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ギア拘束のモデル化

ギアの拘束および用途

ギア アセンブリは、回転機械内のいたるところに存在します。連結部や駆動部で多くの場合歯車列として現れ、可動ボディ間において一定の比率や角度でトルクを伝達します。ラック アンド ピニオン アセンブリのように、回転運動と並進運動の間の変換といった特別な目的に役立つものもあります。

自動車の差動装置のギア

噛み合ったギアの運動学は、計算の面では、ギアの回転間にある代数的制約から生じます。ギアの歯は物理的にオーバーラップできず、ギア同士は、ピッチ点と呼ばれる接点において同じ瞬間線形速度で動かなければなりません。

ギア拘束ブロックは、モデル内のこれらの拘束の影響を取得します。ブロックは [Gears and Couplings][Gears] ライブラリにあり、以下のものが含まれます。

  • Bevel Gear Constraint — 直角または一般角で交わる交差回転軸をもつ、通常は断面が円錐形の 2 つのギアを組み合わせます。かさ歯車のアセンブリは、回転翼航空機のドライブトレインで広く使用されており、ある角度で取り付けられたローター シャフト間でトルクを伝達します。

  • Common Gear Constraint — 内接または外接の噛み合わせと、平行な回転軸をもつ、通常は断面が円筒形の 2 つのギアを組み合わせます。一般的ギアのアセンブリは、自動車のトランスミッションにおいて、多くの場合は所定のトルク比でエンジンから車輪に動力を伝達する遊星歯車列として使用されています。

  • Rack and Pinion Constraint — 回転するピニオンと並進するラックを、それぞれの運動軸を直角に向かい合わせて組み合わせます。ラック アンド ピニオンのアセンブリは、パワー ステアリング システムで広く使用されています。ハンドルの回転をタイ ロッドの並進に変換することで、ステアリング アームと車輪の向きが変わります。

  • Worm and Gear Constraint — 交差しない回転軸を直角に向かい合わせてウォームとギアを組み合わせます。ウォーム ギアのアセンブリは、太陽光追尾装置に組み込まれる旋回ドライブの基礎となります。この装置は、太陽を追尾して、ソーラー パネル アレイに照射する太陽光の強度を最大化するように設計されています。

運動学的ループとしてのギア アセンブリ

トポロジの点から見ると、ギア アセンブリは閉連鎖または閉じた "ループ" を形成しています。単純なループは 2 つ以上のギアで構成されます。ここではギアという用語を、ウォーム、ピニオン、ラック、およびギアを保持するための固定具を含めて大まかに使用しています。ギアは、一方の端でジョイントを介して固定具に連結され、もう一方の端でギア拘束を介して互いに連結されます。

単純なギアの連鎖

ジョイントは、噛み合わせる前のギアで使用可能な自由度を定義します。自由度によって、ギアが行うことのできる運動のタイプとそれぞれの運動軸が符号化されます。ギア拘束は、ギアを組み合わせて、互いに噛み合っているかのようにギアの (ピッチ) 半径や歯数から決まる速度比でギアが動くようにします。

より複雑なモデル トポロジが可能です。遊星歯車列では、輪歯車によって 2 番目の運動学的ループがモデルに追加されます。枠に取り付けられた遊星歯車によって、さらに多くの運動学的ループが追加されます。ただ、ギア アセンブリがどれほど独特であっても、モデルは、本質的に少なくとも 1 つの運動学的ループを含まなければなりません。

遊星歯車の運動学的ループ

ギア アセンブリの制限

ギア拘束は、ギアの接続座標系の位置と向きに特別な制限を課します。これらの制限は、それぞれの回転軸周りのギアの運動を組み合わせる噛み合わせ拘束に追加して設けられており、ギアが常に噛み合った配置となるよう確保するために役立ちます。たとえば、Common Gear Constraint ブロックでは以下が必要です。

  • z 軸間の距離がギアの中心間の距離と等しいこと。

  • follower 座標系の原点が base 座標系の xy 平面上にあること。

  • base 座標系と follower 座標系の z 軸が同じ方向を指していること。

ギア拘束ブロックはアセンブリの制限を強制しますが、これは、ギアを最初に噛み合わせて配置するモデル アセンブリの間のみです。シミュレーションが開始されると、ギアの配置が引き続きアセンブリ要件を満たしていることを確認するのはモデルの役割となります。このときギア拘束ブロックは噛み合わせ拘束を強制しますが、アセンブリの拘束については、ギアが有効な構成を維持していることを確認するための監視だけになります。

Rigid Transform ブロックを使用してギアの接続座標系を適切に配置する方法を示す例は、以下を参照してください。

ギアのピッチ円

ギア拘束は、ピッチ円の寸法を用いてパラメーター化されます。ピッチ円は、ギアやウォームと中心を共有し、歯の接点に接する架空の円です。それぞれのギアとウォームにピッチ円があります。次の図は、外接および内接の噛み合いをもつ平歯車のピッチ円を示しています。パラメーター RB および RF は、ギアのピッチ半径を表します。

ギアのジオメトリのモデル化

標準の固体形状を使用して、ギア、ウォームおよびラックを近似することができます。ギアおよびウォームのピッチ半径と等しい半径をもつ円柱を使用します。かさ歯車には円錐を、ラックの形状には直方体を使用できます。次の図は、円柱に簡略化された平歯車のジオメトリの例を示しています。標準の固体形状を使用したボディのモデル化の経験がない場合は、単純なリンクのモデル化を参照してください。

より詳細なジオメトリには、Extruded Solid ブロックを使用します。この形状では、ギアやラックの歯をもった断面形状を指定できます。Extruded Solidブロックは、断面を法線軸に沿ってスイープすることで 3 次元押し出しを生成します。次の図は、一般押し出しとしてモデル化された平歯車のジオメトリの例を示しています。Extruded Solid ブロックを使用して単純なボディをモデル化する方法を示す例は、押し出しおよび回転のモデル化を参照してください。

正確なジオメトリのために、STEP ファイルまたは STL ファイルを使用して、File Solid ブロックに 3 次元形状を読み込むことができます。STEP ファイルまたは STL ファイルは外部ソースから入手しなければなりません。ギア、ウォーム、ラックの CAD モデルがある場合は、STEP 形式または STL 形式でエクスポートして Simscape™ Multibody™ ソフトウェアで使用できる可能性があります。次の図は、STEP ファイルを介して CAD モデルからインポートされた平歯車のジオメトリの例を示しています。

ギア拘束の制限

ギア拘束ブロックによって提供される物理モデルは理想化されています。ギアの摩擦、慣性、およびバックラッシュは無視されます。シャフト ジョイントを表すジョイント ブロックで減衰係数を指定することにより、ギア シャフトに粘性減衰を追加します。シャフト ジョイント ブロックは、通常、ギア シャフトのボディと歯車枠ボディの間にあります。さまざまな固体ブロック、Inertia ブロック、または General Variable Mass ブロックを使用してギアのボディをモデル化することによって、ギアに慣性を追加します。

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