流体システムのモデル化
Simscape の流体ドメイン
Simscape™ Foundation ライブラリには、流体システムをモデル化するためのドメインがいくつか含まれています。次の表に、用途に適したドメインの選択に役立つ流体ドメインの概要を示します。
ドメイン | 作動流体 | 熱力学効果 |
---|---|---|
等温流体 | 液体 (少量の混入空気を含む可能性あり) | なし |
熱流体 | 液体 | あり |
二相流体 | 一部液体、一部蒸気 | あり |
気体 | 気体: 完全、半完全、または実存 (単一種) | あり |
湿り空気 | 乾燥空気、水蒸気、微量気体 (または最大 3 種類のその他半完全気体種) の混合体 | あり |
作動流体の指定
Simscape ソフトウェアで物理モデルを作成する際に従わなければならないルールは、物理ネットワークのモデル化の基本原則で説明されています。この節では、流体システムのモデル化に固有のルールを簡単に確認します。
流体要素を含むシステムをモデル化する場合、作動流体を正しく指定することが非常に重要です。
モデルに等温流体要素がある場合、作動流体は液体で、少量の混入空気が含まれる場合もあります。作動流体の特性を定義するには、トポロジ的に区別可能な各回路に Isothermal Liquid Properties (IL) ブロックを付加します。このブロックでは、液体の体積弾性率が一定か、圧力に依存するかを指定できます。流体に混入空気が含まれるかどうか、また、含まれる場合は、その量が一定なのか圧力に依存するのかを指定することもできます。既定の作動流体は水で、体積弾性率は一定、混入空気はゼロです。
Simscape Fluids™ のライセンスがある場合は、Isothermal Liquid Predefined Properties (IL) ブロックを使用して回路内の作動流体を指定することもできます。このブロックでは、事前定義された液体のリストから選択し、さまざまな流体特性の値を指定し、回路内の流体特性を圧力の関数として可視化することができます。
同様に、モデルに熱流体要素がある場合は、トポロジ的に区別可能な各回路に Thermal Liquid Settings (TL) ブロックを付加して作動流体特性を定義します。ブロックは、それぞれ圧力と温度のテーブル形式の関数として指定されている、必要な流体特性を入力として受け取ります。
Simscape Fluids のライセンスがある場合は、Thermal Liquid Properties (TL) ブロックを使用して熱流体回路内の作動流体を指定することもできます。このブロックでは、水、海水、および冷却や除氷に使用するさまざまな混合体を含むリストから、流体の名前を選択できます。
モデルに二相要素がある場合、作動流体は一部液体で一部蒸気です。作動流体の特性を指定するには、トポロジ的に区別可能な各回路に Two-Phase Fluid Properties (2P) ブロックを付加します。このブロックでは、液体と蒸気の特性を、それぞれ圧力と温度のテーブル形式の関数として別々に定義できます。
Simscape Fluids のライセンスがある場合は、Two-Phase Fluid Predefined Properties (2P) ブロックを使用して二相流体内の作動流体を指定することもできます。このブロックでは、水、アンモニア、CO2、および指定範囲内の圧力と温度の他のさまざまな流体を含むリストから、流体の名前を選択できます。
モデルに気体要素がある場合、既定の気体特性は乾燥空気を対象としたものになります。気体特性を変更するには、トポロジ的に区別可能な各回路に Gas Properties (G) ブロックを付加します。
モデルに湿り空気要素がある場合、既定の特性は、乾燥空気、水蒸気、および二酸化炭素 (オプションの微量気体) に対応します。空気混合体の特性を変更するには、トポロジ的に区別可能な各回路に Moist Air Properties (MA) ブロックを付加します。
回路内で流体特性ブロックを省略した場合、その回路内の作動流体にはドメインの既定の特性が仮定されます。各ドメインの既定の流体特性は、それぞれの Foundation ライブラリにある流体特性ブロックの既定のパラメーター値に対応します。
端子における断面積の指定
気体、湿り空気、熱流体、および二相流体ドメインの多くのブロックでは、入口端子と出口端子における断面積をブロック パラメーターとして指定できます。相互に接続する端子には同じ断面積を指定することを推奨します。たとえば、Constant Volume Chamber (G) ブロックの端子 A を Pipe (G) ブロックに接続する場合、Constant Volume Chamber (G) ブロックの [端子 A での断面積] パラメーターを Pipe (G) ブロックの [断面積] パラメーターと同じ値に設定します。
実際には、断面積が厳密に一致する必要はありませんが、大きく異なっていてはなりません。気体、湿り空気、熱流体、および二相流体ドメインのブロックでは、流体速度が温度に影響するため、このルールが特に重要になります。一方のコンポーネントからもう一方に対流によって全エンタルピーが伝達されるため、面積が一致しないと速度に違いが生じ、運動エネルギーの変化が温度の変化として現れます。流量がそれほど大きくなければ、つまりマッハ数が 1 に近くなければ、端子の面積が多少違っていても目立った影響はありません。ただし、流速が速い場合は、端子の面積の違いが予期しない温度差となって現れることがあります。