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100 kW グリッド接続 PV アレイの詳細モデル

この例では、DC-DC 昇圧コンバーターおよび三相 3 レベル VSC を介して 25 kV グリッドに接続された 100 kW アレイの詳細モデルを説明します。

Pierre Giroux, Gilbert Sybille (Hydro-Quebec, IREQ) Carlos Osorio, Shripad Chandrachood (The MathWorks)

説明

100 kW PV アレイは、DC-DC 昇圧コンバーターおよび三相 3 レベル電圧源コンバーター (VSC) を介して 25 kV グリッドに接続されています。最大電力点追従 (MPPT) は、'Incremental Conductance (INC) + Integral Regulator' 手法を用いた Simulink® モデルによって昇圧コンバーターに実装されています。

別の例 (PVArrayGridAverageModel モデルを参照) では、DC_DC および VSC コンバーターの平均モデルを使用します。この平均モデルでは、MPPT コントローラーは「Perturb and Observe」手法に基づいています。

詳細モデルには次のコンポーネントが含まれています。

  • PV Array は 1000 W/m^2 太陽放射照度において最大 100 kW を供給します。

  • 5 kHz DC-DC Boost Converter は PV 自然電圧 (最大電力で 273 V DC) から 500 V DC に電圧を上げます。デューティ比の切り替えは、'Incremental Conductance (INC) + Integral Regulator' 手法を使用する MPPT コントローラーによって最適化されます。この MPPT システムは、デューティ比を自動的に変動させて最大電力を引き出すために必要な電圧を生成します。

  • 33*60 (1980) Hz 500 V 3-level 3-phase VSC。VSC は 500 V DC リンク電圧を 260 V AC に変換し、一定の力率を維持します。VSC 制御システムは、次の 2 つの制御ループを使用します。DC リンク電圧を +/- 250 V に制御する外部制御ループと Id および Iq グリッド電流を制御する内部制御ループ (有効電流成分と無効電流成分)。Id 指令電流は DC 電圧外部コントローラーからの出力です。Iq 指令電流は、一定の力率を維持するためにゼロに設定されます。電流コントローラーからの Vd および Vq 電圧出力は、PWM Generator で使用される 3 つの変調信号 Uabc_ref に変換されます。制御システムは、電圧および電流コントローラーと共に、PLL 同期ユニットにも 100 マイクロ秒のサンプル時間を使用します。昇圧および VSC コンバーターのパルス発生器は、PWM 波形の適切な分解能を得るために 1 マイクロ秒の高速サンプル時間を使用します。

  • 10 kvar capacitor bank は VSC によって生成される高調波をフィルター処理します。

  • 100-kVA 260V/25kV three-phase coupling transformer

  • Utility grid (25 kV 配電支線 + 120 kV 等価送電システム)。

100 kW PV アレイは 330 個の SunPower モジュール (SPR-305E-WHT-D) を使用します。アレイは、直列接続された 5 つのモジュールをもつ 66 個の並列接続されたストリングで構成されます (66*5*305.2 W= 100.7 kW)。

PV Array ブロックの [モジュール] パラメーターを使用すると、NREL System Advisor Model (https://sam.nrel.gov/) のさまざまなアレイ タイプから選択できます。

1 つのモジュールの製造元による仕様は次のとおりです。

  • Number of series-connected cells : 96

  • Open-circuit voltage: Voc= 64.2 V

  • Short-circuit current: Isc = 5.96 A

  • Voltage and current at maximum power : Vmp =54.7 V、Imp= 5.58 A

PV array ブロックのメニューにより、選択されたモジュールとアレイ全体の I-V 特性と P-V 特性をプロットできます。

PV Array ブロックには、太陽放射照度 (入力 1、W/m^2 単位) と温度 (入力 2、℃単位) を変えることができる 2 つの入力があります。放射照度と温度のプロファイルは、PV アレイの入力に接続される Signal Builder ブロックで定義されます。

シミュレーション

モデルを実行し、Scope ブロックで次の一連のイベントを観察します。

標準テスト条件 (25℃、1000 W/m^2) でシミュレーションを開始します。

t=0 秒~ t= 0.05 秒では、昇圧および VSC コンバーターへのパルスはブロックされます。PV 電圧は開回路電圧に対応します (Nser*Voc=5*64.2=321 V、PV スコープの Vmean トレースを参照)。3-level Bridge ブロックはダイオード整流器として動作し、DC リンク コンデンサは 500 V を超えて充電されます (VSC スコープの Vmean トレースを参照)。

t = 0.05 秒において、昇圧および VSC コンバーターのブロックが解除されます。DC リンク電圧は Vdc=500V に制御されます。昇圧コンバーターのデューティ比は固定されます (PV スコープに示されるとおり D= 0.5)。

t=0.25 秒で定常状態に達します。その結果、PV 電圧は V_PV = (1-D)*Vdc= (1-0.5)*500=250 V になります (PV スコープの Vmean トレースを参照)。1000 W/m^2 放射照度で指定された最大電力は 100.7 kW ですが PV array の出力電力は 96 kW です (PV スコープの Pmean トレースを参照)。Grid スコープで 25 kV 母線における A 相の電圧と電流が同相にあることを観察します (一定の力率)。t=0.4 秒で MPPT が有効になります。MPPT 制御器は、最大電力を引き出すために、デューティ比を変動させることによって PV 電圧の制御を開始します。デューティ比が D=0.454 のときに、最大電力 (100.4 kW) が得られます。

t=0.6 秒で、PV アレイの平均電圧が 274 V になります。これは PV モジュールの仕様で想定されるとおりです (Nser*Vmp=5*54.7= 273.5 V)。

t=0.6 秒~ t=1.1 秒では、太陽放射照度は 1000 W/m^2 から 250 W/m^2 に減少します。MPPT は最大電力の監視を続けます。

放射照度が 250 W/m^2 に減少する t=1.2 秒の時点で、デューティ比 D=0.461 です。対応する PV 電圧と電力は Vmean= 268 V と Pmean= 24.3 kW です。放射照度の急変時にも MMPT は最大電力の監視を続けることに注目してください。

t=1.2 秒~ t=2.5 秒で太陽放射照度を 1000 W/m^2 に回復させ、その後は温度を 50℃に上げて、温度上昇の影響を観察します。温度が 25℃から 50℃に上昇すると、アレイの出力電力は 100.7 kW から 93 kW に下降することがわかります。

参考文献

各種 MPPT 手法の詳細は、次の文献を参照してください。

Moacyr A. G. de Brito, Leonardo P. Sampaio, Luigi G. Jr., Guilherme A. e Melo, Carlos A. Canesin "Comparative Analysis of MPPT Techniques for PV Applications", 2011 International Conference on Clean Electrical Power (ICCEP).

モジュールの特性は NREL System Advisor Model (https://sam.nrel.gov/) から抜粋したものです。