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DC1 - 回生ブレーキ システムのある 2 象限単相整流器 5 HP DC ドライブ

この例では、回生ブレーキ システムを伴う 2 象限単相整流器 DC ドライブを示します。

C.Semaille, Louis-A. Dessaint (Ecole de technologie superieure, Montreal)

説明

この回路は Specialized Power Systems の DC1 ブロックを基にしています。このモデルは、5 HP DC モーター用の 2 象限単相整流器ドライブをモデル化したものです。braking unit ブロックが、回生ブレーキ (第 4 象限動作モード) のシミュレーションを実行するために付け加えられています。

5 HP DC モーターは、一定の 150 V DC 界磁電圧源で個別に励起されます。電機子電圧は、2 つの PI 制御器で制御される単相整流器によって供給されます。整流器は、220 V AC 50 Hz の電圧源に線形変圧器をつなぎ、電圧を十分な値に高めて電力の供給を受けます。

制御器は、サイリスタ整流器の点弧角をコントロールします。最初の制御器は速度調整器で、その次は電流制御器です。速度調整器は、目的の速度に達するのに必要な電磁トルクを取得するために、電流コントローラーで使用する電機子電流指令値を出力します (p.u. 単位)。速度指令の変化率は、急激な指令値の変化により電機子過電流が発生してシステムが不安定にならないように、加速および減速ランプに従います。電流制御器はサイリスタの適切な点弧角を計算して電機子電流を制御します。これによって、望ましい電機子電流を得るために必要な整流器の出力電圧が生成されます。

braking unit ブロックは 2 つのステート (ノーマル動作モードとブレーキ動作モード) をもつ有限ステート マシンによって管理されます。システムがブレーキ モードに入ると電機子スイッチが起動し、電機子電流の反転が可能になります。これによって逆の電磁ブレーキ トルクが発生して速度が速やかに落ちます。電流の反転は、スイッチを通して流れる電機子電流が 0 A になったときに開始されます。これにより、転流に際してスイッチでの有害なアークの発生が回避されます。

150 mH の平滑化インダクタンスが電機子回路と直列に配置され、電流振動を減らします。

シミュレーション

シミュレーションを開始します。モーター電圧、電流、速度および整流器の点弧角をスコープで観察できます。速度と電流の基準値も表示されます。

初期の基準速度は 800 rpm に設定されています。負荷トルクは 10 N.m です。モーター回転数が加速の基準ランプ (+350 rpm/s) に正確に従い、およそ 3.5 秒で定常状態に達することを観察します。電機子電流は指令電流によく従い、定格電流内に留まります。この間、点弧角の平均値は 90°未満に留まり、サイリスタ ブリッジは整流器モード (第 1 象限の動作モード) となります。

t = 4 秒で、基準速度は 200 rpm に落ち、システムはブレーキ モードに入ります。電機子電流が 0 A に達すると電機子スイッチが起動し、モーターを流れる電流の反転が起こります (ブリッジを流れる電流の向きはもちろん変わりません)。モーター回転数が目標の減速ランプに従うことを、再度観察します。ブレーキ電磁トルクの効果を明確に示すため、減速ランプは高い値 (-1250 rpm/s) に設定されています。この期間中、ブリッジはインバーター モード (第 2 象限の動作モード) で機能します。

t = 4.5 秒で、モーター回転数は基準速度をわずかに下回り、モーターを流れる電機子電流はノーマルへと反転します。ブリッジは整流器モードで動作し、およそ t = 5.5 秒でモーター回転数は 200 rpm に達します。

転流の際に電流がオーバーシュートすることに注意してください。これは、電機子の切り替えによりブリッジ出力で電圧の反転が急発生するためです。ブリッジの出力電圧は、この電圧反転にすぐには追随できません。ブリッジとモーター間のこの突然の電圧差によって、電流のオーバーシュートが発生します。ただし、オーバーシュートのピークは妥当な値で、有害ではありません。

メモ:

1) 電力システムは 10 us のタイム ステップで離散化されています。マイクロコントローラーの制御デバイスのシミュレーションを実行するため、制御システム (制御器とブレーキ ユニット) は 100 us のタイム ステップを使用しています。

2) スコープ メモリに格納される点数を減らすため、間引き係数に 20 を使用します。