複動式アクチュエータのモデル化
この例では、複動式アクチュエータを Simscape™ Multibody™ と Simscape を使用してモデル化する方法を説明します。Simscape Multibody はシリンダーの機械システムをモデル化し、Simscape は油圧システムをモデル化します。Translational Multibody Interface ブロックを使用して、2 つのシステムを接続できます。
シリンダー モデル
図はシリンダーを、半縮小、全縮小、全伸張の 3 つの構成で示しています。
システムの機械部分は Simscape Multibody でモデル化できます。たとえば、シリンダーとピストンをモデル化するには、Revolved Solid (Simscape Multibody) ブロックと Cylindrical Solid (Simscape Multibody) ブロックを使用できます。ピストンの並進自由度を指定するには、Prismatic Joint (Simscape Multibody) ブロックを使用します。チャンバー A および B の長さを簡単に計算するには、ジョイントの base 座標系 (B) と follower 座標系 (F) を、チャンバー A の左側内表面の中央とピストンの左側表面の中央にそれぞれ付加します。B 座標系と F 座標系の Z 軸は揃っていて、いずれもチャンバー B 方向を向いていることを確認してください。
この表現法を使用すると、チャンバー A の長さ はジョイント ブロックの位置出力で、チャンバー B の長さ はストローク長と の差に等しくなります。ピストンがシリンダーの端を超えて動かないようにするため、Prismatic Joint ブロックの位置の上限と下限を指定できます。
メモ
ジョイント座標系を目的の場所に付加する前に、カスタム座標系を作成しなければなりません。詳細については、カスタムの固体座標系 (Simscape Multibody)を参照してください。
次の図は、前述の複動式シリンダー モデルのブロック線図を示しています。この例では、2 つの Translational Mechanical Converter (IL) ブロックを使用して、シリンダーのチャンバー A および B をモデル化しています。Translational Multibody Interface ブロックにより Translational Mechanical Converter (IL) ブロックが Prismatic Joint ブロックに接続されています。Translational Multibody Interface ブロックを使用する方法の詳細については、Simscape ネットワークと Simscape Multibody のジョイントとの接続を参照してください。
チャンバー A では、端子 [A] での圧力によりピストンが 0 からストローク長まで動きます。ピストンの変位は、Prismatic Joint ブロックの位置出力と等しくなります。チャンバー A をモデル化するには、以下を行います。
Translational Multibody Interface ブロックの端子 [C] および [R] を、上の Translational Mechanical Converter (IL) ブロックの端子 [C] および [R] にそれぞれ接続します。
Translational Mechanical Converter (IL) ブロックで、[インターフェイスの変位] を
[Multibody のジョイントから入力信号を提供]
に設定し、端子 [p] を有効にします。Prismatic Joint ブロックと Translational Mechanical Converter (IL) ブロックの端子 [p] を接続します。
チャンバー B では、端子 [A] での圧力によりピストンが 0 から負のストローク長まで動きます。そのため、既定の方向を変更し、下の Translational Mechanical Converter (IL) ブロックの入力位置信号にオフセットを追加する必要があります。このオフセットは - と等しくなります。
下の Translational Mechanical Converter (IL) ブロックで、[機械の方向] を
[A での圧力により、R は C を基準として負方向に変位]
に設定します。[インターフェイスの変位] を
[Multibody のジョイントから入力信号を提供]
に設定し、端子 [p] を有効にします。PS Constant ブロックを追加し、シリンダーのストローク長として定数を指定します。
ブロック線図に示すように、PS Subtract ブロックを追加し、PS Constant ブロックと Prismatic Joint ブロックに接続します。PS Subtract ブロックの出力は - と等しいことに注意してください。
ピストンの移動を制限するには、以下を行います。
Prismatic Joint ブロックの [Limits] セクションで、[Specify Lower Limit] と [Specify Upper Limit] パラメーターを選択します。
[Specify Lower Limit] セクションの [Bound] パラメーターは、ジョイント ブロックの座標系 [B] と [F] 間の最小距離を表します。この例では、[Bound] パラメーターを 0 m に指定します。
[Specify Upper Limit] セクションの [Bound] パラメーターは、Prismatic Joint ブロックの座標系 [B] と [F] 間の最大距離を表します。この例では、[Bound] パラメーターをシリンダーのストローク長に指定します。
複動式シリンダー システムは多くの用途に使用できます。たとえば、ダンプ トレーラーで複動式シリンダーを使用して、ダンプ荷台を昇降させるはさみホイスト機構を作動させることができます。詳細については、油圧インターフェイス - 油圧シリンダーをもつダンプ トレーラー (Simscape Multibody)を参照してください。はさみホイスト内の Double-Acting Hydraulic Cylinder ブロックのマスクには、機械と油圧のサブシステムがあり、Translational Multibody Interface ブロックで接続されています。機械サブシステムの Prismatic Joint ブロックは、[機械の方向] パラメーターの設定が反対になっている、油圧サブシステムの 2 つのアクチュエータ Head Chamber と Bottom Chamber に位置情報を提供します。Constant ブロック C は Head Chamber アクチュエータに位置信号オフセットを提供します。これは、Bottom Chamber がデッド ボリュームにある (位置 p = 0 である) 場合、Head Chamber は最大ストロークの位置にあるためです。
参考
Rotational Multibody Interface | Translational Multibody Interface
関連するトピック
- Simscape ネットワークと Simscape Multibody のジョイントとの接続
- 油圧インターフェイス - 油圧シリンダーをもつダンプ トレーラー (Simscape Multibody)