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ドループ制御手法を使用した、インバーターベースのマイクログリッドの自立運転

この例では、ドループ制御手法を使用した、インバーターベースのマイクログリッドの自立運転について説明します。

説明

この例では、メインの電力網から切断された (自立モード) インバーターベースのマイクログリッドについて、ドループ制御手法を使用する運転を説明します。米国エネルギー省はマイクログリッドについて、制御機能を備えたローカルのエネルギー グリッドと定義しています。これは、従来の電力網から切断して自立運転が可能であることを意味します。

ドループ制御は、自立グリッドの制御に関して定着した手法です。実際、有効電力/周波数 (P/F) と無効電力/電圧 (Q/V) のドループ制御は、送電システムの同期発電機の運転を模しています。ドループ制御手法を使用すると、すべてのインバーターが同じ周波数に達するため、システム全体の同期を実現するための PLL が不要になります。さらに、各インバーターがその容量に比例する電力を出力するため、各インバーター間での電力融通を実現できます。

このマイクログリッドは、電力定格がそれぞれ 500 kW、300 kW、200 kW の 3 つのインバーター サブシステムが PCC (系統連携点) 母線に並列接続する構成です。動的負荷モデルを使用して、マイクログリッドの総負荷を動的に変化させます。Microgrid Supervisory Control システムが有効になると、マイクログリッドの周波数と電圧をノミナル値 (それぞれ 60 Hz および 600 V) に戻すために、インバーターの P/F と Q/V の各ドループ指令値を変更します。

各インバーター サブシステムには、三相 2 レベル電力コンバーター、LC フィルター、480/600 V 変圧器、および一般的な再生可能エネルギー発電システム (PV アレイ、風力タービン、蓄電システムなど) の DC リンクを表す理想的な DC 電源があります。また、各サブシステムには制御システムと、インバーターに給電する PWM 発電機も含まれています。

インバーター制御システムには次の主要コンポーネントがあります。

ドループ制御: 次の図は、インバーター制御のドループ特性を示しています。

ドループ P/F は 1% に設定されます。つまり、マイクログリッドの周波数は 60.3 Hz (インバーターが有効電力を発生しない) から 59.7 Hz (インバーターがノミナル有効電力を発生する) まで変化できます。ドループ Q/V は 4% に設定されます。つまり、PCC 母線におけるマイクログリッドの電圧は 612 Vrms (インバーターが最大の誘起電力を発生する) から 588 Vrms (インバーターが最大の容量性電力を発生する) まで変化できます。Qmax はノミナル有効電力 Pnom の半分に指定されていることに注意してください。

測定: ドループ制御により指定される周波数値に基づき、測定サブシステムはインバーターが発生する有効電力と無効電力を計算します。また、マイクログリッドの PCC 母線における三相電圧および三相電流の d-q 成分も計算します。

電圧レギュレーター: ドループ制御により指定された基準電圧 Vref が電圧レギュレーターに渡されます。レギュレーターは、測定された d-q 電圧と基準電圧 Vref を処理して、基準電流 Id_ref および Iq_ref を生成します。

電流レギュレーター: 指令電流 Id_ref および Iq_ref が電流レギュレーターに渡されます。レギュレーターは、測定電流と指令電流を処理して、インバーターに必要な d-q 電圧 (VdVq_conv) を発生します。レギュレーターのダイナミクスはフィードフォワード計算の利点を活用していることに注意してください。

Vref 生成: VdVq_conv がスケーリングされてから三相信号 Vref に変換され、インバーターに対するパルスを生成する PWM 変調器に渡されます。

シミュレーション

1 秒の時点で、マイクログリッドの総負荷が 450 kW/100 kvar から 850 kW/200 kvar に増加します。3 秒の時点で、すべてのインバーターのドループ制御が有効になります。このときに、マイクログリッドの負荷が 3 台のインバーター間に等しく分配されていることがわかります。5 秒の時点で、監視制御が有効になります。その後、周波数がゆっくり 60 Hz に上昇し、線路電圧が 600 V に上昇します。

PCC 母線電圧の高調波成分に対するインバーターの PWM 搬送波の初期位相の影響を示すために、まず FFT Analyzer アプリを開いて、PCC における A 相の母線電圧の FTT 解析を実行します。

アプリで [Structure with time] パラメーターを PCC に、[Signal] パラメーターを V_PCC に、[Dimension] パラメーターを 1 に設定して、PCC における A 相の母線電圧を解析します。[Zoom on] パラメーターを FFT window に、[Start time] パラメーターを 7.9 に、[Max frequency] パラメーターを 7000 に設定します。[Compute FFT] をクリックします。FFT のプロットで、最大の高調波はスイッチング周波数 (2700 Hz) 付近で発生し、2% に近くなっています。

ここで、Inverter 2 (300 kW) サブシステムをダブルクリックして、搬送波の初期位相パラメーターを -90 度に変更します。シミュレーションを再実行し、PCC における A 相の電圧について再度 FTT 解析を実行します。この新しい搬送波位相設定ではスイッチング周波数 (2700 Hz) 付近の高調波成分が大幅に減少することがわかります。これは、Inverter 1 の搬送波の位相が +90 度に設定されているため、スイッチング高調波の一部が相殺されているという事実によります。

参考文献

  1. NREL の報告書: Research Roadmap on Grid-Forming Inverters Yashen Lin, Joseph H. Eto, Brian B. Johnson, Jack D. Flicker, Robert H. Lasseter, Hugo N. Villegas Pico, Gab-Su Seo, Brian J. Pierre, and Abraham Ellis

  2. IEEE の文書: Dynamic Operation and Control of a Multi-DG Unit Standalone Microgrid Hossein arimi-Davijani, Student Member and Olorunfemi Ojo, Senior Member, 2011