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空間ベクトル変調による誘導モーター ドライブの直接トルク制御

この例では、空間ベクトル変調による直接トルク制御 (DTC) 手法を使用した、可変周波数 AC ドライブの回転数調整を説明します。

説明

電気モデル

電気エネルギーは、600 V、60 Hz の送電網相当物に接続している三相 AC/DC ダイオード整流器から供給されます。DC 母線は三相 2 レベル コンバーターに接続されています。このコンバーターが、150 HP 誘導モーターの可変速動作に必要な可変の電圧と周波数を発生させます。さらに、減速時にモーターの運動エネルギーを消費するために、DC 母線にブレーキ チョッパーが接続されています。

インバーターで電力供給される誘導モーター ドライブは、用途、求められる性能、およびコントローラー設計の複雑度に応じて、さまざまな手法を使用して制御できます。よく使用されるスキームは、スカラー制御 (V/Hz 制御、開ループ磁束制御) やベクトル制御 (ベクトル制御、直接トルク制御) です。この例では、空間ベクトル パルス幅変調 (SVPWM) を伴う DTC 手法を使用します。

従来のヒステリシスベースの DTC と比較して、SVPWM-DTC 手法ではスイッチング周波数が固定されています。さらに、この手法は定常状態での動作でモーターのトルク リップルを大幅に低減します。ヒステリシスベースの DTC 制御を使用したモーター ドライブのトルク リップルを確認するには、「空間ベクトル変調による誘導モーター ドライブの直接トルク制御」の例を参照してください。

SVPWM ベースの DTC コントローラー

DTC は、モーターの磁束とその電磁トルクを分離した状態で瞬時に制御できる制御手法です。トルクを直接制御することにより、静的および動的な回転数調整を正確に行うことができます。

DTC サブシステムには次の主要コンポーネントがあります。

  1. 磁束とトルクの計算 — 固定子の鎖交磁束は固定子電圧を積分することで推定され、トルクは推定した磁束とモーター電流に基づいて計算されます。

  2. 速度調整器 — この調整器は実際のモーター回転数を回転数指令値と比較して、トルク指令値を生成します。

  3. 磁束とトルクの制御器 — 算出した磁束の大きさとトルクを指令値と比較します。結果の磁束とトルクの誤差は、アンチワインドアップ PI 制御器に渡されます。磁束制御器の出力は d 軸基準電圧 Vd_ref で、トルク制御器の出力は q 軸基準電圧 Vq_ref です。

  4. スケーリングと変換 — 磁束位置 phi_pha で与えられる回転座標系基準を使用して、Vd_ref および Vq_ref をスケーリングし、三相信号 Vref に変換します。

DTC サブシステムの出力 Vref が SVPWM 変調器に渡され、そこでモーター インバーターへのパルスが生成されます。

シミュレーション

シミュレーションを実行し、Scope_Motor で波形を観察します。最初、磁束指令値は 0.9 V.s に設定されています。

0.1 秒で、回転数指令値が 1500 RPM に設定されてモーターが加速し始めます。モーター回転数が回転数指令値に正確に追従していることがわかります。モーター回転数の最大変化率は 1200 RPM/s に制限されています。1.35 秒で、1500 RPM の指令値に到達します。

1.5 秒で、負荷トルク 500 N.m がモーターに加えられます。DTC 制御がモーター回転数を 1500 rpm に維持します。

2 秒で負荷トルクが 50 N.m に減少し、2.5 秒で回転数指令値が 500 RPM に減少します。DC 母線の過電圧を防ぐために、ブレーキ チョッパーの動作がモーターで発生する運動エネルギーを消費していることを、Scope_Supply で観察します。

3.5 秒で、磁束指令値が 0.9 V.s から 1.0 V.s に上昇します。

リアルタイム シミュレーション

Simulink Real-Time と Speedgoat ターゲット コンピューターがある場合は、このモデルをリアルタイムで実行できます。

  1. [コンフィギュレーション パラメーター] ウィンドウを開いて (または Ctrl+E キーを押す)、[コード生成] をクリックし、[システムターゲットファイル]slrealtime.tlc に設定します。

  2. ターゲットに接続し、[リアルタイム] タブの [ターゲットで実行] をクリックします。

これにより、ターゲット上で自動的にモデルが作成、展開および実行されます。ターゲットのストリーミング帯域幅に応じて、ターゲットからホスト コンピューターにリアルタイムで転送される信号数を減らさなければならないことがあります。

参考文献

Cirrincione, M., M. Pucci, G. Vitale.Power Converters and AC Electrical Drives with Linear Neural Networks.CRC Press, 2012.