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フィルターによって生じる遅延と歪みの補正
信号をフィルター処理すると遅延が生じます。つまり入力に対し、出力信号では時間のシフトが行われます。
シフトが一定の場合は、信号を時間シフトすることで遅延を補正できます。
フィルターでは、一部の周波数成分が不均一に遅延することがあります。この現象は位相歪みと呼ばれています。この影響は、関数 filtfilt
を使用してゼロ位相フィルター処理を実行することで補正できます。
1 秒間に 500 Hz でサンプルされた心電図の読み取りを例に取ります。ランダム ノイズを追加します。再現可能な結果が必要な場合は、乱数発生器をリセットします。
Fs = 500;
N = 500;
rng default
xn = ecg(N)+0.1*randn([1 N]);
tn = (0:N-1)/Fs;
75 Hz より高い周波数を阻止するフィルターを使用して、ノイズの一部を除去します。designfilt
を使用して、次数 70 の FIR フィルターを設計します。
Nfir = 70; Fst = 75; firf = designfilt('lowpassfir','FilterOrder',Nfir, ... 'CutoffFrequency',Fst,'SampleRate',Fs);
信号をフィルター処理し、プロットします。結果は元の信号より滑らかですが、遅れます。
xf = filter(firf,xn); plot(tn,xn,tn,xf) title 'Electrocardiogram' xlabel 'Time (s)' legend('Original','FIR Filtered') grid
grpdelay
を使用して、フィルターによって発生する遅延がフィルター次数の半分に等しいことを確認します。
grpdelay(firf,N,Fs)
delay = mean(grpdelay(firf))
delay = 35
データを整列させます。信号の最初の delay
サンプルを削除することでフィルター処理された信号をシフトします。元の信号および時間ベクトルの最後の delay
サンプルを削除します。
tt = tn(1:end-delay); sn = xn(1:end-delay); sf = xf; sf(1:delay) = [];
信号をプロットし、それらが整列していることを確認します。
plot(tt,sn,tt,sf) title 'Electrocardiogram' xlabel('Time (s)') legend('Original Signal','Filtered Shifted Signal') grid
7 次 IIR フィルターを使用して計算を繰り返します。
Niir = 7; iir = designfilt('lowpassiir','FilterOrder',Niir, ... 'HalfPowerFrequency',Fst,'SampleRate',Fs);
信号をフィルター処理します。フィルター処理された信号は元の信号よりノイズが少ないですが、元の信号に対して時間が遅延します。また、フィルターの非線形位相により歪みが生じます。
xfilter = filter(iir,xn); plot(tn,xn,tn,xfilter) title 'Electrocardiogram' xlabel 'Time (s)' legend('Original','Filtered') axis([0.25 0.55 -1 1.5]) grid
フィルターによって生じた群遅延を見ると、遅延が周波数に依存していることがわかります。
grpdelay(iir,N,Fs)
filtfilt
を使用して信号をフィルター処理します。遅延と歪みは事実上削除されています。信号の位相情報をそのまま残すことが不可欠な場合は filtfilt
を使用します。
xfiltfilt = filtfilt(iir,xn); plot(tn,xn) hold on plot(tn,xfilter) plot(tn,xfiltfilt) title 'Electrocardiogram' xlabel 'Time (s)' legend('Original','''filter''','''filtfilt''') axis([0.25 0.55 -1 1.5]) grid