Motor & Drive (System Level)
閉ループ トルク制御を使用した汎用モーターおよびドライブ
ライブラリ:
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System-Level Modeling
説明
Motor & Drive (System Level) ブロックは、閉ループ トルク制御を使用した汎用モーターおよびドライブを表します。このブロックを使用して、ブラシレス モーター (PMSM など) およびドライブ、あるいはより一般的には、さまざまなモーター タイプを使用して実装された牽引システムおよび作動システムをモデル化します。
システム レベルでの高速シミュレーションを可能にするために、このブロックではモーター、駆動エレクトロニクス、および制御を抽象化します。
このブロックでは、トルクと速度の包絡線で定義された範囲のトルクと速度のみが許可されます。既定のブロック構成では、ブロック ダイアログ ボックスで速度のデータ点と対応する最大トルク値のセットとしてこのデータを指定します。
次の図は、デカルト象限の定義を示しています。
次の図は、トルク制御のモーターおよびドライブの標準的なトルクと速度の包絡線を示しています。
正のトルク領域 (第 1 象限と第 4 象限) のトルクと速度の包絡線のみを指定します。正の速度 (第 1 象限、つまりモーター領域) に対してのみ指定した場合は、第 4 象限のトルク包絡線はブロックによって第 1 象限の鏡像として定義されます。モーターが逆方向で動作している場合 (第 2 象限と第 3 象限)、モーターのトルクと速度の包絡線は同じプロファイルになります。
表形式のトルクと速度のデータを指定する代わりに、最大トルクおよび最大出力を指定できます。この場合は、以下に示すようなトルクと速度の包絡線プロファイルになります。残りの 3 つの動作象限はこの同じプロファイルによって制約されます。
このブロックは、機械端子 C から R に作用する正のトルクを生成します。
断続的な過トルクの動作
モーターを短期間過トルク状態にするには、[断続的な過トルクを許可] パラメーターを [はい]
に設定します。この場合は、[連続動作時の最大トルクの包絡線] パラメーターと [断続動作時の最大トルクの包絡線] パラメーターの両方に値を指定する必要があります。内部的に、トルク要求履歴に基づいて、適用するトルク包絡線がブロックによって決定されます。[回復時間] パラメーターに指定した値より長い間、トルク要求が連続動作トルク包絡線を下回っている場合、モーター ドライブを過トルク状態にすることができます。[過トルクの時間制限] パラメーターに指定した値より長い間、過トルクが適用されると、過トルクは無効になります。
過トルクについて、よりアプリケーション固有の管理を行うには、Motor & Drive ブロックで過トルクを無効にし、Motor & Drive ブロックのトルク要求とトルク指令入力端子 Tr の間に Simulink™ でトルク制限を外部的に実装します。
電気損失のモデル化
このブロックでは、電気損失の簡略化した定義と表形式の定義の両方が使用可能です。既定の簡略化した動作では、次の 4 つの項の合計として損失をモデル化します。
DC 電源とモーター ドライブ間の直列抵抗。
トルクと速度に依存しない固定損失 P0。これを使用してコンバーターの固定損失を考慮します。
トルク依存の電気損失 kτ2。ここで、τ はトルク、k は定数です。これは、銅巻線の抵抗による損失を表します。
速度依存の電気損失 kwω2。ここで、ω は速度、kw は定数です。これは、渦電流に起因する鉄損を表します。
トルクおよび速度に対する損失の依存のこの簡略化は、基となるモーター タイプおよびドライブ トポロジに関係なく、初期段階の設計作業では十分な場合があります。
精度を上げる必要がある場合や設計プロセスの後半では、モーター速度と負荷トルクの関数として表形式の損失値を指定できます。このオプションを使用する場合は、シミュレーションを実行するすべての動作象限のデータを指定します。部分的なデータ (たとえば、第 1 象限のモーターの正転領域のみのデータ) を指定した場合、残りの象限では同じパターンの損失が繰り返されるものとみなされます。これは通常、モーターの反転領域では適切ですが、制動/生成の象限では近似になることがあります。このブロックは、テーブルの範囲を超過している速度およびトルクの大きさの損失値の外挿を実行しません。
最後に、単一の効率測定や表形式の損失データの代わりに、表形式の効率データを使用して電気損失を指定できます。このオプションを使用する場合は、シミュレーションを実行するすべての動作象限のデータも指定します。部分的なデータ (たとえば、第 1 象限のモーターの正転領域のみのデータ) を指定した場合、残りの象限では同じパターンの損失が繰り返されるものとみなされます。
ベスト プラクティスとしては、表形式の効率データではなく、速度とトルクの関数として表形式の損失データを指定します。理由は次のとおりです。
速度ゼロまたはトルク ゼロで効率が正しく定義されない。
損失を使用すれば、速度ゼロまたはトルク ゼロでも存在している固定損失も考慮できる。
表形式の効率のオプションを使用する場合は、次のとおりです。
指定した効率値がブロックによって損失に変換され、表形式の損失がシミュレーションで使用されます。
速度ゼロまたはトルク ゼロに対して指定した効率値は無視され、トルクまたは速度がゼロのときは損失がゼロであると想定されます。
このブロックでは線形内挿を使用して損失を判別します。低出力条件で必要なレベルの精度を実現するには、必要に応じて、低い速度および低いトルクに対して表形式のデータを指定します。
このブロックは、テーブルの範囲を超過している速度およびトルクの大きさの損失値の外挿を実行しません。
表形式の損失データまたは効率データを指定する場合は、速度、負荷トルク、および DC 電源電圧の関数としてそのデータを指定することもできます。このオプションは、電源電圧が制御されておらず、シミュレーション中に変化する可能性がある場合に役立ちます。一例として、モーター ドライブの上流に DC-DC レギュレーターがない電気自動車のドライブトレインが挙げられます。Motor & Drive (System Level) ブロックを使用して、モーター ドライブをモデル化し、モーター速度、負荷トルク、および DC 電源電圧の関数として表形式の損失値または効率値を指定します。
効率マップのプロット
このブロックでは、トルクと速度の包絡線と、モーターおよびドライブの定常状態の電気効率のマップを可視化できます。効率マップをプロットするには、次のいずれかを行います。
ブロック線図内のブロックをダブルクリックし、[説明] タブで
[効率マップのプロット]
をクリックします。ブロック線図内のブロックを右クリックし、[電気] コンテキスト メニューで
[効率マップのプロット]
をクリックします。
この効率マップには、[外部電源の直列抵抗] パラメーターおよび [回転子の減衰] パラメーターによって生成された損失は含まれません。
熱効果のモデル化
熱端子を表示して、電力を熱に変換する損失の影響をモデル化できます。熱端子を表示するには、[モデリング オプション] パラメーターを次のどちらかに設定します。
熱端子なし
— ブロックに熱端子は含まれません。熱端子を表示
— ブロックに 1 つの熱保存端子が含まれます。
アクチュエータ ブロックにおける熱端子の使い方の詳細については、回転アクチュエータおよび並進アクチュエータでの熱効果のシミュレーションを参照してください。
故障のモデル化
Motor & Drive (System Level)ブロックの故障をモデル化するには、[故障] セクションで、モデル化する特定の故障に対応するパラメーターの [故障の追加] ハイパーリンクをクリックします。[故障の作成] ウィンドウが開いたら、それを使用して故障のプロパティを指定します。故障のモデル化の詳細については、故障動作のモデル化と故障トリガーを参照してください。
Motor & Drive (System Level)ブロックにより、開放故障をモデル化できます。この故障がトリガーされると、サーボモーターは動作を停止し、ゼロ電流を電源側から受け取り、ゼロ電流が負荷側に供給されます。
変数
シミュレーションの前にブロック変数の優先順位と初期ターゲット値を設定するには、ブロックのダイアログ ボックスまたはプロパティ インスペクターの [初期ターゲット] セクションを使用します。詳細については、ブロック変数の優先順位と初期ターゲットの設定を参照してください。
ノミナル値は、モデル内で予想される変数の大きさを指定する方法を提供します。ノミナル値に基づくシステムのスケーリングを使用すると、シミュレーションのロバスト性が向上します。ノミナル値は、ブロックのダイアログ ボックスまたはプロパティ インスペクターの [ノミナル値] セクションなど、さまざまなソースを使用して指定できます。詳細については、ノミナル値によるシステムのスケーリングを参照してください。
例
仮定と制限
モーター ドライバーは、時定数 Tc を使用してトルク要求を追跡します。
機械的負荷に起因するモーター速度の変動は、モーター トルクの追跡に影響しません。
電気的接続は、正の電圧を提供し、必要な電力を供給または吸収できる電源 (DC 電圧源やバッテリーなど) に常に接続される必要があります。電源のオンおよびオフをシミュレートするには、故障のモデル化を参照してください。