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SVC および PSS (フェーザ モデル)

この例では、複数マシン システムの過渡安定性解析におけるフェーザ法の使用を示します。電力系統安定化装置 (PSS) および静止型無効電力補償装置 (SVC) をもつ 2 つのマシンからなる送電システムの過渡安定性を解析します。

Gilbert Sybille (Hydro-Quebec)

説明

1000 MW 水力発電プラント (マシン M1) は、500 kV、700 km の長距離伝送線路で負荷センターに接続されています。負荷センターは 5000MW の抵抗負荷でモデル作成されます。負荷への電力供給には、遠隔の 1000 MW のプラントと 5000 MW のローカルな発電 (マシン M2) が充てられます。システムは、送電線が 950 MW を伝送するよう初期設定されていますが、これはサージ インピーダンス負荷 (SIL = 977 MW) に近い値です。障害後にシステムの安定性を維持するために、伝送線路は 200 Mvar 静止型無効電力補償装置 (SVC) により、センターで分路補償されます。この SVC モデルは、過渡安定性の解決のみに有効なフェーザ モデルであることに注意してください。SVC には、電力振動減衰 (POD) ユニットがありません。2 つのマシンは、水力タービンと調速機 (HTG)、励磁システム、電力系統安定化装置 (PSS) を備えています。これらのブロックは 2 つの "Turbine and Regulator" サブシステムに配置されています。電力系統安定化装置は、次の 2 つのタイプから選択できます。加速力 (Pa= 機械動力 Pm と出力電力 Peo の差) を使用する汎用モデルおよび速度偏差 (dw) を使用するマルチバンド安定化装置。電力系統安定化装置のタイプは、No PSS, Generic, Multi-Band と名付けられた Constant ブロックで値を指定 (0=No PSS 1=Pa PSS または 2= dw MB PSS) することにより選択できます。

この例では、500 kV システムに障害を加え、PSS と SVC がシステムの安定性に与える影響を観察します。

シミュレーション

メモ:例を開始する前に Powergui ブロックを開き、[Simulation type] の項目で [Phasor] が選択されていることを確認します。フェーザ法は、標準の詳細法 (回路方程式を、連続系、離散系のいずれかで解く方法) に比べて、計算速度がずっと高速です。この解法では、ネットワークの微分方程式を固定周波数における一連の代数方程式で置き換え、これによってシミュレーション時間を大幅に削減します。また、以下で示すように、複数のマシンからなるシステムの過渡安定性が調べられます。

1.初期化

システムは定常状態で開始するよう、既に初期化されています。電力潮流 (Load Flow) の手順をよく知っている場合は、この項目をスキップして手順 2 に進むことができます。

M1 1000 MVA および M2 5000 MVA Synchronous Machine ブロックのマスクを開きます。

マシン M1 の [Load Flow] タブで [Generator type] パラメーターは [PV] に設定され、有効電力と端子電圧を制御するマシンを使って電力潮流が実行されることを示します。[Active power generation] パラメーターは 950e6 W に設定され、端子電圧は M1 のラベルが付いた Load Flow Bus ブロックで定義されて、マシンの端子に接続されます。

マシン M2 の [Generator type] パラメーターは [swing] に設定され、マシンが電力の平衡をとるスウィング母線として使用されることが示されます。

Powergui のメニューで [Load Flow] を選択します。新しいウィンドウが表示されます。電力潮流設定の概要がテーブルに表示されます。電力潮流を行うには、[計算] ボタンをクリックします。マシンの実際の有効電力と無効電力がテーブルに表示されます。

[適用] ボタンを押して、電力潮流の解をモデルに適用します。

2 つの Regulator サブシステムに含まれる水力タービンと調速機 (HTG) および励磁システムを見て、初期の機械動力と界磁電圧が電力潮流 (Load Flow) によって自動的に初期化されていることを確認します。2 つのマシンに対する基準機械動力と基準電圧も、HTG と励磁システムの入力に接続された 2 つの定数ブロックで、Pref1=0.95 pu (950 MW)、Vref1=1pu、Pref2=0.8091 pu (4046 MW)、Vref2=1 pu に更新されています。

2. 単相故障 - PSS の影響 - SVC がない場合

SVC ダイアログ ボックスを開き、SVC が Bref = 0 の "Var control (fixed susceptance Bref)" モードで動作するよう設定されていることを確認します。Bref を 0 に設定することは、SVC を停止状態にすることと等価です。また、2 つの PSS (Pa タイプ) が稼動状態 (Generic と名付けられた Constant ブロックで、定数値が 1) にあることを確認します。シミュレーションを開始して、Machines と名付けられた Scopeブロックで信号を観察します。このタイプの障害では、システムは SVC なしで安定です。障害除去後、0.8 Hz の振動が迅速に減衰します。この振動モードは、大規模な電力システムの標準的な地域間動揺です。Machines と名付けられた Scope ブロックの第 1 トレースは、2 つのマシン間の回転子の角度差 d_theta1_2 を示します。電力伝送は、この角度が 90 度に達するときに最大になります。この信号は、システムの安定性についての適切な目安です。d_theta1_2 が 90°を超える期間が長くなりすぎると、マシンは同期を失い、システムは不安定になります。第二表示は、マシンの速度を示します。障害の期間に、マシン 1 の電力は機械動力よりも低いので、マシン 1 の速度が増加することに注意してください。たとえば、50 秒間という長い時間シミュレーションすることにより、障害除去後に低周波数 (0.025Hz) で 2 つのマシンの速度が振動することも観測できます。2 つの PSS (Pa タイプ) は 0.8 Hz モードを減衰させますが、0.025 Hz モードの減衰に対しては効率的ではありません。その代わりに、Multi-Band の PSS が稼働状態 (Multi-Band と名付けられた Constant ブロックで、定数値が 2) を 選択すると、このタイプの安定化装置は 0.8 Hz モードと 0.025 Hz モードの両方を減衰させることが観察されます。

ここで、非稼動中 (No PSS と名付けられた Constant ブロックで、定数値が 0) の 2 つの PSS でテストを繰り返します。再度、シミュレーションを実行してください。システムは、PSS なしでは不安定であることに注意してください。右側の 2 番目の青いブロックをダブルクリックして、PSS がある場合とない場合の結果を比較できます。また、右側の最初の青いブロックをダブルクリックして、"詳細" と "フェーザ" の 2 つの解法で得られる結果を比較することもできます。

メモ:このシステムは本来の性質として、PSS なしでは小さな外乱に対しても不安定です。たとえば、(Fault Breaker の A 相を非選択にして) 障害を除去し、マシン 1 に 0.05 pu の Pref ステップを加えると、数秒後にゆっくりと不安定度が高まることが確認されます。

3. 三相故障 - SVC の影響 - 2 つの PSS を稼動

ここでは三相故障を適用し、重大な故障が起きているときに SVC がどのようにネットワークを安定化するかを観測します。2 つの PSS (Pa タイプ) を稼動させます (Generic と名付けた Constant ブロックで、定数値が 1)。"Fault Breaker" ブロックのプログラムを変更して、三相地絡故障を加えます。SVC が、Bref = 0 としてサセプタンスが一定のモードであることを確かめます。シミュレーションを開始します。信号 d_theta1_2 を見ると、2 つのマシンが障害除去後に、すぐに同期がとれなくなることが観測されます。不必要なシミュレーションを続けないように、角度差が 3*360 度に達すると、Simulink® の 'Stop' ブロックを使用してシミュレーションが停止されます。

SVC ブロックのメニューを開き、SVC の動作モードを "Voltage regulation" に変更します。ここでは、電圧が基準電圧 (1.009pu) よりも低いときに、ラインに無効電力を供給することによって SVC が電圧を供給します。選択された SVC の基準電圧は、稼動していない SVC が存在する母線電圧に対応します。したがって、定常状態において、電圧が基準の指令値から外れると、SVC は "浮動" 状態で電圧補償を待ちます。

シミュレーションを再開し、システムが三相故障に対して安定していることを観測できます。右側の 3 番目の青いブロックをダブルクリックして、SVC がある場合とない場合の結果を比較できます。

参考文献

[1] D.Jovcic, G.N.Pillai "Analytical Modeling of TCSC Dynamics" IEEE® Transactions on Power Delivery, vol 20, Issue 2, April 2005, pp. 1097-1104