カスタムの固体座標系の作成
固体座標系
既定で、Solid ブロックは R というラベルの基準座標系端子のみを提供します。Brick Solid、Spherical Solid、Cylindrical Solid などの単純な形状においては、基準座標系の原点が固体の重心と一致します。これは通常、より高度な Extruded Solid 形状や Revolved Solid 形状、あるいはインポートされた固体形状には当てはまりません。
固体の基準座標系
多くの用途では、固体の基準座標系は、ジョイントや拘束の接続、あるいは力やトルクの適用には不十分です。そのような場合は、Rigid Transform ブロックを使用して、Solid ブロックの外部に新しい座標系を作成できます。このブロックにより、並進変換と回転変換を数値で指定し、新しい座標系を定義できるようになります。
もう 1 つの、概してより直感的なアプローチは、Solid ブロックのダイアログ ボックスで座標系作成インターフェイスを使用して、新しい座標系を直接に作成することです。このインターフェイスでは、座標系の原点や軸を、平面、ライン、点などのジオメトリの特徴と揃えることにより、新しい座標系を対話形式で定義できます。
固体の基準座標系とカスタム座標系
座標系作成インターフェイスを開く
座標系作成インターフェイスは、Solid ブロックのダイアログ ボックスからアクセスできます。このインターフェイスを開くには、[Frames] 展開可能領域で [Create] ボタン を選択します。いずれかのブロック パラメーターを変更する場合は、まず [Update Visualization] ボタン を選択して固体の可視化を更新しなければなりません。
ジオメトリに基づく座標系の配置
座標系の定義は、固体のジオメトリ上の特徴に基づいて行うことも、2 つの座標系、つまり基準慣性座標系と主慣性座標系から選択して行うこともできます。基準座標系は固体の既定の座標系です。主慣性座標系は、原点が重心と一致し、座標軸が固体の主軸と一致する座標系です。
ジオメトリ上の特徴によって定義する座標系は、そうした特徴が属する形状に固有のものとなります。座標系の原点を直方体の頂点と一致させた場合、新しい座標系はその特定の直方体形状についてのみ有効です。形状を変更した場合、新しい座標系が依存するジオメトリ上の特徴がなくなるため、この座標系は編集または削除しなければなりません。
座標系作成インターフェイスには、以下を指定するための 3 つのセクションがあります。
座標系原点
主軸
副軸
主軸と副軸
主軸は、残りの 2 つの座標軸がとりうる方向を制約します。これらの座標軸は、主軸の法平面上に配置しなければなりません。副軸の定義に使用する軸またはジオメトリ上の特徴がこの平面上にない場合、副軸はその軸または特徴を法平面上に投影したものになります。
次の図は、このチュートリアルでモデル化する 3 辺押し出しの上面図を示しています。主軸 (z) を表面の法線ベクトル nz と揃え、副軸 (x) をライン ベクトル nx と揃えます。nx は主軸の法線方向ではないため、副軸は nx を主軸の法平面上に投影したものになります。
実践: カスタムの固体座標系の作成
座標系作成インターフェイスを使用して、固体に座標系を作成します。固体の形状は、3 つの不等辺をもつ一般押し出しです。この形状は、座標系作成インターフェイスで指定される主座標軸と副座標軸の違いを示すのに役立ちます。
固体形状の指定
Body Elements ライブラリから、新しいモデルに Extruded Solid ブロックを 1 つ追加します。Extruded Solid ブロックには独自の可視化ユーティリティがあります。固体の形状またはその座標系を可視化するためにブロック線図を更新する必要はありません。
Extruded Solid ブロックのダイアログ ボックスで、以下のパラメーターを指定します。
パラメーター 値 [Geometry] 、 [Cross-section] [0,0;1,0;1,0.5]
可視化ツールストリップで、[Update Visualization] ボタン を選択します。可視化ペインが更新され、指定した 3 辺押し出しが表示されます。
[Toggle visibility of frames] ボタンを選択します。可視化ペインに、固体内のすべての座標系が表示されます。この時点では、固体の座標系は基準座標系 1 つだけです。基準座標系の原点は、押し出しの中央平面における断面座標 [0,0] と一致します。
座標系の作成
Extruded Solid ブロック ダイアログ ボックスの [Frames] 展開可能領域で、[Create] ボタン を選択します。Solid ブロックによって座標系作成インターフェイスが開かれます。
[Frame Name] パラメーターに、「ECF
」 (Extrusion Corner Frame の略) と入力します。座標系の名前によって、Solid ブロックの可視化ペインで新しい座標系が識別されます。これは Solid ブロックの座標系端子のラベルとしても表示されます。
座標系原点の指定
[Frame Origin] で、[At Center of Mass] を選択します。可視化ペインが更新され、固体の重心の位置に新しい座標系が表示されます。この座標系には既定の向きがあり、それは基準座標系の向きです。ラベル ECF によって新しい座標系が示されます。
座標系原点の別の位置も試します。押し出しの頂点の 1 つを使用して、原点の位置を定義します。
[Frame Origin] で、[Based on Geometric Feature] を選択します。このオプションを使用すると、1 つの点、または平面かラインの中心を、座標系原点として選択できます。
可視化ペインで、図に示す頂点を選択します。頂点は押し出しの最上面にあります。視点が [Isometric] に設定されていることを確認してください。[Frame Origin] 領域で、頂点の名前が
Location of top point 3
であることを確認します。[Frame Origin] で、[Use Selected Feature] ボタンを選択します。可視化ペインが更新され、選択したコーナーに座標系原点が表示されます。
主軸の指定
主軸は、残る 2 つの座標軸が主軸の法平面上に来るよう制約します。その意味で、主軸は座標系の向きの設定に主要な役割を果たします。主軸を、断面の斜辺が含まれる表面の法線方向に設定します。
[Frame Axes] 領域の [Primary Axis] で、[Based on Geometric Feature] を選択します。次の各手順で指定する方向は、既定の主軸
+Z
の方向です。可視化ペインで固体を回転して、図に示す表面を選択します。可視化ペインで表面が強調表示され、その法線ベクトルが示されます。[Frame Axes] 領域の [Primary Axis] で、表面の名前が
Surface normal of side surface 3
であることを確認します。[Frame Axes] 領域の [Primary Axis] で、[Use Selected Feature] ボタンを選択します。可視化ペインが更新され、ECF 座標系の z 軸が濃い青で表示されます。これは、選択した表面の法線ベクトルに平行となっています。
副軸の指定
副軸によって、新しい座標系の定義が完成します。主軸と併せることで、副軸は 3 番目の軸の方向を完全に制約します。副軸は、それ自体が主軸の法平面上に配置されるよう制約されています。この拘束の効果を確認するには、主軸に垂直でないラインを基に副軸を定義します。
[Frame Axes] 領域で、[Secondary Axis] パラメーターを
[-X]
に設定します。次の各手順で指定する方向は、[-X]
軸の方向です。[Frame Axes] 領域の [Secondary Axis] で、[Based on Geometric Feature] を選択します。
可視化ペインで固体を回転して、図に示すラインを選択します。[Frame Axes] 領域の [Secondary Axis] で、このラインの名前が
Curve direction of top curve 1
であることを確認します。[Use Selected Feature] ボタンを選択します。可視化ペインが更新され、座標系の x 軸が赤色で、選択したラインと部分的に揃えられて表示されます。
選択したラインは主軸の法平面上にないため、両者は完全には揃いません。したがって副軸は、選択したラインを主軸の法平面上に投影したものになります。
新規座標系の保存
定義した座標系を保存してモデルに確定するには、以下を行います。
[Save] ボタンを選択します。可視化ペインでは、定義した座標系の最終バージョンを使って固体が表示されます。
Solid ブロックのダイアログ ボックスのメイン インターフェイスで、[OK] または [Apply] を選択します。Solid ブロックによって新しい座標系がモデルに確定され、指定した座標系名の付いた新しい座標系端子が表示されます。