデルの誘導モーターの電気トルクの波形を反転させた場合 (符号を負とした場合) によく似ていますが、含まれるトルク リップルは増加します。

AC4 モデル ドライブの速度ランプと負荷トルクの外乱に対する応答DC2 モーター ドライブの速度ランプと負荷トルクの外乱に対する応答に示す結果から、DC2 ドライブに比べて AC4 ドライブは、速度ランプの応答がより正確で、負荷トルクの外乱がより効果的に除去されていることがわかります。このような結果は、基本的に、AC4 モデルの誘導モーターの高速なトルク応答により得られます。AC4 モデルのコントローラーは、ヒステリシス コンパレーターと高周波スイッチングを使用する、直接トルク制御システムです。一方、DC2 モデルのコントローラーは、サイリスタを使った単相双方向形 DC/DC コンバーターにより構成される制御システムです。しかし、高速なトルク応答が得られる反面、AC4 モデルのトルク リップルの大きさは、DC2 モデルのものよりも大きくなります。

DC2 モーター ドライブの速度ランプと負荷トルクの外乱に対する応答