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単巻変圧器の飽和に対する GIC の影響

この例では、単巻変圧器の飽和に対する地磁気誘導電流 (GIC) の影響について説明します。

説明

[1] によると、太陽により放出される励磁された粒子流の変動を地球が受けると、地磁気擾乱 (GMD) が発生します。この変動により、地球の表面近くにある送配電線、通信回線、鉄道線、パイプラインなど長距離の電気伝導体システムで、地磁気誘導電流 (GIC) と呼ばれる電流が誘起されます。強い GIC を受けると、変圧器はその磁心が飽和することにより、著しい電流高調波の発生源になります。

この例は、13.8 kV、2000 MW の発電所 (短絡レベル 10000 MVA)、200 km、735 kV の伝送線路、735/315/12.5 kV、1650 MVA の単巻変圧器 T2、および 300 MW の負荷で構成される 735 kV の伝送路を示しています。単巻変圧器 T2 は 3 つの単相コアで構成されていますが、発電変圧器 T1 では 3 リム コアが使用されています。地磁気擾乱により、伝送線路に沿って一様な 8 V/km の電界が発生します。これに起因して伝送線路で誘起される DC 電圧は、線路と直列の 3 つの DC 電圧源によりシミュレートされます (Vdc = 8*200= 1600 V)。

GIC 電流は線路の抵抗に大きく依存するため、AC と DC の両方の現象に対して正確な抵抗を生成する線路モデルを使用することが重要です。この線路は、Distributed Parameters Line Frequency Dependant ブロック、および関連する MAT ファイルを使用してモデル化されます。

シミュレーション

定常状態に到達するために 10 秒のシミュレーションを実行します。シミュレーション中に、Scope1 で電圧と電流の波形、Scope2 で T2 の磁束と磁化電流を観察します。線電流 (GIC) の DC 成分、T1 と T2 の磁束の DC 成分、および T1 と T2 に吸収される無効電流が Display ブロックに示されます。

T2 の磁束の DC 成分が大きいことがわかります (+ 0.67 pu)。したがって、変圧器 T2 は大幅に飽和しています (Scope2 での磁束および虚数部の波形を参照)。T2 の正弦波でない大きな磁化電流が原因で、高調波電圧および高調波電流の大幅な歪みが発生します (Scope1)。また、磁化電流の 60-Hz 成分が原因で、大量の無効電流が吸収されます (Q_T2= 424 Mvar)。一方、3 リム コアを使用する変圧器 T1 では、DC 磁束のオフセットが小さくなっています。T1 の DC 磁束は t=10 の時点でも非常にゆっくり減少し続けており (Scope3 を参照)、定常状態に達するためには、数百秒のシミュレーションが必要です。

単巻変圧器 T2 のコア タイプの影響

単一の三相コアを使用して大規模な電力用単巻変圧器 (1650 MVA) を作成することは考えにくいですが、T2 に 3 リム コアを使用した場合の影響を観察します。

T2 ブロックのメニューで [Core type] パラメーターを [Three single-phase units] から [Three-limb core (core type)] に変更して、新しいシミュレーションを実行します。変圧器がそれ以上飽和しないことを観察します。T1 と T2 のいずれの DC 磁束もゆっくり減少し続けており、定常状態に達するには数百秒のシミュレーションが必要です。

3 リム コアの場合、磁化電流の 3 つの等しい DC 電流成分により、空気およびタンクを介して鉄心の外側を廻る必要のあるゼロシーケンスの磁束成分が生成されます。この磁束の帰還路の磁気抵抗が高いと、生成される DC 磁束成分が小さくなり、変圧器の飽和が防止されます。

線路モデルの影響

線路に沿って誘起された DC 電圧に起因する 3 つの線電流により、3 つの等しい DC 電流 (ゼロシーケンス) が発生し、これらの電流は線路の下の地面を通って戻ります。DC の場合、2 か所の変電所の接地抵抗を除いて、この接地帰路の抵抗はヌルです。

一定の RLC パラメーターをもつ分布定数線路を使用する場合、接地抵抗は正のシーケンスおよびゼロシーケンスの線路抵抗 (50 Hz または 60 Hz で計算され、Ω/km 単位のパラメーター r1 および r0) によって決まります。長さ L の線路について、DC でのこの接地抵抗は 50 Hz または 60 Hz で指定された抵抗と同じになり、Rline_ground = (r0-r1)/3*L Ωで与えられますが、これはゼロになる必要があります。

周波数依存 (FD) 線路の代わりに分布定数線路 (DPL) を使用する影響を観察するには、Transmission line ブロックのバリアントの選択を Choice_2 (DPL 735-kV 200 km) に設定します。T2 のコア タイプの設定を 3 つの単相ユニットに戻します。シミュレーションを実行し、GIC が 295 A から約 25 A に、劇的に減少したことを観察します。DPL 線路モデルを使用して得られる GIC は正しくありません。0 Hz における DPL の接地抵抗は 60 Hz における接地抵抗と同じですが、これはゼロである必要があるためです。

参考文献

  1. Geomagnetic Disturbance Monitoring, Approach and Implementation, United States Department of Energy, January 2019

  2. Impact of GIC on Transformers and the Transmission Network, Dietrich Bonmann, ABB AG Bad Honnef, March 2016