AUTOSAR Classic Platform と Adaptive Platform との比較

AUTOSAR 規格は、"AUTOSAR プラットフォーム" と呼ばれるソフトウェアアーキテクチャの次のバリエーションを定義します。Classic Platform (CP) と Adaptive Platform (AP) です。

AUTOSAR ソフトウェアコンポーネントを設計し実装するために使用するプラットフォームを選択する場合は、ガイダンスとして次の表の情報を確認してください。

AUTOSAR プラットフォームの比較

目的または機能	Classic Platform	Adaptive Platform
ユースケース	組み込みシステム	高性能な計算、外部リソースとの通信、および柔軟な展開
プログラミング言語	C	C++
オペレーティングシステム	ベアボード	POSIX
リアルタイム要件	ハード	ソフト
計算能力	低	高
通信	信号ベース	イベントベース、サービス指向
安全とセキュリティ	サポートあり	サポートあり
動的更新	使用できません	インクリメンタルな展開とランタイム時の構成変更
標準化のレベル	高 — 詳細化された仕様	低 — API とセマンティクス
アジャイル開発	なし	あり

Classic Platform

Classic Platform は、車両ネットワークに接続された他の電子コントロールユニット (ECU) からの入力信号と情報に基づく電気的な出力信号を制御する、深く組み込まれた ECU の要件に対応します。通常、特定の種類の車両の制御ソフトウェアを設計し実装すると、それは車両の寿命の間は変更されません。

ソフトウェアアーキテクチャのランタイム環境 (RTE) 層は、アプリケーション層の AUTOSAR ソフトウェアコンポーネント間、および AUTOSAR ソフトウェアコンポーネントと基本ソフトウェア層によって提供されるサービスとの間の通信を処理します。基本ソフトウェア層は次のもので構成されます。

システム、メモリ、通信サービスなどのサービス
デバイスドライバー
ECU の抽象化
マイクロコントローラーの抽象化

Classic Platform は仮想機能バス (VFB) を使用して、ハードウェアに依存しない開発と AUTOSAR アプリケーションソフトウェアの使用をサポートします。このバスは特定の ECU 向けの RTE の抽象表現で構成され、アーキテクチャのアプリケーション層の AUTOSAR ソフトウェアコンポーネントをアーキテクチャインフラストラクチャから分離します。AUTOSAR ソフトウェアコンポーネントとバスは、専用のポートを使用して通信します。コンポーネントのポートをシステム ECU の RTE 表現にマッピングすることによって、アプリケーションを設定します。

Adaptive Platform

Adaptive Platform は分散コンピューティングであり、サービス指向アーキテクチャ (SOA) です。このプラットフォームは、高性能のコンピューティング、メッセージベースの通信メカニズム、自動運転やインフォテインメントシステムなどのアプリケーションをサポートするための柔軟なソフトウェア構成を提供します。このプラットフォームをベースとするソフトウェアにより、次のことが可能です。

厳密な整合性とセキュリティ要件を満たす
環境認知と動作応答プランニングに対応する
車両を外部システムのバックエンドまたはインフラストラクチャに統合する
外部システムの変更に対応する (車両の寿命の間にソフトウェアの変更が可能なため)

ソフトウェアアーキテクチャの RTE 層には C++ 標準ライブラリが含まれます。これはアプリケーション層の AUTOSAR ソフトウェアコンポーネント間、および AUTOSAR ソフトウェアコンポーネントと基本ソフトウェア層によって提供されるソフトウェアとの間の通信をサポートします。基本ソフトウェア層はシステムの基盤ソフトウェアおよびサービスから構成されます。アプリケーション層の AUTOSAR ソフトウェアコンポーネントは、イベントドリブンメッセージに応答することで、相互に、プラットフォーム外のサービス、基盤ソフトウェアおよびサービスと通信します。ソフトウェアコンポーネントは、C++ アプリケーションプログラミングインターフェイス (API) を使用して基本ソフトウェア層のソフトウェアと相互作用します。

基盤ソフトウェアには POSIX オペレーティングシステムと、次のものを含むシステム管理タスクのためのソフトウェアが含まれます。

実行管理
通信管理
時間同期
ID アクセス管理
ログ記録と追跡

サービスの例には次のものがあります。

更新および構成管理
診断
信号からサービスへのマッピング
ネットワーク管理

Adaptive Platform アプリケーションの単一のインスタンスが実行される ECU ハードウェアが "マシン" です。マシンは、1 つ以上のチップまたは仮想のハードウェアコンポーネントである可能性があります。ハードウェアは、1 つ以上のマシンをホストする単一のチップであることも、単一のマシンをホストする複数のチップであることもあります。

Adaptive Platform は、ハードウェアに依存しない AUTOSAR アプリケーションソフトウェアの開発と使用をサポートします。特定の ECU (マイクロコントローラー、高性能マイクロコントローラー、仮想マシン) 向けの RTE の抽象表現は、アーキテクチャのアプリケーション層の AUTOSAR ソフトウェアコンポーネントをアーキテクチャインフラストラクチャから分離します。AUTOSAR ソフトウェアコンポーネントと基盤ソフトウェアおよびサービスは、専用のポートを使用して通信します。コンポーネントのポートをシステム ECU の RTE 表現にマッピングすることによって、アプリケーションを設定します。