Main Content

このページの内容は最新ではありません。最新版の英語を参照するには、ここをクリックします。

太陽光/熱 (PV/T) ハイブリッド ソーラー パネル

この例では、ハイブリッド PV/T ソーラー パネルを使用して電力と熱のコジェネレーションをモデル化する方法を説明します。発生する熱は、家庭で消費するために水に伝達されます。

Simscape™ Foundation™、Simscape Electrical™、Simscape Fluids™ のライブラリのブロックを使用します。ネットワークの電気部分には、一連の太陽光 (PV) 電池をモデル化する Solar Cell ブロックと、抵抗負荷をモデル化する Load サブシステムが含まれます。熱ネットワークは、PV パネルの物理コンポーネント (ガラス カバー、熱交換器、背面カバー) と環境との間で発生する熱交換をモデル化します。熱は、伝導、対流、放射を介して交換されます。熱流体ネットワークには、パイプ、タンクおよびポンプが含まれます。ポンプは、システム内での流体の流れを制御します。

ガラス カバーにおける光の反射、吸収、透過をモデル化するために、光学モデルが MATLAB® Function ブロックに組み込まれています。

モデルの概要

モデルを開いて構造を表示します。

open_system('sscv_hybrid_solar_panel');

熱ネットワークは赤、電気回路網は青、熱流体ネットワークは黄色です。太陽光とポンプの入力用のサブシステムがあります。また、シミュレーション結果を可視化するためのスコープを含むサブシステムもあります。もう 1 つのサブシステムには、光学モデルの関数が含まれています。

パラメーター

hybrid_solar_panel_data.m スクリプトを使用すると、この例で負荷、太陽電池、パイプ、タンクなどのコンポーネントに使用しているパラメーター値を変更できます。

edit sscv_hybrid_solar_panel_data;

入力

モデルの入力は、ポンプ流量と、放射照度や入射角に関する太陽光の変数です。入力は、24 時間周期のサイクルに従うため、反復列ブロックを使用して定義されています。

open_system('sscv_hybrid_solar_panel/Solar inputs');
open_system('sscv_hybrid_solar_panel/Pump flow inputs');

太陽は 6:00 に昇って 19:00 に沈みます。放射照度は、12:30 を頂点とするベル型曲線に従います。入射角は pi/3 から 0 に変化します。

ポンプは 3 つあります。ポンプの 1 つはユーザーの需要をモデル化し、もう 1 つは供給源を、3 番目のものはパイプ内で強制的に対流を発生させる内部流れをモデル化します。需要は一定で、10:00 ~ 22:00 のみがゼロ以外となります。供給は一定で、18:00 ~ 6:00 のみがゼロ以外となります。内部流れも一定で、6:00 ~ 22:00 のみがゼロ以外となります。このモデルが内部流れに使用されるのは、周囲温度が低い夜間に熱交換を強制することは効率的ではないからです。

hybrid_solar_panel_plot_inputs.m スクリプトを使用して入力をプロットできます。

sscv_hybrid_solar_panel_plot_inputs;

ガラス カバーの光学モデル

光学モデルはサブシステム内にあります。

 open_system('sscv_hybrid_solar_panel/Optical model');

これは MATLAB® Function ブロックで構成されており、2 つの太陽光入力と、3 つの出力 (PV 電池に透過する放射照度、ガラスが吸収する熱、PV 電池が吸収する放射パワー) をもちます。その一部は電力 (V*I) に変換され、残りは熱となって PV 電池に吸収されます。

光学的観点では、ガラスは 2 つの平行する境界 (空気とガラス、ガラスと空気) から成り、それぞれが光を反射し、透過させます。境界内の反射係数は "フレネル方程式" から求められます。$ r_p $ は P 偏光用で、$ r_s $ は S 偏光用です。全反射は両方の平均であり、ここまでは吸収がないため、透過率は $ 1 - r $ です。

$$r_p = \left( \frac{n_{rel}^2 \cos(\theta_i) - \sqrt{n_{rel}^2 - \sin(\theta_i)^2}}
{n_{rel}^2 \cos(\theta_i) + \sqrt{ n_{rel}^2 - \sin(\theta_i)^2}} \right) ^2 $$

$$r_s = \left( \frac{ \cos(\theta_i) - \sqrt{n_{rel}^2 - \sin(\theta_i)^2}}
{\cos(\theta_i) + \sqrt{ n_{rel}^2 - \sin(\theta_i)^2 } } \right) ^2 $$

$$r = \frac{1}{2} \left( r_p + r_s \right) $$

$$t = 1 - r $$

以下は、入射角の関数における光学係数 rp、rs、r および t の例です。

 nrel = 1.52; %Optical index from air to glass
 theta = linspace(0, pi/2, 100);
 rp = ( nrel^2*cos(theta) - sqrt(nrel^2 - sin(theta).^2) ).^2./...
     ( nrel^2*cos(theta) + sqrt( nrel^2 - sin(theta).^2 ) ).^2 ;
 rs = ( cos(theta) - sqrt(nrel^2 - sin(theta).^2) ).^2./...
     ( cos(theta) + sqrt( nrel^2 - sin(theta).^2 ) ).^2 ;
 r = 0.5*(rp + rs);
 t = 1 - r;

 figure();
 plot(theta*180/pi, rp, 'Color', [0 1 1], 'LineWidth', 1.5);
 hold on
 plot(theta*180/pi, rs, 'Color', [0 0.5 1], 'LineWidth', 1.5);
 plot(theta*180/pi, r, 'Color', [0 0 1], 'LineWidth', 1.5);
 plot(theta*180/pi, t, 'Color', 'm', 'LineWidth', 1.5);
 legend('rp','rs','r','t');
 xlabel('Incidence angle (deg)');
 grid on
 box on

これは 1 つの境界で発生しますが、ガラスは $ d_g $ によって隔てられた 2 つの平行する境界をもっています。1 番目の境界の後の角度は、2 番目の境界に対する入射角であり、スネルの法則から次のように計算されます。

$$ n_1 \sin(\theta_1) = n_2 \sin(\theta_2) $$

光がガラスに入ると、その一部が単位長あたり一定確率 (alpha_g) で吸収され、ガラスの透過率係数に対して移動距離から指数減衰となります。

$$ \tau_g = \exp\left(\frac{-\alpha_g d_g}{\cos(\theta_2)}\right) $$

次に、2 番目の境界に達すると、フレネル方程式に従って再度反射し、透過します。反射した光はガラス内に閉じ込められ、完全に吸収されるまでの間、2 つの境界の間を無限に反射します。したがって、システムの全反射係数と全透過係数は、無限等比級数の合計であり、結果は次のようになります。

$$ T_g = \frac{ t_1 \tau_g t_2}{1 - r_1 r_2 \tau_g ^2} $$

$$ R_g = r_1 + \frac{ t_1 ^2 \tau_g ^2 r_2 }{ 1 - r_1 r_2 \tau_g ^2} $$

$$ A_g = 1 - T_g - R_g $$

最終的に、ガラスの全光学係数は次のようになります。

 sscv_hybrid_solar_panel_plot_optics;

出力

モデルの出力は、パネルの全コンポーネントの温度、電力と熱出力、およびタンク内の体積です。

スクリプト hybrid_solar_panel_plot_outputs を使用してシミュレーションをプロットできます。

sscv_hybrid_solar_panel_plot_outputs;

効率計算

出力から、パネルの電気、熱、および全体の効率を計算できます。

sscv_hybrid_solar_panel_efficiency;

電気効率は標準的な PV 電池と同程度ですが、熱効率を加えることにより、コジェネレーション プラントと同程度のシステム効率で、エネルギー生産は大幅に向上します。

さらなる解析で Simulink® Design Optimization™ またはその他の最適化ツールを使用して、制御対象となる特定のパラメーターの最適値を求めることにより、全体の効率を最大化することができます。

もう 1 つの改善として、システムを別の操作点まで駆動してパフォーマンスを最適化するために、ポンプおよび電気負荷にコントローラーを追加することが考えられます。

参考