ATSC デジタル テレビ
このモデルでは、Advanced Television Systems Committee (ATSC) デジタル テレビ標準規格 [ 1 ] の 8 つの離散振幅レベル (8-VSB) の送信サブシステムを使用した、残留側波帯変調について示します。この規格では、米国次世代テレビジョン システムの特性について説明しています。米国次世代テレビジョン方式は、単一の 6 MHz 地上波テレビ放送チャネルで高品質な映像、音声、補助データを送信するように設計されています。
この例の目的は以下のとおりです。
MPEG-2 トランスポート パケット入力データを使用する主サービス 8-VSB 送信機の主要部分のモデル化
主サービス 8-VSB 受信機の設計の主要部分のモデル化
訂正されたバイト数、欠損パケット数およびバイト エラー レートを含む、誤り統計の生成
例の構造
モデルは、MPEG-2 トランスポート パケット生成、送信機のベースバンド処理、AWGN チャネル、受信機のベースバンド処理およびエラー レートの計算で構成されています。以下の節では、各サブコンポーネントについて詳細に説明します。
MATLAB ワークスペース変数の定義
モデルをはじめて読み込むと、MATLAB® ワークスペース変数 prmATSC
が作成されます。この構造体の変数には、モデルのブロック パラメーターを指定するフィールドが含まれています。この変数は、モデルを閉じると消去されます。
prmATSC = struct with fields: MPEG2PacketLen: 188 RSCodewordLen: 207 BitsPerByte: 8 BitsPerNibble: 2 NibblesPerByte: 4 NibblesPerGroup: 48 NibblesPerSegment: 828 SegmentsPerField: 313 RSPrimitivePoly: [1 0 0 0 1 1 1 0 1] RSGeneratorPoly: [1 152 185 240 5 111 99 6 220 112 ... ] (1x21 double) IntlvrNumShiftRegs: 52 IntlvrShiftRegStep: 4 DeintlvrAlignDelay: 156 DeintlvrPktDelay: 52 NumTrellisCoders: 12 TraceBackDepth: 8 TrellisDecAlignDelay: 159 TrellisDecPktDelay: 2 SymbolRate: 1.0762e+07 MPEG2BPS: 1.9393e+07 MPEG2PktRate: 1.2894e+04 ChannelSampleTime: 9.3666e-08 PAMSigPower: 4.5826 EsNo: 10
MPEG-2 データ ソース
MPEG-2 トランスポート パケットは、ランダムに生成された 188 バイトのベクトルで、最初のバイトが sync バイト 0x47 (16 進数) によって置き換えられています。
送信機のベースバンド処理
ランダマイザー
このサブシステムは、[ 1 ] の 6.4.1.1 節に対応しています。MPEG-2 sync バイトのランダム化および符号化は行うべきではありません。XOR 演算の前に破棄されます。入力データバイトをスクランブルする疑似乱数バイト シーケンスは、各データ フィールドの開始時点で再度初期化が行われます。このモデルでは、データ フィールド同期セグメントはモデル化されていないため、各データ フィールドは、312 のデータ セグメントで構成されています。
リード・ソロモン符号化器
このサブシステムは、[ 1 ] の 6.4.1.2 節に対応しています。(207, 187)Integer-Input RS Encoderブロックでは、入力パケットに 20 パリティ バイトが追加され、フレームあたり 207 バイトの出力が生成されます。これにより、受信側の対応するInteger-Output RS Decoderブロックで、トランスポート パケットあたり最大で 10 の誤りバイトを修正できます。
畳み込みインターリーバー
このサブシステムは、[ 1 ] の 6.4.1.3 節に対応しています。Convolutional Interleaverブロックは、データ フィールドの 6 分の 1 である、52 データ セグメント (セグメント間) からバイトをインターリーブします。送信機は、各データ フィールドの最初のデータ バイトに、インターリーバーを同期させます。
トレリス インターリーバー
このサブシステムは、後続のM-PAM Modulator Basebandブロックとともに、[ 1 ] の 6.4.1.4 節に対応しています。12 ある 3 分の 2 レートのConvolutional Encoderブロックの 1 つから、各データ バイトのそれぞれ 2 ビットを送信することで、パラレル バイトからシリアル 3 ビット出力を作成します。各バイトは、4 つの 3 ビット出力を生成し、実装は、12 バイトごとにまとめて処理を行います。ブロックは、どのConvolutional Encoderが、グループのどの 2 ビットを処理するかを制御します。パラレル バイトのシリアル ビットへの完全な変換には、4 つのデータ セグメントが必要となります。たとえば、828 データ バイトは、12 符号化器から 3312 の 3 ビット出力を生成し、各符号化器は 69 データ バイトを処理することになります。各データ フィールドでは、312/4 = 78 の変換操作が必要となります。
8-PAM コンスタレーション マッピング
M-PAM Modulator Basebandブロックは、[ 1 ] の図 6.8 の記号マッピング部分に対応しています。値が [-7 -5 -3 -1 1 3 5 7] である 8 レベル 1 次元の実際のコンスタレーション上のシンボルに、3 ビットの整数入力をマッピングします。
AWGN チャネル
AWGN Channelブロックは、Signal to noise ratio (Es/No)
モードを使用します。信号強度とシンボル周期が計算され、ワークスペース変数 prmATSC
に格納されています。Es/No の値は、約 0.0039 のバイト エラー レートを生成する、10 dB に設定されています。
受信機のベースバンド処理
8-PAM 復調器
M-PAM Demodulator Basebandブロックは、受信したベースバンドの 8-PAM コンスタレーション シンボルを 3 ビット整数出力に変換します。このブロックのコンスタレーション設定は、上流のM-PAM Modulator Basebandブロックのコンスタレーション設定と同じです。
トレリス デインターリーバー
このサブシステムは、12 ある 3 分の 2 レートのViterbi Decoderブロックの 1 つからそれぞれの入力を送ることで、シリアル 3 ビット入力をパラレル バイトに変換します。次に、サブシステムは復号化されたビットを連結し、バイトにします。デインターリーバーは、12 バイトに相当する 48 入力をひとまとまりの単位として処理を行い、1 グループ (48 入力) の遅延を差し込んだ後、ビタビ復号化を実行します。Trellis Interleaver
サブシステムにあるものと同じ制御ブロックにより、どのViterbi Decoderブロックが、グループのどの入力を処理するかが選択されます。Trellis Interleaver
サブシステムおよび Trellis Deinterleaver
サブシステムはともに、207 + 48 = 255 バイトの遅延を (Bufferブロックから) システムに差し込むことに注意してください。Trellis Deinterleaver
サブシステムの出力は、フレーム整列で 159 バイト遅延し、下流のサブシステムが受信した最初の 2 フレームが無視されることになります。後続のサブシステムにこのフレーム遅延を通知するため、Trellis Deinterleaver
サブシステムはフレームの有効フラグを作成し、下流のサブシステムに渡します。
畳み込みデインターリーバー
Convolutional Deinterleaverブロックは、送信機のConvolutional Interleaverブロックに相当し、同一の構成をとります。Convolutional InterleaverブロックおよびConvolutional Deinterleaverブロックはともに 10608 バイトの遅延をシステムに差し込むことに注意してください。結果として、サブシステムはConvolutional Deinterleaverブロックの出力を、パケット整列で 156 バイト遅延させ、下流のサブシステムが受信した最初の 52 パケットは無視されることになります。後続のサブシステムにこのパケット遅延を通知するには、Convolutional Deinterleaver
サブシステムでパケットの有効フラグを作成し、下流のサブシステムにそれを渡します。
リード・ソロモン復号化器
Integer-Output RS Decoderブロックは、送信機のInteger-Input RS Encoderブロックに相当し、同一の構成をとります。このブロックには、2 番目の出力端子があり、処理済みのパケットに対しての補正が行われたバイト数を示します。
逆ランダマイザー
このサブシステムは、送信機の Randomizer
サブシステムに相当します。この疑似乱数バイト シーケンスを生成するブロックは、Randomizer
サブシステムのブロックと同様のものです。MPEG-2 sync バイトは、逆ランダム化後に各パケットに挿入され、MPEG-2 トランスポート パケットを形成します。
結果と表示
Error Rate Calculationブロックは、送信された MPEG-2 トランスポート パケット データと、復号化された MPEG-2 トランスポート パケット データを比較して、システムのバイト エラー レートを測定します。このシステムには合計 54 パケット、つまり、10152 バイトの遅延があることに注意してください。これによりブロックの Receive delay
パラメーターが指定されます。
システムの性能を調べるには、以下にリストされているように、含まれている可視化ブロックを使用します。
MPEG-2 Bit Rate (Mbit/s)
の表示Receiver 8-PAM Constellation Diagram
スコープReceiver Spectrum
スコープNumber of Corrected Bytes
の表示Number of Defective Packets
の表示System Byte Error Rate
の表示
モデルを実行します。スコープが、ATSC 受信コンスタレーションとスペクトルを示します。
その他の調査
モデルを読み込むと、ワークスペース変数 prmATSC
の EsNo
フィールド値を変更することにより異なる S/N 比 (SNR) を設定し、システム パフォーマンスを見ることができます。以下のコンポーネントは、モデル化されていませんが、これらの組み込みを試すことができます。
データ セグメントおよびデータ フィールドの同期
マルチパス フェージング チャネルおよび周波数オフセットなどのチャネル劣化要因
受信機の搬送波再生および均等化
参考文献
Advanced Television Systems Committee, ATSC Digital Television Standard A/53, Part 2 - RF/Transmission System Characteristics, Washington, D.C., Jan. 3, 2007.