Main Content

このページの内容は最新ではありません。最新版の英語を参照するには、ここをクリックします。

風力発電プラント - 同期発電機および全スケール コンバーター (タイプ 4) 詳細モデル

この例では、タイプ 4 風力タービンの詳細モデルを使用した、10 MW 風力発電プラントを示します。

Richard Gagnon and Jacques Brochu (Hydro-Quebec)

1. タイプ 4 風力タービンのシミュレーション方法

表す周波数の範囲によって、Specialized Power Systems では現在 3 つのシミュレーション方法を利用して、電力網に接続された VSC ベースのエネルギー変換システムをモデル化することができます。

この例で示されるような詳細モデル (離散)。詳細モデルには、パワー エレクトロニクス IGBT コンバーターの詳細表現が含まれています。この例で使用される 2000 Hz と 3000 Hz のスイッチング周波数で受け入れ可能な精度を達成するために、モデルは比較的小さなタイム ステップ (2 マイクロ秒) で離散化しなければなりません。このモデルは、比較的短期間 (一般的には数百ミリ秒~ 1 秒) の高調波および制御システムの動特性の観察に適しています。

Renewable Energy examples ライブラリの power_wind_type_4_avg モデルで示されるような "平均モデル (離散)"。このタイプのモデルでは、IGBT 電圧源コンバーター (VSC) は、スイッチング周波数の 1 サイクル全体で平均した AC 電圧を生成する等価な電圧電源によって表されます。類似の方法が DC-DC コンバーターに使用されます。平均モデルでは高調波は表現されませんが、制御システムと電力システムの相互作用から生じるダイナミクスは保持されます。このモデルでは、はるかに大きなタイム ステップを使用できるので (一般的には 50 マイクロ秒)、数秒間のシミュレーションが可能になります。

Renewable Energy example ライブラリの "power_wind_dfig" モデルで示されるような "フェーザ モデル (連続)"。このモデルは、長期 (数十秒から数分) にわたり低周波数の電気機械的振動のシミュレーションを実行するのに適しています。フェーザ シミュレーション法では、正弦波の電圧と電流は、システムの定格周波数 (50 Hz または 60 Hz) でのフェーザ数量 (複素数) に置き換えられます。これは、過渡安定性ソフトウェアで使用されるものと同じ技法です。

2. 説明

10 MW 風力発電プラントは、25 kV の配電システムに接続された 5 つの 2 MW 風力タービンで構成されており、30 km の 25 kV フィーダーを通して 120 kV 送電系統に電力を搬送します。

この例で提示されるタイプ 4 風力タービンは、ダイオード整流器に接続された同期発電機、DC-DC IGBT ベースの PWM 昇圧コンバーターおよび DC/AC IGBT ベースの PWM コンバーターから構成されています。タイプ 4 テクノロジーでは、タービンの速度を最適化することで、低速の風から最大のエネルギーを引き出すことが可能になります。また、突風のときにタービンにかかる機械的なストレスを最小化します。

この例では、風速は 15 m/s で一定に保たれます。DC-DC コンバーターの制御システムを使用して、速度は 1 pu に保たれます。風力タービンで生成される無効電力は、0 Mvar に制御されます。

"Wind Turbine Type 4" ブロックを右クリックし、[マスク内を表示] を選択して、モデルがどのように構築されているかを確認します。モデルの離散化に使用されるサンプル時間 (Ts=2 マイクロ秒) は、[モデル プロパティ] の初期化関数で設定されます。

"Wind Turbine Type 4" ブロックのメニューを開き、発電機、コンバーター、タービン、動力伝達装置および制御システムのデータを確認します。[表示] メニューの [Turbine data for 1 wind turbine] を選択し、[Display wind turbine power characteristics] をオンにして [適用] をクリックします。タービンの Cp 曲線が Figure 1 に表示されます。タービンの電力、先端速度比 lambda および Cp の値は、風速の関数として Figure 2 に表示されます。15 m/s の風速に対し、タービンの出力電力は定格電力の 1 pu、ピッチ角は 8.8°、発電機速度は 1 pu です。

3. シミュレーション

この例では、タイプ 4 風力タービンの定常状態での動作と、120 kV システムでの遠隔故障の結果生ずる電圧低下に対する動的応答を観察します。電圧源をモデル化した "120 kV" ブロックを開き、6 サイクル 0.25 pu の電圧低下が t=0.03 秒にプログラムされていることを確認します。

シミュレーションを開始します。電圧と電流の波形を Scope ブロックで観察します。シミュレーションの開始時に、初期状態の諸変数を含む変数 "xInitial" が ([モデル プロパティ] で指定される "WindFarmType4.mat" ファイルから) 自動的に読み込まれるため、シミュレーションは定常状態で開始されます。

はじめに、タイプ 4 風力発電プラントは 10 MW を発電します。これに対応するタービン速度は、発電機同期速度の 1 pu です。DC 電圧は 1100 V に制御され、無効電力は 0 Mvar に保たれます。t=0.03 秒で正相電圧が突然 0.75 p.u. に落ち、DC 母線電圧の増加と、タイプ 4 風力タービンの出力電力低下が生じます。電圧低下の間、制御システムは DC 電圧と無効電力を指令値 (1100 V、0 Mvar) に制御しようと試みます。故障が消去された後にシステムは回復します。

4. 初期条件の再生成

この例は、シミュレーションが定常状態で開始されるようにすべて初期化された状態でセットアップされています。そうしないと、風力タービン モデルの電気機械的部分の長い時定数と、比較的動作の遅い制御器のため、定常状態に達するまで数十秒待機しなければなりません。初期条件は、"WindFarmType4.mat" ファイルに保存されています。シミュレーションを開始すると、InitFcn コールバック ([モデル プロパティ]、[コールバック] 内) が、この .mat ファイルの内容 ([シミュレーション]、[コンフィグレーション パラメーター] メニューの [初期状態] パラメーターで指定される変数 "xInitial") をワークスペースに自動的に読み込みます。

このモデルを変更するか、電力コンポーネントのパラメーター値を変更すると、"xInitial" 変数に保存された初期条件は無効になり、Simulink® によりエラー メッセージが表示されます。変更したモデルの初期条件を再生成するには、以下に示した手順に従います。

1. [コンフィギュレーション パラメーター] ペインで、[初期状態] パラメーターをオフにして、[最終状態] パラメーターをオンにします。

2. 120 kV 三相電圧源のメニューで [Time variation of] パラメーターを [なし] に設定して、電源電圧ステップを無効にします。

3. 定常状態に達するのに必要な時間を短縮するため、タービン発電機グループの慣性を一時的に減少させます。Wind Turbine Type 4 のメニューを開き、[Drive train data] および [Generator data] で、慣性定数 H を 10 で除算します。

4. シミュレーション終了時間を 5 秒に変更します。60 Hz 電圧源位相角と位相のそろった初期条件を生成するには、終了時間は 60 Hz サイクルの整数でなければなりません。

5. シミュレーション モードを "ノーマル" から "アクセラレータ" に変更します。

6. シミュレーションを開始します。シミュレーションが完了したら、Scope ブロックに表示された波形を観察して、定常状態に到達したことを確認します。最終状態は、時間と共に "xFinal" 構造体に保存され、次回のシミュレーションの初期状態として使用できます。次の 2 つのコマンドを実行すると、これらの最終状態が "xInitial" にコピーされ、この変数が新しいファイル (MyModelInit.mat) に保存されます。

>> xInitial=xFinal;
>> save MyModelInit xInitial

7.[モデル プロパティ] ペインの [InitFcn] ウィンドウで、初期化コマンドの最初の行を "load MyModelInit" に置き換えます。次にこのモデルでシミュレーションを開始したときに、MyModelInit.mat ファイルに保存されている変数 xInitial がワークスペースに読み込まれます。

8. [コンフィギュレーション パラメーター] ペインで、[初期状態] をオンにします。

9. [Wind Turbine Generator] および [Drive train data] で、慣性定数 H を元の値にリセットします。

10. シミュレーションを開始し、モデルが定常状態で開始したことを確認します。

11. 120 kV 三相電圧源のメニューで、[Time variation of] パラメーターを [振幅] に戻します。

12. シミュレーション終了時間とシミュレーション モードを元の値に戻します (0.2 秒とノーマル)。

13. モデルを保存します。