Main Content

固定小数点デジタル フィルターの実現

はじめに

この章では、Simulink® ブロックと Fixed-Point Designer™ ソフトウェアを使用して固定小数点デジタル フィルターを実現する方法を調べます。

Fixed-Point Designer ソフトウェアは、固定小数点ハードウェアにアルゴリズムが実装される制御システム、信号処理および他の分野のニーズに応えます。信号処理では、デジタル フィルターは一連の入力数値を一連の出力数値に変換する計算アルゴリズムです。このアルゴリズムは、出力信号が周波数領域または時間領域の制約を満たすように設計されています (適切な周波数コンポーネントが渡され、不適切なコンポーネントは拒否されます)。

一般に、離散伝達関数のコントローラーがデジタル フィルターの形態です。ただし、デジタル コントローラーには、離散伝達関数のほかにルックアップ テーブルなどの非線形関数が含まれていることがあります。このガイドでは、離散伝達関数を「デジタル フィルター」と呼んでいます。

メモ

信号処理の用途や DSP チップへの展開に適した浮動小数点や固定小数点の各種フィルターを設計および実装するには、DSP System Toolbox™ ソフトウェアを使用します。

実現とデータ型

数値、計算、および状態格納に無限の精度と範囲がある理想の世界では、同じシステムをいくつでも無限に実現できます。理論上、これらの実現はすべて同一です。

倍精度の数、計算、および状態格納の現実的な世界では、浮動小数点データ型の有限の精度と範囲によって若干の非線形性が生じます。したがって、特定のシステムのそれぞれの実現は異なる結果になります。ただし、ほとんどの場合、これらの違いはわずかです。

精度と範囲に限界がある固定小数点数の世界では、実現結果の違いが非常に大きくなることがあります。したがって、結果が正確に表現されるように、各実現要素のデータ型、ワード サイズ、スケーリングを慎重に選ぶ必要があります。この選択に役立つように、組み込みプロセッサのターゲットでは固定小数点演算を使用して動的システムをモデル化するときの設計規則について説明しています。