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735 kV の送電システムに接続されている MMC-STATCOM

この例では、735 kV の送電系統に接続されている 50 MVA、MMC STATCOM (アームあたり 22 個の電力モジュール) の動作を説明します。

説明

電力網では、多くの場合、無効電力と電圧の制御に分流補償が使用されます。この例では、最新の送電系統で使用されることの多くなってきた分流補償装置であるモジュラーマルチレベル (MMC) STATCOM をモデル化します。MMC STATCOM は Full-Bridge MMC ブロックを使用して作成され、アームあたり 22 個の電力モジュール (PM) からなるパワー エレクトロニクス コンバーターを表します。3 つの MMC アームは、18 kV/735 kV の電力変圧器にデルタ結線されています。

動作原理

STATCOM では無効電力の吸収や生成が可能です。無効電力の伝達は相のリアクタンスを通じて行われます。コンバーターは送電系統電圧と同相で電圧を生成します。コンバーター電圧の振幅が送電系統電圧の振幅より小さい場合、STATCOM はインダクタンスのように機能して無効電力を吸収します。コンバーター電圧の振幅が母線電圧の振幅より大きい場合、STATCOM はコンデンサのように機能して無効電力を生成します。

送電システム

60 Hz の電力システムは、直列補償付き 735 kV 送電システムの簡略化モデルです。送電系統は、固定のコンデンサとインダクタを使用して、直列補償と分流補償の両方がなされています。これは、32 の三相母線と 6 つの電力プラントの主要コンポーネントで構成されています。各電力プラントは、1 つの同期機、1 つの水力タービンと調速機、1 つの励磁システム、1 つの電力系統安定化装置 (PSS) で表現されます (6 つの三相電力変圧器、20 個の三相分流および負荷、17 本の 735 kV 分布定数線路)。送電能力を高めるために、11 本の送電線がコンデンサによって直列補償されています (補償係数 = 送電線のリアクタンスの 15 ~ 42%) (アームあたり 22 個のカスケード式フルブリッジ コンバーターをもつ 50 MVA STATCOM)。

制御システム

STATCOM 制御システムは次の主要なサブシステムで構成されています。Measurements は、一次電圧で同期化された三相 PLL によって提供される同期指令で abc-dq 変換を実行することにより、一次電圧および一次電流の d 軸成分と q 軸成分を計算します。Reactive Power Regulator は、必要な無効電流指令値 (Iq_ref) を決定することにより、STATCOM によって吸収される無効電力または生成される無効電力を制御します。DC Voltage Regulator は、すべてのコンデンサの PM の平均値を、指定した指令値 (Vnom_PM = 1600 V) に維持します。このタスクを実行するために、制御器は、必要な有効電流指令値 (Id_ref) を決定することにより、STATCOM によって吸収または生成される有効電力を制御します。Current Regulator は、測定電流値 (Id/Iq) が指令値 (Id_ref/Iq_ref) と等しくなるように、コンバーターの出力電圧信号 (Vd,Vq) を生成します。Insertion Indices Computation は、最も近いレベルの変調方式を使用して、挿入インデックス (n) を決定します。インデックスは、電流制御器の出力 (Vd,Vq)、およびコンデンサ電力モジュールの数と定格電圧に基づいて計算されます。Power Modules Selection は、要求された挿入インデックスおよび電圧平衡化アルゴリズムに基づいて、挿入される電力モジュールまたは取り外される電力モジュールを選択します。電圧平衡化アルゴリズムは、コンデンサ電圧の並べ替え、およびアームに流れ込む電流の極性の測定に基づいています。サブシステムをダブルクリックすると、アルゴリズムの実装方法を確認できます。

シミュレーション

シミュレーションが定常状態で開始され、STATCOM が 0 Mvar で動作します。0.1 秒で、指令値 Qref の値が -30 Mvar (誘導性の var) に変更されます。0.3 秒で、指令値が -30 Mvar から 40 Mvar (容量性の var) に変更されます。新しい Qref 設定点に従うために、STATCOM 制御システムが反応してインバーターの出力電圧を変更します。0.5 秒で、SAG7 サブステーションで三相故障が発生して STATCOM の動作が強制されます。

参考文献

[1] M. Pereira, Member, IEEE, D. Retzmann, Member, IEEE, J. Lottes, M. Wiesinger, G. Wong, SVC PLUS: An MMC STATCOM for Network and Grid Access Applications 2011 IEEE Trondheim PowerTech

[2] Mattia Ricco, Laszlo Mathe, Manel Hammami, Francesco Lo Franco, Claudio Rossi and Remus Teodorescu, A Capacitor Voltage Balancing Approach Based on Mapping Strategy for MMC Applications Electronics Open Access Journal, April 2019