ラグランジュ乗数構造体
制約付き最適化は、1 次の最適性の尺度で説明しているようにラグランジュ乗数の集合を含みます。ソルバーは推定されたラグランジュ乗数を構造体に出力します。慣例的にラグランジュ乗数の記号はギリシャ文字の lambda (λ) であるため、この構造体は lambda
と呼ばれます。この構造体では乗数を以下のタイプのフィールドに分割しています。
lower
下限upper
上限eqlin
線形等式ineqlin
線形不等式eqnonlin
非線形等式ineqnonlin
非線形不等式soc
(2 次錐制約に関連)
たとえば、ラグランジュ乗数構造体の非線形不等式フィールドにアクセスするには、lambda.inqnonlin
と入力します。下限に関連するラグランジュ乗数の 3 要素目にアクセスするには、lambda.lower(3)
と入力します。
ラグランジュ乗数構造体のコンテンツはソルバーにより異なります。たとえば、線形計画法は非線形性をもたないため、eqnonlin
または ineqnonlin
のフィールドはもちません。適用可能な各ソルバー関数のリファレンス ページには、「出力」見出しの下にラグランジュ乗数構造体の説明が記述されています。
線形不等式制約と非線形不等式制約および範囲指定がある非線形問題の解を求めるラグランジュ乗数構造体を確認します。
lb = [-3 -3]; % lower bounds ub = [3 3]; % upper bounds A = [1 1]; % linear inequality x(1) + x(2) <= 1 b = 1; Aeq = []; beq = []; x0 = [-1 1]; fun = @(x)100*(x(2) - x(1)^2)^2 + (1 - x(1))^2; % Rosenbrock function nlcons = @(x)deal(x(1)^2 + x(2)^2 - 1,[]); % nonlinear inequality options = optimoptions('fmincon','Display','off'); [x,fval,exitflag,output,lambda] = ... fmincon(fun,x0,A,b,Aeq,beq,lb,ub,nlcons,options); disp(lambda)
eqlin: [0×1 double] eqnonlin: [0×1 double] ineqlin: 0.3407 lower: [2×1 double] upper: [2×1 double] ineqnonlin: 1.7038e-07
ラグランジュ乗数構造体の解釈を以下に示します。
線形等式制約と非線形等式制約がないため、
lambda.eqlin
およびlambda.eqnonlin
フィールドのサイズは 0 になります。lambda.ineqlin
フィールドの値は0.3407
です。これは、線形不等式制約がアクティブであることを示します。線形不等式制約はx(1) + x(2) <= 1
です。解で制約がアクティブになっている、つまり解によって不等式が等式になることを確認します。x(1) + x(2)
ans = 1.0000
lambda.lower
およびlambda.upper
フィールドの値を確認します。lambda.lower
ans = 1.0e-07 * 0.2210 0.2365
lambda.upper
ans = 1.0e-07 * 0.3361 0.3056
これらの値は実質的に 0 です。これは、解が範囲に近くないことを示します。
lambda.ineqnonlin
フィールドの値は1.7038e-07
です。これは、この制約がアクティブでないことを示します。制約 (ここではx(1)^2 + x(2)^2 <= 1
) を確認します。x(1)^2 + x(2)^2
ans = 0.5282
非線形制約関数の値が制限値に近くないため、ラグランジュ乗数はほぼ 0 になります。