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UPFC (詳細モデル)

この例では、48 パルス形 GTO ベースの統合電力潮流コントローラー (500 kV、100 MVA) の詳細モデルを示します。

Pierre Giroux ; Gilbert Sybille (Hydro-Quebec, IREQ)

説明

統合電力潮流コントローラー (UPFC) は、500 kV 送電システムの電力潮流を制御するために使用されます。75 km の送電線 L2 の左側、500 kV の母線 B1 と B2 の間にある UPFC は、母線 B1 での電圧を制御しつつ、母線 B2 を流れる有効電力と無効電力を制御するために使用されます。UPFC は、100 MVA、3 レベル、48 パルス形の GTO ベースのコンバーター 2 つから構成されており、1 つは母線 B1 で分路に接続され、もう 1 つは母線 B1 と B2 の間で直列に接続されています。分路と直列のコンバーターは、DC 母線を通して電力を交換できます。直列コンバーターは、ライン L2 と直列のグランドに対するライン基準電圧 (28.87kV) の最大 10% を投入できます。

この 2 つのコンバーターは、以下の 3 つのモードで操作できます。

  • 分路コンバーターと直列コンバーターが DC 母線を通じて相互接続されている場合の、"統合電力潮流コントローラー (UPFC)" モード。分路コンバーターと直列コンバーターの DC 母線間の切断スイッチが開かれると、2 つの追加モードが使用可能となります。

  • 母線 B1 での電圧を制御する "自励式無効補償装置 (STATCOM)" として動作する分路コンバーター

  • 供給電圧の位相を電流と直交状態に保ちつつ、供給電圧を制御する "静的同期直列コンデンサ (SSSC)" として動作する直列コンバーター

動作モードは、基準電圧や基準電力の値とともに、"UPFC GUI" ブロックを用いて変更が可能です。

高調波が低減されるコンバーターの動作原理は、「三相 48 パルス形 GTO コンバーター」という別の例で説明されています。この power_48pulsegtoconverter モデルは、例の Power Electronics Models ライブラリで利用できます。2 つのコンバーターが UPFC モードで操作される場合、分路コンバーターは STATCOM として動作します。吸収または生成された無効電力を制御しつつ、DC 母線を通して直列コンバーターへの有効電力の伝送を可能にすることで、母線 B1 の電圧を制御します。無効電力の変化は、DC 母線電圧を変化させることで得られます。4 つの 3 レベル分路コンバーターは一定の導通角 (σ = 180-7.5 = 172.5°) で動作し、したがって、擬似正弦曲線の 48 ステップ電圧波形を生成します。最初の主要な高調波は第 47 次と第 49 次となります。

UPFC モードで動作する場合、直列供給電圧の大きさは 導通角σ を変化させることによって変わり、これによって分路コンバーターよりも高い高調波成分が生成されます。この例で説明されているように、直列コンバーターが SSSC モードで動作するときは "真の" 48 パルス波形が生成されます。

直列コンバーターにより 0 電圧 (4 つの変圧器のコンバーター側での 0 電圧) が生成されるときに母線 B2 を流れる実電力は、P=+870 MW および Q=-70 Mvar です。UPFC モードでは、直列供給電圧の振幅と位相角の両方を変えることが可能で、このため P と Q を制御することができます。UPFC の制御可能領域は、供給電圧を最大値 (0.1 pu) に保ったまま位相角を 0°から 360°まで変化させることによって得られます。結果として得られる P-Q の軌跡を表示するには、[Show UPFC Controllable Region] をダブルクリックします。PQ の楕円領域内にある任意の点は、UPFC モードで取得できます。

シミュレーション

1.UPFC モードでの電力制御

UPFC GUI ブロックのメニューを開きます。GUI では動作モード (UPFC、STATCOM または SSSC) とともに、基準電力 Pref/Qref や基準電圧 Vref の設定を選択できます。また、制御システムの動的応答を観察するために、GUI では特定時における任意の参照値のステップ変化を指定できます。

[操作モード] が [UPFC (Power Flow Control)] に設定されていることを確認します。基準の有効電力と無効電力は、GUI メニューの最後の 2 行で指定されます。初期値は、Pref= +8.7 pu/100 MVA (+870 MW) および Qref=-0.6 pu/100 MVA (-60 Mvar) です。t=0.25 秒で、Pref が +10 pu (+1000 MW) に変更されます。続いて t=0.5 秒で、Qref が +0.7 pu (+70 Mvar) に変更されます。分流コンバーターの基準電圧 (GUI の第 2 行で指定) は、シミュレーション全体の間 (ステップ時間 = 0.3*100 > シミュレーション終了時間 (0.8 秒)) Vref= 1 [pu] の一定値に保たれます。UPFC が電力制御モードのとき、STATCOM の基準無効電力および SSSC の供給電力 (GUI の第 1 行と第 3 行でそれぞれ指定) の変化は使用されません。

シミュレーションを 0.8 秒実行します。"Show Scopes" サブシステムを開きます。UPFC と名付けられた Scope ブロックのトレース 1 および 2 で、P と Q の変動を観察します。約 0.15 秒の過渡期間が続いた後、定常状態 (P=+8.7 pu、Q=-0.6 pu) に達します。その後、P および Q は新たな設定値 (P=+10 pu Q=+0.7 pu) へと上昇します。トレース 3 および 4 で、結果として得られる 3 つの伝送線路での P と Q の変化を観察します。分流コンバーターと直列コンバーターのパフォーマンスは、それぞれ STATCOM、SSSC と名付けられた Scope ブロックで観察できます。STATCOM と名付けられたScope ブロックの最初のトレースを拡大すると、分路変圧器の二次側 (黄色のトレース) で生成された 48 ステップ電圧波形 Vs を、一次電圧 Vp (赤紫色) および一次電流 Ip (シアン色) と重ねて観察できます。DC 母線電圧 (トレース 2) は、19 kV ~ 21 kV の範囲で変化します。SSSC スコープの最初のトレースを拡大すると、母線 B1 と B2 の間で測定された供給電圧波形 Vinj を観察できます。

2. STATCOM モードでの Var 制御

GUI ブロック メニューで、[操作モード] を [STATCOM (Var Control)] に変更します。STATCOM の基準値 (パラメーターの最初の行、[T1 T2 Q1 Q2]) が [0.3 0.5 +0.8 -0.8 ] に設定されていることを確認します。このモードで、STATCOM は無効電力の可変電源として動作します。最初 Q は 0 に設定されており、続いて T1=0.3 秒で Q は +0.8 pu に増加し (STATCOM が無効電力を吸収)、T2=0.5 秒で Q は -0.8 pu に反転します (STATCOM が無効電力を生成)。

シミュレーションを実行し、STATCOM と名付けられた Scope ブロックで、STATCOM の動的応答を観察します。Q が +0.8 pu から -0.8 pu に変化する t=0.5 秒あたりで、最初のトレースを拡大します。Q=+0.8 pu のとき、STATCOM に流入する電流 (シアン色のトレース) は電圧 (赤紫色のトレース) より遅れており、STATCOM が無効電力を吸収していることが示されます。Qref が +0.8 から -0.8 に変更されると、電流の位相は電圧に対し 90°の遅れから 90°の進みへと 1 サイクル内でシフトします。無効電力のこうした制御を行うには、分路コンバーターで生成される二次電圧 Vs を母線 B1 の電圧 Vp と同相に保ちながら、その振幅を変化させます。Vs の振幅のこうした変化は、DC 母線電圧を制御することで実行します。Q が +0.8 pu から -0.8 pu に変わるとき、Vdc (トレース 3) は 17.5 kV から 21 kV に増加します。

3. SSSC モードにおける直列電圧供給

GUI ブロック メニューで、[操作モード] を [SSSC (Voltage injection)] に変更します。SSSC の基準値 (パラメーターの第 3 行、[Vinj_Initial Vinj_Final StepTime]) が [0.0 0.08 0.3 ] に設定されていることを確認します。初期電圧は 0 pu に設定されており、t=0.3 秒で 0.8 pu に上昇します。

シミュレーションを実行し、SSSC と名付けられた Scope ブロックで、供給電圧が 3つの伝送線路を流れる P および Q に及ぼす影響を観察します。UPFC モードとは異なり、SSSC モードでは、直列インバーターは一定の導通角 (σ = 172.5°) で動作します。供給電圧の振幅は、Vinj (第 3 のトレース) と比例する dc 電圧を変えることによって制御されます。また、供給電圧の波形 (第 1 トレース) および SSSC を流れる電流 (第 2 トレース) も観察します。電圧と電流は直交状態を保つため、SSSC は可変のインダクタンスまたは静電容量として動作します。